TOYOTA
CSRの取り組み


Sustainability Report 2010
スペシャルストーリー 品質問題を自己再生、改善の場ととらえ各分野で対応 -品質問題の背景と今後に向けて-
生命線である品質問題の背景と今後に向けて
トヨタは品質をその生命線とし、信頼性が評価され、全世界の市場に受け入れていただき、成長を遂げることができました。しかし、一方、成長のひずみ、成長による大企業病的弊害も生じたと考えます。また、トヨタの成長に伴い、トヨタ車のお客様の層が拡大したことで、お客様の期待レベルは一層高く、多様なものとなりましたが、それに対する認識が十分ではなかったと考えます。トヨタは今回の問題を自己再生、改善の機会ととらえ、もう一度従業員一人ひとりが自分事として対応を図ります。
品質問題の背景
■お客様のご期待・ご要望お客様のご期待・ご要望
トヨタはこの10年間、トヨタ車を求められる世界のお客様のニーズに応えるため、生産を拡大、成長してきました。事業の成長とともに、各国・各地域の雇用や経済にも貢献でき、成長から得た利益を環境技術への再投資など、将来の発展に備える原資とすることもできました。しかし、時に成長の速度が身の丈を超え、兵站が延びすぎ、人材育成が成長に追いつかないことも起きたと思われます。
また、トヨタの成長に伴い、トヨタ車のお客様の層が拡大したことで、お客様の期待レベルは一層高く、多様なものとなりました。トヨタは自動車メーカーとして、安全・品質の定義を技術的、専門的に理解し、実現する努力を継続してきましたが、トヨタの考える安全・安心なクルマと、お客様が期待する安全なクルマとの間に「乖離」が生じ、お客様の安心、ご期待に十分応えていませんでした。
今回の問題では、メーカーとして技術志向のもとに問題を理解しようとし、これまでのケースとは異なる世論の真意に気づくことに遅れました。メーカー目線とお客様目線の間に、いつの間にかズレが生じました。これは海外展開の拡大に伴い、お客様に近い場所で情報を共有する体制が不十分だったことに起因していたと考えます。一方、組織が大きくなるつれ、社内外コミュニケーションが不十分になり、問題発生時の迅速な対応などに大企業病的弊害も生まれました。これらが、今回の安全・安心に関する問題への対応に一気に噴出し、お客様の安全・安心に対する期待に添えない結果になったと考えています。トヨタは、今回の問題を自己再生、改善の機会ととらえ、もう一度「お客様第一」、「お客様目線」、「現地現物」の意味を従業員一人ひとりの立場から問い直し、咀嚼し、自分事として対応を図ります。各分野の具体的な対応は右表の通りです。10年前とは時代も社会も変わり、一人ひとりの従業員に求められる仕事もレベルが上がっています。本当にこれでいいのかと、常に自分に問うことを忘れずに取り組みます。
なお、安全・安心の追求に終わりはありません。原因に対して「なぜ?」を繰り返して真因を求めることが重要であり、それがトヨタのやり方、トヨタらしさです。今後も品質に関しての情報を来年以降のレポートでも引き続き開示し、お客様の安心と信頼の回復に努めてまいる所存です。
一連の品質管理問題の概要
2009年11月の米国でのフロアマット問題に続き、2010年1月21日に米国で販売する一部のトヨタ車について、アクセルペダルの不具合に関するセイフティー・リコール(自主改善措置)を実施することを発表しました。その後、2月9日に日本、米国、欧州などで新型プリウスなど4車種のブレーキの不具合に関してリコールを行うことを決定しました。不具合の内容と市場処置は下表の通りです。
問題箇所 発生事象 自主改善措置
フロアマット 米国でフロアマットを車両に固定せずに使用した場合、マットが前方に移動し、アクセルペダルが全開付近で引っ掛かったまま解除できなくなる可能性がある。 フロアマットを改良品と交換
アクセルペダル形状の変更
一部車両のフロア面の形状変更
アクセルペダル アクセルペダル内部のフリクションレバー部が摩耗した状態で当該部分が結露すると、最悪の場合、アクセルペダルがゆっくり戻る、または戻らない可能性がある。 アクセルペダル内部にスチール製の強化板をはさみ、不具合の原因となるフリクションレバー部とペダルアーム部の接点に設ける
ペダルの戻る力となるパネルの反力を強化
ABS 雪路や凍結路を低速で走行している間にハイブリッド車のABS(アンチロックブレーキシステム)が作動した場合、ABS作動前に比べ、制動力が低下し運転者の予測よりも制動距離が伸びる可能性がある。 制動力の低下を防ぐため、 ABS制御プログラムを修正
お客様目線で、より安全・安心を実現するために「グローバル品質特別委員会」を発足
トヨタでは、何か問題が生じたときには徹底的に真因を追究し、対策を施して修正し、さらに改善を進める。これが創業以来ずっと最も大切にしてきた揺るぎない信念です。今回の一連の問題に対し、今まで以上に各地域のお客様の声に耳を傾けるため、2010年3月30日、豊田社長を委員長とする「グローバル品質特別委員会」を発足。各種業務におけるお客様視点の強化に向けた抜本的見直しを各地域事業体含め全社一丸となって取り組むことを確認しました。また、同委員会で策定された改善内容は外部の有識者ら4人で確認、評価を実施します。今回の会合の評価結果についてはタイムリーで的確な情報開示に努めました。
「グローバル品質特別委員会」発足について
■グローバル品質特別委員会設立の狙い
お客様目線ですべての業務ステップを振り返り
品質管理体制を強化する

開発、調達(仕入先)、生産技術・製造、販売、サービス
豊田社長を委員長とする「グローバル品質特別委員会」発足により、急速なグローバル化によって生じた情報収集力の低下や、本社と地域間の情報共有の不徹底を解消する取り組みがスタートしました。同委員会は地域単位の品質管理の徹底により、グローバルな品質管理体制の強化を目指すもので、これまでの専務レベルの品質機能会議で品質管理体制や仕組みを点検していたことに加え、今後はグローバル品質特別委員会を追加開催します。
■主な取り組み事項
・お客様の声に基づく、現地現物EDER*
・お客様第一を実践できる人づくり
・外部専門家による評価
・お客様の安全・安心にこだわる開発
・世界各地域の品質管理活動の自立化
*EDER 早期発見、早期解決
第1回の委員会には、新たに任命された、北米、欧州、中国、アジア・オセアニア、中近東・アフリカ・中南米の各地域のお客様の声を代表する品質特別委員「チーフ・クオリティ・オフィサー(CQO : Chief Quality Officer)」をはじめ、社内の各機能の代表者および関係者150人が出席。リコール等の品質問題の要因を検証しながら、「設計品質」、「製造品質」、「販売品質」、「サービス品質」のすべての工程における振り返りを実施。各地域のお客様の視点を踏まえ、グローバル規模での情報共有の強化、活動の高い透明性確保を念頭に、各種課題の解決に向けた改善内容を策定しました。
こうした会議の様子と品質解析現場は報道関係者に公開され、同日の記者会見で、豊田社長は次のように語りました。
「信頼回復には、何よりもお客様の声をしっかり聞くことが重要だと考えてきました。グローバル品質特別委員で策定した内容を、販売店、サプライヤー、メーカーが一体となって取り組み、お客様の信頼回復に向けて、全力で取り組んでまいりますのでよろしくお願いいたします」。 トヨタでは、今後も「グローバル品質特別委員会」をはじめ、各地域においても業務の改善を継続的に実施する等、海外事業体や販売店と一体となった改善活動を強力に推進します。
■グローバル品質特別委員会の構成 (2010年3月30日時点)
グローバル品質特別委員会の構成 (2010年3月30日時点)
■各地域の「Chief Quality Officer(CQO)チーム」
北米 Steve St. Angelo常務役員
欧州 Didier Leroy常務役員
中国 加藤 雅大常務役員
一汽トヨタ自動車販売有限会社 FAW Toyota Motor Sales Co., Ltd.(FTMS)  Tian Congming常務副総経理
天津一汽トヨタ自動車有限会社 Tianjin FAW Toyota Motor Co.,Ltd. (TFTM)  Han Xinliang 常務副総経理
広汽トヨタ自動車有限会社 Guangzhou Toyota Motor Co., Ltd.(GTMC)  Feng Xingya執行副総経理
豊田汽車(中国)投資有限公司 Toyota Motor(China)Investment Co., Ltd.(TMCI)  Godfrey Tsang副総経理
アジア/オセアニア 園田 光宏常務役員
トヨタモーターアジアパシフィック エンジニアリング&マニュファクチャリング
Toyta Motor Asia Pacific-Engineering and Manufacturing Co., Ltd.(TMAP-EM) Surapong Tinnangwatana上級副社長
トヨタモーターアジアパシフィック Toyota Motor Asia Pacific Pte Ltd.(TMAP-MS) Vince S. Socco上級副社長
中近東/アフリカ/中南米 井上 尚之常務役員、増本 克忠常務役員
日本 増本 克忠常務役員
安全・品質改善に向けた具体的な取り組み
モニタリング機能の強化:問題の早期発見と解決
お客様に近い場所で品質情報を収集する態勢を各地域で強化し、収集した情報を素早く的確に解析し、対策スピードや市場処置決定プロセスを改善します。さらに以下の通り、安全問題の未然防止策も講じていきます。
(1)情報収集機能の強化
『意図せぬ加速』に対するお客様の懸念に対応するため、米国ではSMART隊(Swift Market Analysis Response Team)がお客様ご依頼から原則24時間以内にいただいた声、懸念事項にお応えします。お客様の要望その他必要に応じて、『意図せぬ加速』についての現車確認を約束いたします。これらの点検はトレーニングを受けた技術スタッフにより実施され、適宜、安全に関する情報をディーラ−およびお客様より収集し分析します。また、お客様の指摘現象の確認を行うほか、必要に応じて車両の制御データの収集や部品の回収を行います。また2010年5月に「設計品質改善部」を技術部内に新設し、お客様の声の設計への反映、図面品質の向上、人材育成を目指します。さらにSMART隊をはじめとする国内外の市場情報を集約し、各設計に展開するとともに必要な対策を講じ、再発防止を徹底します。
(2)技術分室の拡充
サービス分野、R&D分野、品質管理分野の専門家数名で構成する技術分室を、担当地域の技術情報の収集・伝達を強化することを目的に設置し、収集した情報はリコール判断や品質改善に活用しています。北米では現在の1ヵ所から7ヵ所に拡充し、欧州に7ヵ所、中国に6ヵ所、他の地域についても新設を予定しています。
(3)EDRを活用した真因解析支援
衝突前後のドライバ操作や車両の動作、状況を記録する装置「イベント・データ・レコーダー(EDR)*」の車両搭載を進め、お客様の同意に基づき事故原因調査に役立てます。国内、米国ではすでに多くの車種に搭載済みであり、特に米国においては2010年末までにすべての車種に搭載します。併せて、データ読み出し機の配備拡充も図ります。

*イベント・データ・レコーダー(EDR : Event Data Recorder) : 一定の衝撃を受けた際にアクセルやブレーキなどの動作や車両の状況を記録する装置
(4)情報解析の強化と市場処置決定プロセスの改善
様々なルートから収集した市場技術情報や保証修理情報を、販売店や代理店に寄せられるお客様の苦情情報とともに一元管理する「統合品質情報システム」を構築し、問題点の早期発見と解決に向けた情報解析の強化を行います。また市場処置決定プロセスにおいて、各地域のお客様の声の代表者がリコール検討会に参加し、お客様の声や地域の意思が確実に反映される仕組みに改善します。
■お客様の声に基づく現地現物EDER
お客様の声に基づく現地現物EDER
情報開示の強化 : コミュニケーションの充実による信頼回復
情報開示の強化を推進することに加え、品質向上活動の実効性を高めます。そのためにグローバル品質特別委員会で策定した改善内容についても外部専門家が確認・評価を行い、結果については公表します。さらに、メーカー・販売店一体となったお客様に対する安全技術や安全運転の方法など、クルマの安全なご利用に寄与する啓発ツールを活用したコミュニケーションも充実させていきます。
人材育成

2010年7月に、トヨタの生命線である品質を守り、高めるための人材育成拠点「カスタマー・ファースト・トレーニングセンター(CFTC)」を日本をはじめ、北米、欧州、豪亜、中国の5ヵ所に開設しました。同センターでは、各地域の核となる教育プログラム別トレーナーを育成し、品質の専門教育・地域固有問題に特化した教育プログラムを展開します。具体的には、『基礎教育』としてお客様第一主義や品質重視の本質にフォーカスした「品質のトヨタウェイ」と、『専門教育』として「品質事例に基づいた専門教育」を行っていきます。昨年5月の日本での設立から新規教育プログラムを開発し、順次開始しました。
品質プロ人材育成拠点(CFトレーニングセンター)を全世界5ヵ所に設立
■各分野部署での対応
分野 対応
ガバナンス 「グローバル品質特別委員会」を設置し、全社一丸となってお客様視点での取り組み強化に向けた抜本的見直しを確認
安全に関する説明ツール等
安全の啓発につながる「SAFETY GUIDE BOOK」を改訂
トヨタ消費生活アドバイザーの会 品質・リコール問題に関し、意見交換会を実施
開発設計分野 13項目にわたる課題を抽出し施策を展開、「設計品質改善部」「商品監査室」を新設
調達分野 高品質徹底に向け、サプライヤーと一体となった活動推進
生産分野 設計の良品基準に従った生産活動に加え、「お客様目線」をさらに徹底したモノづくりを推進
アフターサービス分野
今回の不具合内容に関する安全・安心への各種説明ツールを作成・展開。海外ではサービスの技術分室を拡充し、品質情報の早期解決に向けた業務プロセスを確立
販売店の対応事例 東京トヨペットでお客様の安心を最優先するべく行った、新型プリウスのリコール対応事例
海外(北米)での対応事例 アクセルペダル関連のリコールに対し、迅速な対応を図るべく行った事例
お客様満足度向上に向けて TQM推進部による「品質問題から何を学ぶか、いかに活かすか」をテーマとする役員研修会を実施
販売店への対応
中国の現地販売店を対象に、技術者によるトヨタ品質の安全・安心説明会を開催
コミュニケーション プリウス・SAIに関する安全説明ツールの作成
外部専門家評価報告書
トヨタ自動車は、専門団体である財団法人日本科学技術連盟へ依頼していた品質保証体制の改善に関する評価報告書を受け取りました。
同報告書は第1回「グローバル品質特別委員会」(委員長:豊田社長/開催:2010年3月30日)で策定した品質保証体制の見直しと改善を評価したものです。
トヨタは報告書の各項目について検証し、既に改善の方向で活動を開始している項目も含め、本年10月に予定している第2回グローバル品質特別委員会等で進捗状況を確認していきます。
関連リンク
ニュースリリース:お客様視点での取り組みの強化に向けた抜本的見直しを実施(2010/03/30)
「グローバル品質特別委員会」記者会見 動画
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