
クルマをデザインする。それは、デザインコンセプトの決定から始まります。開発の狙いや対象となるお客さま像など、車両開発の企画を受けたデザインチームは、まず車両のデザインコンセプトを検討します。
デザイナーは自ら市場をリサーチし、最新のトレンドなども参考にしながら、お客さまのニーズに的確に応えられるテーマは何かを探ります。そして、互いにイメージが共有できるまで徹底的に議論するのです。
頭の中にあるイメージを表現する最初の作業、それが手描きのアイディアスケッチ。デザイナーは、コンセプトメイキングで決めたテーマや様々な条件に配慮しながら、スケッチを重ねていきます。イメージを細部まで書き込むことや、カッコよく見せることが重要なのではありません。デザインの狙い、可能性、発展性が感じ取れる、そういうスケッチを、このステップでは描ききるのです。

えんぴつ、パステル、マーカー等、デザイナーがスケッチを描くツールは時代と共に変化してきました。そして今はパーソナルコンピューターがデザイナーの描画ツールの一つとして大きな役目を果たしています。
手描きスケッチで得たアイディアの狙い、高い質感表現、ビジュアルイメージ等の検証が短時間でできるようになりました。このように、パーソナルコンピューターは伝えたいイメージをより魅力的に、より早く表現する手段を提供してくれるデザイナーの大切なツールになるのです。
デジタルモデラーはデザイナーのスケッチから、アイディアの立体化を行ないます。まだ誰も見たことのないクルマを、仮想空間に具現化させます。絵を立体化する為にはたくさんの情報を補わなければなりません。しかもアイディアの持つ魅力や特徴、デザイナーのイメージを大切にしながら、スケッチ画を線や面に置き換えていく。その変換には創造力が必要であり、デジタルモデラーのセンスが最も問われる場面です。
カラーデザイン。それは、単なるカラーリングではなくクルマに個性を与えるということ。カラーデザインは、外形・内装デザイン同様、クルマのキャラクターを決める大切な要素です。また、色は人によって好き嫌いがわかれるので、開発にあたっての大きなポイントです。
そこで重要になるのが、トータルなカラーコーディネーション。世界のファッションやインテリアの流行色など、あらゆる情報を分析。そのクルマに最適な色を判断するとともに、個性をも打ち出していくのです。
空間のカラーコーディネート。インストルメントパネルやステアリング、シートファブリック、天井、カーペットなど、内装はいろいろな素材で構成されています。そのために、内装のカラーは様々な視点で吟味を重ねます。目にする所、触れる所、五感に響く心地よい空間づくり。個々のカラーや、マテリアルへのこだわりは、トータルな印象を支えるものです。
クレイ(工業用粘土)による立体化では、クレイモデラーはデザイナーと組み、意図を理解しながら、目で、手で、実際の線や、面の仕上がりを確かめながら造形を進めます。デザインの狙いやイメージ、テーマを共有するため、常にデザイナーと想いをひとつにできなければ、満足のいく仕上がりにはなりません。
そして、削っては盛り、盛っては削るの繰り返し。傍目には単調に映るこの作業を重ねることで、クルマの造形は線一本の細部まで吟味、洗練されていきます。
インテリアデザインの検討には、本物に限りなく近いモックアップが使われます。木型モデラーが、木材だけでなく、樹脂や金属、ファブリック等いろいろな素材を用い、デザイナーの想いを1/1でカタチにします。そして、デザイナーは、室内の広さ感や雰囲気はもちろん、乗降性、視界確保、メーターの視認性やスイッチ類の操作性などを実寸サイズで確認するのです。トヨタの木型モデラーには、技能五輪国際大会という国際的な技術大会で優勝した人材も活躍しています。
モデラーの世界は、匠の技。その技術や成長過程は、まさに職人的です。削る、盛るためのスキルは教えられる。でも、そこから先は教えることはできない。デザイナーの意図を汲み取り、それに応える造形力、センス、クルマのかたまり感の掴み方など、感覚的なノウハウは、実際の仕事を通じて、現場で考え、学んでいきます。そして、デザイナーと同等、それ以上の造形力が必要です。
デザインを決める。「車両検討場」は開閉式の天井を採用。天井を開けることで屋内にいながら自然光の下、ターンテーブルに配置されたモデルを、全方位からデザイン検討することが可能な施設です。また、雨の日や、夜も特殊な照明で自然光に近い状態で検討が可能です。
さらにここでは、デジタルモデル(バーチャル画像)の検討にも対応しています。スクリーンに、実車さながらの画像を映写。数種類のデザイン案の同時検討が可能です。
─自然の光でクルマを見る。デジタルでクルマを見る。大切なのはお客さまの気持ちになることに変わりはありません。