森からのお手紙
2010年1月21日更新

2010年 1月号 森の動物24時 「センサーカメラがとらえたもの」
    トヨタの森が夕闇(ゆうやみ)に包まれるころ、座布団ほどの大きな影(かげ)が空を横切っていきます。巣穴から出てきたムササビが、その木の頂上まで駆(か)け上がり、遠く離(はな)れた木に向かってすべるように空を飛んでいく姿です。「トヨタの森」の夜の始まりです。  
  森のムササビ(2009.12.24)   動物の目線で見た歩道  
  森のムササビ(2009.12.24)   動物の目線で見た歩道  


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「歩道は人間だけのものではなかった」
    昼間、子供たちが落ち葉をけちらしながら歩いていた道を、夜はタヌキやキツネたちが音も立てずに歩く気配だけが感じられます。「けもの道」とよく言われますが、動物たちも歩きやすい歩道を選んでいるようです。森に棲(す)む四つ足の動物のほとんどは夜に活動することが多く、昼間に姿を見かけることはなかなかむずかしいようです。
  トヨタの森では昨年から(財)日本自然保護協会(にほんしぜんほごきょうかい)が運営する環境省の事業モニタリングサイト1000里地調査の中で哺乳類調査(ほにゅうるいちょうさ)をしています。哺乳類調査とは、動物が通りそうな歩道にセンサーカメラを4ヶ所設置して、そこを通る動物を24時間撮影(さつえい)して、どんな動物が何時に通るかを調べる調査です。この調査でムササビ・アカネズミ・リス・イノシシ・ノウサギ・テン・キツネ・タヌキ・イタチ・アナグマ・シカ・ノラネコの他に外来種(がいらいしゅ。日本に輸入され野生化した種類)であるアライグマ・ハクビシンの14種類もの動物が撮影されました。人里の近くに、これだけの動物たちがいるとは・・・センサーカメラに映しだされた姿に驚(おどろ)くばかりです。
  センサーカメラがとらえた、トヨタの森に棲む動物を紹介しましょう。
 


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<キツネ>
    森の中を静かに移動するキツネは、ドングリを食べているネズミを食べています。センサーカメラには夕方16時16分から活動し始め、朝の8時54分までの姿が撮影されています。もし運が良ければ森の中で出会えるかも・・・。森の中には、キツネが掘ったと思われる穴が数ヶ所にあります。真新しい巣穴にセンサーカメラを仕掛(しか)けたところ、その夜に映ったのはやはりキツネの姿でした。まだ、子ギツネは撮影されていないのですが、森の中で子育てしていると思われます。  
  巣穴に入るキツネ(2008.11.28)   けもの道を歩くキツネ(2008.12.2)  
  巣穴に入るキツネ(2008.11.28)   けもの道を歩くキツネ(2008.12.2)  


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<タヌキ>
    キツネと違(ちが)って臆病(おくびょう)なのか、暗くなってから活動しているようです。1頭だけで撮影されることが多く、4台すべての場所で撮影されていることから、数多く生息していると思われます。また、親子か夫婦なのか、2頭でじゃれ合って歩く仲睦(なかむつ)ましい姿も撮影されています。最近では真っ白いタヌキが5回撮影されたり、疥癬(かいせん)という皮膚病(ひふびょう)を患(わずら)っているタヌキも撮影されたりと、動物の世界も色々なことが起こっていることを、センサーカメラは映しだしてくれます。  
  じゃれ合う2頭のタヌキ(2009.7.3)   白化(アルビノ)のタヌキ(2009.11.1)  
  じゃれ合う2頭のタヌキ(2009.7.3)   白化(アルビノ)のタヌキ(2009.11.1)  


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<イノシシ>
    2007年頃からトヨタの森で出没し始め、センサーカメラには定期的にイノシシの姿が映し出されています。夕方の17時45分から明け方の5時21分の間で活動しているようで、夜19時から23時台に多く撮影されていることから、この時間帯によく動いているのではないかと思われます。昨年からは、子供の「ウリ坊」の可愛(かわい)い姿も映っているので、近くで繁殖(はんしょく)しているようです。小さかった「ウリ坊」も、定期的に映し出される画像には成長のあとが見られ、ウリ模様(もよう)も消えて一人前の姿に変わってきています。森では、歩道の枕木やコケなどを掘り起こし、地中にいるミミズや虫の幼虫などを食べて荒らしまわっているので、困っています。しかし、最近ではあまり映らなくなってきて、荒らされることもなくなってくると少し寂(さび)しい気にもなってきます。  
  母イノシシの鼻とウリ坊(2009.5.26)   ウリ模様がうすい母子のイノシシ(2009.9.18)  
  母イノシシの鼻とウリ坊(2009.5.26)   ウリ模様がうすい母子のイノシシ(2009.9.18)  


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<アナグマ>
    アナグマといっても熊(くま)ではありません。イタチの仲間のアナグマは、足が短く細長い体をしていて、爪が鋭(するど)く穴を掘るのに適した体をしています。山地に生息している印象があったので、トヨタの森で撮影されたときは信じられませんでした。しかし、離れた3ヶ所のセンサーカメラの設置場所で撮影されているので、普通に生息していることがわかりました。また、朝9時53分に撮影されたり、昼間でも活動していることもあり、明るいときに出会えるかもと期待をしています。  
  けもの道を歩くアナグマ(2009.9.3)   2頭で仲良く歩くアナグマ(2009.7.25)  
  けもの道を歩くアナグマ(2009.9.3)   2頭で仲良く歩くアナグマ(2009.7.25)  


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<テン>
    アナグマと同じように足が短く細長い体をしていますが、尾が長くほっそりした体つきをしています。木に登れないアナグマとは違い、木の上や枝から枝へと忍者のごとく走り回り、とてもすばしっこいです。垂直に伸びる樹の穴に入っていたこともあり、その身軽さには驚くばかりです。夕方の17時51分から明け方の4時58分までの間での行動が確認され、今のところ1ヶ所でしか撮影されていません。その場所は、アナグマもとてもよく撮影されていることから、地上で行動するアナグマと樹上でも活動できるテンと、うまく棲み分けていると思われます。  
  夏毛のテン(2009.6.25)   冬毛のテン(2009.11.19)  
  夏毛のテン(2009.6.25)   冬毛のテン(2009.11.19)  


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<アライグマ>
    本来、日本にはいなかった動物ですが、TVアニメの「ラスカル」が有名になり、可愛いからとペットとして北アメリカから輸入されたものです。しかしアライグマは意外に凶暴(きょうぼう)で、かみ付いたり引っかいたりして手におえなくなった人が野外に放してしまい、アライグマが日本で増えてしまいました。木に登ることが得意なので、フクロウの巣をおそい、卵やヒナ、そして親までも食べてしまうことがあります。アライグマにしてみたら、人間の勝手で連れてこられ捨てられて、悪者にされているのですから可哀想(かわいそう)ですね。どんな生き物でも、飼うということは「死ぬまで面倒(めんどう)をみる」という最低限の責任をもって飼ってほしいものです。  
  外来種のアライグマ(2009.12.19)   可愛い表情のアライグマ(2009.3.30)  
  外来種のアライグマ(2009.12.19)   可愛い表情のアライグマ(2009.3.30)  


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<ハクビシン>
    アライグマと同じ外来種とされていますが、在来種(ざいらいしゅ。昔から日本に棲む種類)という説もあり、はっきりしていません。タヌキより小さく、ノラネコより大きく、尾が非常に長いことと、顔の中心に白い線があるのが特徴(とくちょう)です。森では普通に撮影されているので、数は多いと思われます。木登りも得意で、夜にカキの木に登り実を食べています。食べ残しや熟したカキは地上に落ち、それを木登りの不得意なタヌキなどが食べ、森の中ではすべてうまく回っているのです。  
  大きさが違う2頭のハクビシン(2008.12.13)   けもの道を歩くハクビシン(2009.10.28)  
  大きさが違う2頭のハクビシン(2008.12.13)   けもの道を歩くハクビシン(2009.10.28)  


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「感覚を研ぎ澄ませ想像力(そうぞうりょく)で楽しもう」
    夜に活動する動物を実際に見ることはむずかしいですが、昼間でも、ちょっと注意をして森の中を歩いていると、動物の糞(ふん)や食べ跡(あと)、ネズミの穴を掘った跡を探すことができます。雪の日やぬかるみには、足跡も見ることができます。慣(な)れれば、キツネのオシッコの匂いを嗅(か)ぎ分けることもできるようになれるでしょう。何もないと思われる冬の歩道も、夜の動物たちの行動を想像しながらが歩くときっと何かに出会えるかも・・・。  


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編集・写真撮影:トヨタの森スタッフ


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