エコモニタリングの成果から

湿生生物観察園の生物多様性ー棚田の跡地を湿地に



○湿生生物観察園でのエコモニタリング
■ 湿生生物観察園とは
1997年に、水田の跡を整備し、湧水による湿地として復元しました。皆さんに湿地の多様性を見てもらうために、いろいろなタイプの環境のある湿地の創出を目指しています。

■ 湿生生物観察園の変化
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植生の変化

整備後の湿生生物観察園の植生の変化を追ってみましょう。
1997年
写真:1997年
整備直後の写真です。
いくつかの水面があり、ここには浮葉・沈水植物が生育していました。
その周りは、中茎の抽水植物で覆われていました。
↓ 毎年刈り取り作業をしましたが・・・
2001年
写真:2001年
水面がほとんど見えないほど小さくなり、カサスゲやヨシなどの高茎の抽水植物が繁茂しました。またそれらの遺骸が堆積したりして、一部で陸地化が起こりました。

このように、湿地生態系の遷移は早く、年々目に見えて変化をしました。
↓ そこで、繁茂している高茎種を重点的に刈り取ったり、根を掘り取ったりしたところ・・・
2003年
写真:2003年
再び水面があらわれ、浮葉・沈水植物群落のエリアが広がるなど、いろんなタイプの湿地環境がみられるようになりました。
下矢印2その後、これまでの湿地の変遷を踏まえて、今後の目標植生を設定し、その植生を維持するための管理手法を整理しました。
2007年
湿生園2007年
その結果、それから4年経った2007年においても、2003年とほぼ同様の植生構成を保っています。

【目標植生と管理手法】

2002年にこれまで5年間の湿地の変化の方向を見定めてから、目標植生を左図のように定め、そのための維持管理方法を右図のように整理して、それに基づいた維持管理を行なっています。
それでも5年ほどたつと、乾燥地が徐々に広がってきています。5年に一度は根の掘り取りエリアを拡げるなどの調整のための維持管理が必要です。

目標植生
管理方針
目標植生定めた管理の方針
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種数変化のグラフ
[植物の確認種数の推移]
植物種数の推移

湿生生物観察園で見られる植物の種数の変化をみてみましょう。整備の翌年にはぐんと草原性の植物種と樹林性の植物種が増えています。

その後、最も水面の面積が減った2001年にはヒツジグサが消えてしまいました。

2003年から、目標植生を定め、それに応じた管理を始めてから、湿地性、草原性、林縁、樹林性などの植物種が少しずつ増えて、今に至っています。

種の多様性を維持していくためには、その場所の特性と遷移の方向に沿った維持管理が必要です。
 

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