経験と情熱で外形を造り込む。藤原 裕司 - エクステリアデザイナー

Work Style

アイディアは、育てるもの。

僕がエクステリアデザインに携わって25年。いまではアイディアを育て、プロジェクトをまとめていく立場でもあります。アイディアが決まったあと、僕らはクレイモデラーと、若手、ベテランが入り混じったチームで実物サイズの立体モデルを作っていきます。その時、アイディアスケッチを最初からリアルに描きすぎると、ディティールに目がいきがちになり、本質的なところを見失ってしまうことがある。だからまず、大きな狙い、そのアイディアにとってなくてはならない生命線というか、核になるところをスケッチはもちろん、しっかりと言葉でもクレイモデラーに伝えるようにしています。

クレイモデラーはパートナー。デザイナーはイメージや原型は作れるけど、匠の技で立体モデルを高いレベルに引き上げてくれるのは、やっぱりクレイモデラー。自分が伝えたことをクレイモデラーが造る、それを自らのアイディアに溺れないで、冷静に引いた目で判断しなければならない。“デザイナーがいじり始めたらアカン、入り込みすぎてもアカン”。アイディアは人の人格のようなものだから、チームで育てていくのがいい。一緒に育てたアイディアが咲く、そんな感じですね。

10年経って、色褪せるか、味になるか。

何がアイディアなのか。その考え方が、若い時と変わってきました。あの頃はイケイケどんどんでオリジナル出して、カッコイイものを追求して。でも商品として考えたときに、車って安い買い物じゃない。だから最近は、10年経っても色褪せないようなアイディアこそ本物だと思うようになりました。

たとえば、2代目のヴィッツをつくっていたときのこと。欧州デザイナーのオリジナルアイディアは、すごくダイナミックで強さがあって魅力的でした。でも日本人としては違和感を感じた。“ちょっとアタリが強すぎるんちゃうか”と。だから僕はこの造形に、より深みを与えたいと思ったんですね。強さの奥からにじみ出てくるもの、ドア断面の形状やキャラクターのライン。すべての造形要素が生き生きとして、内のエネルギーが外からでも感じ取れるような。クルマの芯がバシッと通っていて、軸がブレない。コンパクトカーは長く乗られるお客さまが多いんですが、だからこそ、味わいが出てくるものにすべきだ、と僕は思っています。

やりきらないと、見えてこないもの。

はじめから、完成された最終的なイメージが、明確に見えているわけではありません。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と、その時その時の段階でベストを尽くし、やりきらないと次が見えてこない。その繰り返しで、モデルは造り込まれていくのです。造り込むっていうのは、手あかをつけていくことじゃなくて、よりピュアにしていくこと。同時に質感や深みを持たせる。足しながら引いていくというか。そうやって、もっとよくしようって、見守るところがトヨタの強み。工業製品だから難しいんですが、何度も何度も手塩にかけて育てる。スケッチからモデル、図面、試作へ。

僕らの仕事は図面をしっかり出すこと。どんなにクレイモデルを上手く育てても、それが図面データに再現できなかったら意味がない。だから、そこまでしっかりやる。自分とこできっちりやって次に手渡す。“そこまでまとめきるのが僕らベテランの役目や”と思っています。若い人にノウハウは継承していけるけど、育つかどうかはその人の姿勢しだい。ただ僕は生涯、現役でいたいんですよ、体力がもてばね。クレイは結構、体力使いますから。

Life Style

自然体でいること。

若いときは、“自分のアイディアを通したいんや!”という気持ちでいっぱいでした。仕事のやり方も、あれもこれもと欲張りだったし。それも、年を取ると変わってきますね。流行りがどうとか、見た目のかっこよさがどうとか。そんなところであがくのではなく、腰をすえていいものにしたい。ちゃんとしたものを作りたい、と思うようになりました。でも、ずっと仕事のことばかり考えていると、余裕がなくなって、周りからいろいろと言われた時に、近視眼的に判断が狭くなる。そうなると、進むべき方向を見失ったり、迷ったりしてしまう。だから最近は、集中する時はものすごく集中する、そしてオフタイムで気を抜くときはちゃんと抜く、を心がけるようになりました。

僕の場合は、サーフィン。張り詰めた気持ちをゆるめてくれる感覚。自然に挑戦するのではなく、自然の大きな力に身をゆだねる感覚。気持ちがリセットされるというか、無理をしなくなるというか。ゆとりが生まれるんですね、気持ちに。そうすると、仕事に戻ってもどこかに余裕があるから、全体が見えてくる。常に自然体でいられるのが一番いいのかもしれませんね。

エコをデザインから考える。

サーフィンを始めてから、天気図や気温に敏感になりました。波の状態を左右しますから。ところで最近は温かい。特に冬は、海から上がったときに感じます。だからというわけではありませんが、デザインを考える時には、いつも心の片隅で意識するようにしています。デザインからできるエコは何か、を。空力を優先したデザインで燃費の向上。リサイクル可能な材料を使う。

でも、デザインという観点からみた一番のエコは、飽きのこないクルマ、長く使ってもらえるクルマをデザインすること。今のところ、これが僕の結論です。すぐに効果はでないかもしれませんが、これからも考えていこうと思います。続けていくことが大事。途中でやめてしまったら、それこそ何も変わりませんから。

ひとつひとつ乗り越える。

サーフィンを本格的に始めて数シーズン、なかなか上達しないですね。たとえば、サーフィンはまず、沖に出ないと始まらないのですが、それが意外と難しい。沖に出ても、テイクオフのタイミングが掴めなかったり。次々と押し寄せる課題をひとつひとつ乗り越える。トライ&エラーの繰り返し。それが魅力でもあるんですけどね。実は、エクステリアデザインにも通じる部分があるんです。まずはアイディアを発想するステップ、続いて魅力的な立体造形を作り上げるステップ、同時に車として成立させる設計的条件をクリアすること、次はさらに…と。

実際はアイディア作業ひとつとっても、お客さまのニーズやコンセプトなどと照らし合わせ、考えなければならないことは山ほどあります。その壁をひとつずつ乗り越えた時、オリジナルのアイディアがカタチになるのです。デザイナーをはじめて25年になりますが、壁を乗り越えたときの快感は、今も変わりません。

インタビュー


  • サイモン・ハンフリーズ
    ジェネラル・マネージャー


  • 藤原 裕司
    エクステリアデザイナー


  • 松田 章
    クレイモデラー


  • 本崎 正規
    デザイナー


  • 堀部 和雄
    木型モデラー


  • 宍戸 恵子
    カラーデザイナー