生産技術

新パワーユニット

HV(EV)

モーター用コイルインサーター

ステーターコア(鉄芯)のスロット内へ多本数の巻線コイルを挿入する設備。巻線機で巻いたコイル線をアッパーツールと呼ぶインサート治具へ装着した後、インサート治具のコイルガイド(ブレード)に沿ってコイルが移動しながら自働でステーターコア内へ前進・挿入された後、スロットのコイル挿入口をふさぐウェッジ紙を同時に挿入する。U、V、W三相モーターの場合、このコイル挿入工程を3回繰り返して1個のステーターが完成する。

フィラメントワインディング工法

回転子(ローター)の外側に貼り付けたマグネットが高回転時の遠心力で破壊しない強度を確保するため、エポキシ樹脂を含浸したガラス繊維(Glass Fiber Reinforced Plastics)を高張力で回転子に巻きつけて熱硬化する工法。ローターシャフト外周に磁石を接着した後、ガラス繊維をボビン状に巻付けると同時にエポキシ樹脂を含浸させて硬化させる。ガラス繊維の許容強度に近い張力で巻くことから、わずかな傷でも繊維が切れてしまうため、ガラス繊維に傷を付けない機構を付加して品質を確保した。

熱硬化性樹脂モールド成形法

発電機のステーター放熱対策として熱硬化性樹脂(BMC)でステーターとアルミハウジングを一体成形(モールド)してステーターの発熱をケースで冷却するために採用した工法。樹脂を成形する前に熱盤を使って短時間で加熱した後で専用トランスファー樹脂成形機により金型内へ樹脂を充填し硬化させる工法を、本社工場「プリウス」用ステーター組付ラインモールド工程に採用。初代「プリウス」で採用した本工法は、アルミハウジングとステーターの一体BMCモールド成形を量産で採用した世界初の例である。

ローター一体埋込磁石の着磁工法

磁力のない磁石をローターへ組み付けた後に、外部に設けた電磁コイルから磁界を掛けてローター内の磁石を磁化させる工法。産業用モーターなど表面磁石型ローターでは一般的な生産技術であるが、希土類磁石をローターコアへ埋め込んだ構造であるハイブリッド用ローターで採用した例は少ない。組付工程内での磁石への異物付着防止、組付作業性向上のため、磁界を造る電磁コイルの設計を工夫し電磁コイルへ掛ける電圧や磁束量を最適化することで、100%着磁に近い後着磁工法を実用化した。

集中巻き用平角コイル巻線機

発電用ステーターを小型化するため、ボビン巻き状のコイルを円周上に配列した集中巻きステーターを採用。ボビン巻きコイルを製作する巻線機は、平角エナメル線を隙間なく整列し巻き取るためにエナメル素線の巻き癖をとるためのローラーを千鳥状に配置したテンショナー機構と、巻取り時に1段目から2段目に乗り移る場合に起こるエナメル線の位置ズレを抑えるガイド爪を持たせることで、コイル仕上がり寸法の安定化と絶縁性能を確保した。

高電圧相間絶縁工法

初代「プリウス」生産ラインでの相間絶縁紙組付けは、人による手作業で行なっていたが、熟練と時間を要する作業であったため、月産数千台規模の量産化対応を考え、自働組付技術を開発した。組付工法は、コイルのステーターコア組付と同じインサート方式を応用し、組付けと絶縁安定化を両立する絶縁紙形状の最適化をすることで、組付けの自働化を実現。本技術を礎とし、後続プロジェクトの「ハリアー ハイブリッド」「カムリ ハイブリッド」などへ展開されていった。

磁石モールド固定法

「ハリアー」で採用したエポキシ接着材をローターコア磁石穴に含浸する磁石固定工法は、接着品質管理が難しいため、新たにコア磁石穴と磁石の隙間へ樹脂を押し込み充填する磁石モールド固定法を開発した。コアに磁石を組み付けた後でコア上下を金型で挟み込み、樹脂チャンバーへ入れた熱硬化性樹脂を磁石穴の隙間へ充填して加熱硬化させる。本工法によりコア樹脂穴へ100%樹脂が充填されて品質が安定するとともに、注入チャンバーに残った樹脂も簡単に除去できるなど生産性が向上した。

燃料電池

トヨタ「FCHV」リース販売開始

1992年(平成4年)10月に始まった燃料電池(FC)開発はゼロからのスタートであり、FC量産化に向けてのスピード化を図るために設計・生技が連携を取り、FCの技術開発・生産技術開発が並行して進められた。その結果、2002年10月に内製FCスタックの号口生産が開始され、同年12月には、この内製FCスタックを搭載した燃料電池車「FCHV」が世界で初めて日本国内と米国にリース販売された。

高圧水素タンク

2001年(平成13年)12月に車載水素貯蔵技術として高圧タンク方式の採用をトヨタが決定し、トヨタグループで内製開発に着手。2004年4月には35MPa高圧水素タンクを開発・認証取得し、2005年に「FCHV」に搭載。さらに航続距離を延ばすため、70MPa高圧水素タンクの開発を進め、FCHV-advに搭載して2007年9月28日に大阪・東京間(560km)を無充填走行した。

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