第3節 「第2の創業」―社内改革の推進

第3項 改革運動の展開

「PRO21」の展開

人事施策面でも1996(平成8)年から新たな改革が始まった。「21世紀に向けた、自立し競争力ある人材・組織・制度を目指した人事の総合的改革」をねらった「PRO21」の展開である。

1989年に実施した「フラット化」による組織・人事体制の抜本改革は、社内の意識改革の進展という意味では不十分であったため、処遇面も含めての対処が必要になった。まず1996年に課長級以上の人事制度「チャレンジプログラム」を導入し、①年功的要素の払拭と成果主義の徹底、②スタッフ職(プロフェッショナル)を前提とした育成・活用、③計画的な人材育成と育成責任の明確化などに取り組んだ。

賃金制度の見直しも進め、毎年の評価によってダイナミックに処遇が上下する制度を導入した。資格についても、従来の部長級・次長級・課長級という管理職を連想させる名称から、「基幹職1級・2級・3級」に改め、新たに「賃金等級」の概念を導入した。ただし当時、日本企業に浸透しつつあった「結果主義」的な成果主義とは一線を画し、「長期的な視点で仕事を進める」「チームワークよく成果を出す」など、トヨタの伝統的価値観を維持する評価の仕組みを徹底した。

1999年にはPRO21の一環として、事務・技術系の係長級以下の若手層を対象にした「プロ人材開発プログラム」を立ち上げた。全員がプロ人材を目指すため、「核となる専門分野を確立し、基礎能力を向上する」ことに力点を置いたものである。従来10段階に分かれていた資格体系は「男女雇用機会均等法」への対応の観点も加え、従来の「一般職」は廃止して「業務職」「専門職」「上級専門職」の3つに大くくり化した。これにより女性社員は一般職が多かったが、より高い目標を選択できる仕組みとなった。次いで2006年にはポストフラット化の人事組織改革を行い、意欲と能力の高い業務職の活力をさらに引き出すため、従来1本の職種を「業務職」と「事技職」に分割するとともに、上級資格である「上級業務職」を新設した業務職の新人事制度を導入した。

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