「20世紀は自動車の世紀」と位置付ける人がいます。19世紀末に登場した自動車は、人々の移動の自由を飛躍的に拡大するとともに、大量できめ細かな物流を可能にし、暮らしや経済を豊かにしました。
 また、多くの国の主要産業として大きな役割を担い、人類の発展にも貢献してきました。
 しかし、こうした発展の一方で、世界は人口の急激な増加や開発、化石燃料の大量消費などによる地球温暖化やオゾン層の破壊、大気汚染などの環境問題に直面しています。残念ながら自動車も、その開発・生産・使用・廃棄の各段階で、地球環境に負荷を与える要因のひとつとなっています。
 たとえば、わが国では、CO2の総排出量のうち運輸部門が20%近くを占め、そのほとんどが自動車によるものと言われます。CO2が温暖化の要因とされる中で、自動車のCO2排出量の削減はもちろん、各種の環境負荷物質の低減、リサイクル推進など、トヨタは環境保全を経営の最重要課題のひとつと位置づけ積極的に取り組んでいます。
 ただ、これらの対策を推進するうえで環境保全と経済成長が相反するものと捉えたくはありません。これについては幸いなことに、1970年代の貴重な成功体験があります。当時、世界各国で光化学スモッグなどの公害問題が発生しましたが、エンジニアたちはこの解決にあらゆる角度から総合的に取り組み、エンジン制御や触媒技術、車体の軽量化などを飛躍的に進歩させました。その結果、燃費をはじめとするクルマの性能も大幅に向上し、トヨタ発展の原動力ともなりました。
 1933年、創業者の豊田喜一郎は、自動車を開発するにあたり『一人でも多くの人に自由に移動できるすばらしさを提供したい』と事業を興す動機を語りましたが、60数年後の今でも、世界には自動車の恩恵に浴していない人々が数多くいます。そうした人々に環境負荷の少ない自動車や技術を提供することで、21世紀においても自動車は人類にとって有益な道具であり続けると考えます。それこそが、'92年のリオ・サミットで採択された“Sustainable Development(持続可能な発展)”の実践であり、トヨタの進むべき道だと確信しています。 

1998年版の環境報告書について
 社会とともに歩む企業に必要なのは、第一に企業活動で発生する環境負荷を着実に減らしていくこと、第二に環境負荷とその対応状況を広く社会に公開すること、第三に地球環境保全に関わる他の産業や諸団体と連帯・協力することだと考えています。
 そうした企業の取り組みを推進する方策のひとつとして、このたびトヨタは「環境報告書」を発行いたしました。今回の内容は'97年4月から'98年3月('97年度)の国内での事業を対象としています。
 そのハイライトは、ハイブリッド車「プリウス」の開発・発売、元町・田原工場および製品開発のISO14001認証取得、シュレッダーダスト活用プラントの推進などです。
 この報告書によって、トヨタがさまざまな企業活動において、すでに環境対策をしっかりと組み込んでいることをご理解いただくとともに、数多くの方々との建設的な対話ができることを期待しています。
 ただ、今回は開示データが充分整備されていない所もあり、これは次回以降の課題と考えています。
 トヨタは、今後とも環境改善への努力を積極的・継続的に実施してまいります。この報告書に対する皆様の率直なご意見をお待ちしています。

1998年12月
トヨタ自動車株式会社
トヨタ環境委員会委員長/代表取締役社長 環境部門統括/専務取締役
奥田 碩
  
加藤 伸一