第8節 本格的乗用車トヨペット・クラウンの登場
第3項 本格的乗用車トヨペット・クラウンの開発
日本初の本格的乗用車
トヨタ初の乗用車は、1935(昭和10)年にシボレー車とデソート車を参考に設計されたトヨダAA型乗用車である。カタログには「スタンダード・セダン」と表示されていたが、それは自動車先進国の米国から見てのスタンダードであった。当時の日本の国情からすれば、「大型乗用車」であり、「スタンダード」といえるものではなかった。
しかし、AA型乗用車がその後の自動車設計、製造技術の基になったことは間違いなく、トヨタ自工ではその技術を基盤として、独力で日本初の本格的乗用車「トヨペット・クラウン」を開発した。つまり、クラウンの登場によって、日本の国情に適合したスタンダード・セダンが初めて誕生したのである。
当時の自動車雑誌は、RS型クラウンの発売について、「新トヨペット 豪華、国際水準のクラウン 実用本位のマスター」のタイトル記事で、次のように伝えている。
このように、クラウンは日本の国情に配慮した国産車として、高い評価を得ていた。そして、トヨタ製乗用車の基準となる仕様を確立すると同時に、のちの国産乗用車にも大きな影響を及ぼした。