運搬の合理化

運搬の合理化は、豊田英二常務、齋藤尚一常務ともにフォード社での研修時から着目していたテーマである。11951(昭和26)年初めには運搬対策委員会が発足し、運搬管理体制の確立、運搬能率の向上を目的とする運搬機器の改良および規格化など、運搬に関する調査研究・改良が取り組まれた。

まず、構内運搬に用いていた手押し車、人力トロッコ、トラックなどに代わって、フォークリフト・トラックやトラック・トレーラー・トレーン(トーイング・トラクター)を採用した。あわせて、運搬用具のパレット、ボックス・パレットなどの規格化を進めた。また、電気ホイスト、各種コンベアを広範囲に導入し、作業能率の向上を図った。

1951年7月にはB型エンジンのシリンダーブロック、シリンダーヘッド、カムシャフトの運搬用に、神鋼電機製電動フォークリフト(FHL-1)を鋳物工場と第1機械工場との間に導入した。これら鋳物3部品を各1,000個運ぶのに要する時間は、人力トロッコと手押し車の場合、作業者5人で月間合計634.05時間であったが、フォークリフトの導入後は、作業者1人で月間合計87.5時間へと激減した。当然コストダウンも図られ、償却費、維持費、工賃などを含む運搬費を比較すると、月額5万2,166円の節減となった。

トーイング・トラクター(牽引車)については、SB型小型トラックの荷台部分を短縮した改造車を用い、部品を搭載した複数の台車を牽引して各工程へと運搬した。トーイング・トラクターの運行時間を定めることによって、必要な部品を、必要な場所へ、必要な時に届けることができ、「ジャスト・イン・タイム」生産を実現する手段の一つとして利用された。

その後、フォークリフトに関しては、トヨタ自工製S型エンジン(950cc)を搭載したフォークリフトが神鋼電機などから発売された2ことを受け、1956年3月に豊田自動織機製作所が同エンジン搭載のフォークリフトLA型を開発・製造した。その販売にはトヨタ自販があたった。

なお、フォークリフトはじめ産業車両の販売はトヨタ自販の事業として大きく成長し、トヨタ自工とトヨタ自販の合併後は、トヨタ自動車の事業となったが、2000(平成12)年12月に豊田自動織機に営業譲渡され、2001年には製造・販売を統合したトヨタL&Fカンパニーが豊田自動織機の企業内カンパニーとして発足した。

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