エコモニタリングの成果から

自然のなかのシデコブシの更新


● シデコブシの種
シデコブシの実
シデコブシの種子
シデコブシの種は花が咲いた後、垂れ下がったぶどうの房のようなものができ、熟すと赤くなります。
これを鳥などが食べて、遠くに運ばれてフンに混じって落ち、元の木とは離れた場所で芽を出します。
トヨタの森で、シデコブシの遺伝子を調べたところ、すぐ隣に接して生えているシデコブシの遺伝子が全く異なるものであった例がありました。
鳥があちこちのシデコブシの実を食べた後、トヨタの森に一緒に落としていった種が仲良く一緒に育ったのかもしれませんね。

● シデコブシの種子が芽吹く場所
シデコブシの芽吹いた場所模式図
シデコブシが芽吹いた場所
2005年から2007年までの3年間、シデコブシがどんなところで発芽するのかを調べました。
そ の結果、シデコブシは谷地形の変換点と呼ばれるところを境に、これより上部の斜面では全く実生(芽生え)が全く見られず、この変換点より下の谷部に実生が 集中していることが分かりました。谷部にも斜面と似た乾いた条件の場所はあるのですが、ここにはシデコブシの実生が見られました。
谷部の乾いた条件の場所は表面は乾いているように見えても、地下水位が高いので、雨が降れば湿った条件になりやすい地形です。シデコブシの芽生えにはある程度湿った土の存在が必要なようです。


● 実生(芽生え)の生存率
1年目の生存率グラフ
2年目の生存率グラフ
3年目の生存率グラフ
当年生個体の生存率発芽後2年目の生存率発芽後3年目の生存率
このように谷部に芽生えたシデコブシの実生を、3年間見てみたところ、その年に発芽した個体はそのまま約95%が冬を迎えられますが、翌年の秋には約70%に減ってしまいました。またその翌年、3年目には63%に減っていました。
その年ごとの変動もありますが、発芽後2年目の冬を越えられるかどうかがその後も生存できるかどうかの、大きな分かれ目といえるかもしれません。

立地別消失率のグラフ
立地別のシデコブシ消失率
ま た、芽生えた場所の環境によってもその後の生存率が変わります。谷部の乾性地でも芽を出すことができたシデコブシですが、3年間の消失率を見ると、過湿地 と適潤地では、消失率が20%以下なのに対し、乾性地の消失率は25%を超えており、少し消失してしまう個体が多くなっています。
この傾向は芽生えたばかりの若い個体ほどその傾向が高いことが分かっています。
● シデコブシの自然更新を促進するために
シデコブシの実生と、幼木(幹長0.5〜2m)、生長木(幹長2m以上)の確認個体数とその分布を見ると、2007年と2006年の2年目までの実生の数が約半分を占めており、実生の数が非常に多いことが分かります。
シデコブシの実生確認状況
個体確認状況の表
ただし、その後成長していくに従い、徐々に数を減らし、最終的に2m以上の生長木にまで成長する個体は多くありません。
例えば2000年の実生はもう1個体しか残っていないので、最終的には2000年生まれの個体はトヨタの森から消えてしまうかもしれません。反対に1997年生まれの個体は今でも16個体残っているので、この先も残って行く可能性が高いと考えられます。

下のシデコブシの生育を確認した分布図を見てみると、13年以上の幼木以上に成長した個体の多くは谷の中央部のより条件が良いと考えられる場所に生育しています。そういったところに芽生えた実生だけがその後も残っていけたということでしょう。
そうすると、現在は条件の良いところをシデコブシの生長木が占めていますが、この近くに芽生えた実生がこれから大きくなって、順次更新を続けて行くには、大きなシデコブシを切ってその林床を明るくしてあげることも重要と考えられます。
そのためにも、伐採更新は有効な手段と考えられます。
シデコブシ実生分布図
シデコブシの生育確認状況


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