第7節 グローバリゼーションを支えた各機能

第3項 モノづくりのさらなる改善

GBLなど革新的なラインの構築

トヨタでは、1985(昭和60)年にフレキシブル・ボデー・ライン(FBL)を導入していたが、1996(平成8)年には新たな車体溶接ラインであるグローバル・ボデー・ライン(GBL)の開発に着手した。

FBLは複数のモデルを流すことができ、かつモデル切り替え時に必要な治具(位置決め補助具)の取り替えが短時間で済むため、生産効率や精度の向上に大きな成果をあげてきた。しかし、この方式は大量生産工場向けであったことから、少量生産国の工場では採算が合わず、海外生産拠点の拡大や需要変動に対応できる新ラインの開発が求められていた。

GBLは、1996年に生産を開始したトヨタ・モーター・ベトナム(TMV)の少量ラインおよび、日本では1997年12月発売の初代プリウスの生産ラインで試験導入を行った。さらに、1999年1月発売のヴィッツで本格的な量産ラインへと発展させ、極少生産から大量生産まで対応できるGBLとして、世界の工場に展開していった。GBLの場合も、デジタル技術を駆使した3次元データで設備設計が進められ、開発期間はFBLの4年から2年へと短縮された。

2002年には工場の内製原価を低減する「BT2(BREAK THROUGH TOYOTA)」活動の一環として、組立工程のシンプル化に寄与する「SPS(Set Parts Supply System)」の試行導入が始まった。これは、部品の「選択」と「組付」の作業を分離し、あらかじめ組立ラインとは別のヤードで、車両1台分の部品を選択・セットして作業者に供給する方式である。作業者は組付作業のみに集中できるので、短期間での習熟が可能となり、とくに新車切り替え時の品質確保や操業度の安定に威力を発揮した。SPSは、2004年に堤工場のライン改装時に初めて導入され、2006年から新工場の建設や改装時に合わせて、国内外への全面展開を開始した。

生産部門でのグローバル化が進展するなかで、世界各地の多様な人材によって、高品質の製品を量産できるラインをつくりあげることが求められるようになった。こうした時代の要請に応え、コンパクト車の生産では、世界ナンバーワンの品質やコスト競争力、さらに環境負荷の低減を目指し、高岡工場で革新的なラインの構築に取り組んだ。2006年から同工場第1ラインの改装を始め、①重量物の運搬や車両への搭載など、作業員の負担が大きい作業を補助するロボットの採用による「人とロボットが共存する自働化」、②高感度カメラやセンサーによる高精度な自働検査、③SPSを全面的に導入した組立工程、などの新技術を採用した。その結果、トヨタでは最速の50秒に1台を完成させる新しいラインが、2007年8月に完成した。同じ仕様のラインは、2008年末に稼働したトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・カナダ(TMMC)の第2工場にも導入し、要員や開発工数がひっ迫するなか、生産技術および生産部門は一連の新ライン立ち上げに全力をあげた。

こうした革新的なラインの導入は、投資額の増大や、国内工場での検証が不十分な段階で海外展開されるなどの課題も残した。一方、車両系生産技術の開発機能を集約し、開発段階で十分な検証を行うための開発棟を元町工場内に建設し、2009年1月から運用を開始した。

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