第7節 グローバリゼーションを支えた各機能

第4項 人材育成

グローバル生産推進センターの設置

2000年代に入るとトヨタの海外生産は一段と強化され、2001(平成13)年からはグローバル生産は毎年50万台規模で拡大していった。その一方で、人材育成を含め海外生産を支援する要員の不足が顕在化し、この当時、奥田碩会長は「兵站線が伸び切っている」という表現でトヨタの課題を指摘した。

これを受けて、2003年7月に元町工場内に開設されたのが、グローバル生産推進センター(GPC:Global Production Center)であった。GPCは、海外事業の急展開に対処し、新工場の効率的な立ち上げと既存の海外生産拠点の自立化を実現するうえで不可欠な生産現場の管理者や監督者を育成することを任務とした。

従来、海外生産拠点の立ち上げに際しては、同一車種を生産する日本の工場が「親工場」として実習生を受け入れ、海外生産拠点の中核人材を育成していた。しかし、親工場の要員不足は明らかであり、また親工場間で育成法に微妙な違いがあることも問題点として指摘された。GPCでは、各工程で最も優れたトヨタ方式を「ベスト・プラクティス」と定めたうえで、これまで文章・写真が主体であったマニュアルを、実物を撮影したビデオやCGをフル活用した「ビジュアル・マニュアル」にし、「カン・コツ」を効率的に習得できるようにした。

GPCで受講する研修生は、国内外生産現場のトレーナーであり、研修を終えると教材と研修手法を持ち帰り、現地生産現場での人材育成にあたった。こうした方式の採用により、同一レベルの技能習得に要する訓練期間が、従来の半分で済むようになった。また、GPCには号口試作(号試=量産向け試作)を効率的に行う機能ももたせ、モデルの立ち上げや切り替え時に、関係する世界の複数の生産拠点のメンバーが参加して「グローバル号試」を行うこととした。

GPCの機能は海外への展開も図り、2005年にタイにアジア・パシフィック生産推進センター(AP-GPC)、2006年にはイギリスに欧州グローバル生産推進センター(E-GPC)、米国に北米生産サポートセンター(NAPSC)をそれぞれ開設した。

一方、2002年1月にはグローバル化を支える人材育成機関として、トヨタインスティテュートを設立した。その初代学長には張冨士夫社長が就任した。トヨタインスティテュートは、海外事業体を含めたグローバルトヨタの経営層やミドルマネジメントの育成をリードする役割を担った。2004年にはトヨタの強みである「問題解決」手法を体系化した「TBP(Toyota Business Practices)」を取りまとめ、2005年からTBPトレーナー養成研修を開講した。2008年10月時点で全世界に400人を超えるトレーナーを認定、TBPの着実な展開による全メンバーの問題解決力の底上げを図っている。

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