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スペシャルストーリー
トヨタならではのメリットを生かして
 アグリバイオ事業は自動車を製造してきたトヨタにとって、まったく新しい分野だ。しかし、トヨタがそこへ導入できるノウハウは確かにある。品質管理の方法、工場のオペレーション、エネルギーを節約して効率的な生産ラインを確立させる方法など、トヨタだからこそ可能になることがいくらでもあった。
 そしてさらに、生分解性プラスチック開発の分野ではトヨタにもたらされるメリットはなお大きい。トヨタは生分解性プラスチックのメーカーをめざすと同時に、そのユーザーでもある。つまり現実に生分解性プラスチックを製造する前から、まとまった需要が目の前にある。新規事業を興す身としては、開発前から市場のニーズが見えることほど心強いものはない。
 
クルマに使える、という強み
デンプン加工工場
 また、トヨタが製造しているのがクルマだったことも大きなメリットになった。クルマに採用される製品の品質基準は、エアコン、オーディオなど一般家庭用品とは比べものにならないくらい高い。
 例を挙げれば、パソコンを落とした、あるいは直射日光に長時間さらしておいたら壊れた、と苦情が述べられることは少ない。しかしクルマの場合、ちょっとぶつけたら壊れた、というのでは消費者が納得しない。そのためクルマに採用された製品・素材は他の分野に応用されてもまず大丈夫、というお墨付きをもらったようなものだ。だからトヨタの生分解性プラスチックが現実にクルマ向けに採用されれば、それは他の分野でも充分応用が利くことになる。クルマとバイオという、まったく相容れない二つのものが、こんな形で互いにメリットを生かし合うことになるわけだ。1足す1が2以上のものを生み出す例といっていいのかもしれない。
 
これはプラスチックの材料革命!?
 では、生分解性プラスチックとは、いかなる素材なのか。「従来のプラスチックと同じ機能を持ち、使用後は土壌中の微生物によって分解されるもの」というのが基本的な定義だ。
 プラスチックは軽量で成形が容易という利点を持つが、その反面、安定した性質が災いして使用後、分解が進みにくい。そのため、廃棄後の処理が問題視されている。
 これが生分解性プラスチックになるとどう変わるのか。例えば生ゴミを入れるゴミ袋。これが生分解性になると、袋ごと堆肥ができる。使用後の処理がやっかいな農業用ビニールシートはそのまま畑にすき込んでしまえばいい・・・などと考えれば、どれだけ環境負荷を減らせるか想像できるだろう。そのほかにも雑貨、食品、繊維、医療用品、建築資材など、生分解性プラスチックの応用範囲は限りなく広い。応用範囲が広いということは、環境負荷低減への貢献度も大きく、市場規模は大きいということになる。
 
石油資源を使わない再生可能な素材、それがバイオプラスチック
 使用後の処理に重点をおいたのが「生分解性プラスチック」という呼び名だが、実は「バイオプラスチック」という呼び方もあり、こちらは製造工程に重点をおいている。生分解性プラスチックは従来のプラスチックのように石油を使っても作ることができる。しかしこの場合、使用後に分解されはするが、限りのある石油資源を消費する。一方植物由来のバイオプラスチックは、そのようなことがない。分解されて発生する二酸化炭素と水も、元はといえば大気中にあった二酸化炭素と土壌にあった水だから、ライフサイクル全体で、製造に要するエネルギー消費を除けば二酸化炭素を発生させない。トヨタが開発を進めているのはこのバイオプラスチックである。   ■バイオプラスチック生成の概念図
 
カーボンニュートラルにして、高品質を可能に
バイオプラスチック製品の例
 このように二酸化炭素の量を増加させない性質を「カーボン・ニュートラル」といい、カーボン・ニュートラルの素材を多用することが、循環型社会実現の大きな目標と言われている。
 トヨタの目指すバイオプラスチックはサツマイモやサトウキビ等を原料にした、カーボン・ニュートラルな素材である。その工程は、まずサツマイモ等のでんぷんを酵素で分解し糖をつくり、その糖を発酵させて乳酸を作る。その乳酸を重合させてポリ乳酸にし、改質・成形加工を経て各種のプラスチック製品となる。
 バイオプラスチックには世界中のいろいろな企業が取り組んでいるが、トヨタのようにポリ乳酸を使っている大手はアメリカのカーギル・ダウ社ぐらいしかない。しかも精製純度の違いから、プラスチックの品質においても決して他社にひけはとらないものを製造する技術を確立している。コストの面でも、リサイクルの費用まで考慮すれば、従来の石油系プラスチック+αで実現できるめどが立った。
 これからのプランとしては来年半ばに年間1,000t生産できるプラントで実証テストを行い、結果がよければできるだけ早期に本格プラントを立ち上げる予定だ。
 現在の市場規模は2万t程度だが、2020年にはトヨタだけで年産2,000万t、売上5兆円を目標にしている。2000年度日本全体でのプラスチック需要が約1,400万tであることを考えれば、この数字は尋常ではない。しかし世界に目を向ければ年間使用量は1億5,000万tある。2020年にそのうち3,000万tがバイオプラスチックに置き換わると考えればこの数字はまんざら夢ではない。この年産2,000万tという一見途方もないこの数字が、バイオプラスチックが「松井並みのホームランバッター」と言わしめた理由なのだ。
 
市場への第1号は新型「ラウム」その名は「トヨタエコプラスチック」
[トヨタエコプラスチック]を使った新型「ラウム」のフロアマット
 2001年、モーターショーに出展したコンセプトカー「ES3」にバイオプラスチックの自動車部品が採用された。これはあくまで試験的な採用であったが、市販車へは、2003年5月発表の新型「ラウム」に初めて採用された。「トヨタエコプラスチック」という名も与えられた。以後経過を見て、順次採用を拡大していく予定だ。
 クルマに使われる部品全体の比率から見れば、バイオプラスチックの採用はごく小さな一歩に過ぎない。しかしその一歩を確実に積み重ねていけば、循環型社会実現のための大きな一歩になることもまた事実だ。クルマの分野におけるハイブリッド車、燃料電池車といったクリーンエネルギー車の開発と並び、まったく別のところからスタートしたアグリバイオ事業が、これから車の両輪となって循環型社会の実現を推し進めていくことは間違いない。それに、バイオ・緑化事業部が取り組むのは前に挙げた分野だけでない。現在も情報を集め、事業化の可能な分野を模索中だ。そんな分野の中から松井を超えるホームランバッターが登場する可能性も充分にある。
 
課題はチャンス。量産化へテイクオフ
バイオ・緑化研究所内で実験をする若手スタッフ
 もちろんアグリバイオの分野でも、これから解決しなければならない技術的な課題は山積している。その点を質問すると築島はこう答えた。「技術的な課題はある。けれども課題があるということは誰もできていないわけだから、そこにこそ大きなビジネスチャンスがある。課題を課題と言ってはいけない。課題こそチャンスなのだから」。そして、さらに将来に向けての抱負を次のように語った。「バイオプラスチックの分野はまだまだ開発・進化の余地がある分野である。だからこそ、今のうちに基礎も含めて研究開発することが重要であると思う。これを続けていけば10年の間にこの分野でトヨタからノーベル賞受賞者が出るくらいの意気込みでやりたい。」
 身内のひいきを差し引いて考えても、バイオプラスチックがさらに進化すれば、それは循環型社会実現に向けた革新的な技術になるだろう。その時、後世の人たちはきっと奥田会長と同じ感謝の言葉を口にするのではないだろうか。「ありがとう」と。
 
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