第2節 新経営体制の発足

第1項 「もっといいクルマをつくろうよ」

「2009年度グローバル会社方針」

2009(平成21)年4月1日、渡辺捷昭社長は全社員に向けて「2009年度グローバル会社方針」を発表した。同年度から、会社方針を30万人の連結社員で共有するという方針に基づき、従来の「会社方針」から「グローバル会社方針」へと名称変更したものである。同年度は、①時代に左右されず普遍的に取り組む足元固め、②現下の緊急課題への全社一丸となった取り組み、③お客様第一、現地現物、商品魅力向上への取り組みと需要構造変化への対応、の3点をテーマに掲げ、難局を乗り切るための一歩を踏み出していった。

グローバル会社方針の発表に際しては、豊田章男副社長が社長就任を前に、社員に向けてメッセージを発信した。このなかで豊田副社長は、現下の厳しい環境のもと、「大切なのは決して『軸がブレない』ことだと思う。その軸とはただ1点『もっといいクルマをつくろうよ』ということである」と、シンプルで明快な呼びかけを行った。そのうえで「いいクルマ」の根底にあるのは「良品廉価」であると指摘し、それを実現するには「『お客様第一』に徹することと『現地現物』で現実を見ること」が求められると訴えた。さらに、「お客様が『買える』と思われる値段とすること」が重要であり、商品開発も原価低減もそこが出発点になると強調した。そして「向こう2、3年は大変厳しい状況が続くと思うが、トヨタ70年の歴史のなかで60年は苦労の連続でもあった。トヨタらしく『質実剛健』に、『報恩感謝』の気持ちを忘れずに、皆さん一人ひとりの力をお借りして、力強いトヨタを取り戻していきたい」と結んだ。

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