日本初の本格的乗用車

トヨタ初の乗用車は、1935(昭和10)年にシボレー車とデソート車を参考に設計されたトヨダAA型乗用車である。カタログには「スタンダード・セダン」と表示されていたが、それは自動車先進国の米国から見てのスタンダードであった。当時の日本の国情からすれば、「大型乗用車」であり、「スタンダード」といえるものではなかった。

しかし、AA型乗用車がその後の自動車設計、製造技術の基になったことは間違いなく、トヨタ自工ではその技術を基盤として、独力で日本初の本格的乗用車「トヨペット・クラウン」を開発した。つまり、クラウンの登場によって、日本の国情に適合したスタンダード・セダンが初めて誕生したのである。

当時の自動車雑誌は、RS型クラウンの発売について、「新トヨペット 豪華、国際水準のクラウン 実用本位のマスター」のタイトル記事で、次のように伝えている。

新トヨペットに接して“流石はトヨタ”であるの感を深めたのは筆者だけではなかったと思う。国産車のためにホッとしたというのは偽りのないわれわれの心境であり、国際水準の構造と機能をもつだけでなく、日本の道路や使用状況に応じた“懸架装置や制動装置に対する考慮”など大いに感服するに値するものがあり、国産車として正にわが意を得たものである。1

このように、クラウンは日本の国情に配慮した国産車として、高い評価を得ていた。そして、トヨタ製乗用車の基準となる仕様を確立すると同時に、のちの国産乗用車にも大きな影響を及ぼした。

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