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トヨタが夢のクルマをミニチュアカーに
新設された「夢のクルマ技術賞」

2015年の第9回コンテストから新設された「夢のクルマ技術賞」。技術部門を統括する加藤副社長の選考による、トヨタのクルマづくりにインスピレーションを与えた作品に贈られる賞です。該当作品は、今年初めてトヨタのモノづくりの“ワザ”でミニチュアカーとして制作し、表彰式で披露されました。
この賞には、UAEのミンハル・アドナン・サミさん(制作当時9歳)が描いた「エコフィックスカー」が輝きました。果物と野菜の堆肥を燃料に走る「夢のクルマ」です。人々と環境を助ける「夢のクルマ」に平和への願いが込められています。
加藤副社長は表彰式で、「長年、クルマづくりを担当してきましたが、大人が全く考えもつかないようなユニークで個性的なみなさんのアイデアに驚きました」と優しい表情で子供たちに語りかけました。

制作は試行錯誤の連続

では、技術部門のエンジニアが情熱を込めて制作した3Dミニチュアカーは、いったいどのように生まれたのでしょうか?
制作部隊には、試作部が抜擢されました。彼らはアイデアやデザインを実際の動くクルマに作り上げていくプロフェッショナル。今回、全体設計にかかわった遠藤翼さんとカラーリングを担当した池野文尊さんに話を聞きました。
受賞作の決定から発表までの間はわずか2カ月。その短い間に以下の工程が敷かれました。

  • (1)原画をもとに、立体像をイメージしてスケッチする。
  • (2)スケッチをもとに、工業用粘土で造形。
  • (3)粘土で作った造形を3Dスキャナーでスキャンしてデータに置き換えてから、3Dプリンターで出力。
  • (4)タイヤやホイールなど、細かいパーツはすべて手作り!
  • (5)植物の種を大地にまく仕掛けを加える。
  • (6)カラーリングを施して完成

Q:制作中、難しかったことは?
遠藤翼さん:全て手作りした細部のパーツですね。ここまで細かいものは今まで経験したことがなかったので。たとえば、ボディの「樹木」。平面の絵から立体をイメージして造形するには技術もいるし、まずは絵の作者の気持ちに近づいて想像力を働かせることが必要でした。
池野文尊さん:色の塗り方にもいくつか方法があり、最もきれいに仕上がるスプレーを採用しました。しかし、異なる色を着色する時は、塗らない部分をマスキングしなくてはならない。我々が通常業務で着色するクルマの場合は大抵1色です。ここまでカラフルな色を塗り分け、さらに発色を良くするために4回もの塗り重ねを施すのはなかなか大変な作業です。

2人は、子供を喜ばせたい一心で取り組んだと言います。背景となる農場も立体感を出し、再現度を高めています。中央の家が小さく、外側の家が大きいのは遠近法を取り入れたから。遠藤さんは、奥行きを出す解決策がなかなか思い浮かばず、模索する毎日だったと振り返ります。

絵に込められたメッセージを探る

最も工夫したのは植物の種(に見立てた発泡スチロール)を大地にまく仕掛けです。
模型の内部に仕込んだモーターがファンを回し、発生する風により天井(ルーフ)から伸びた管を通って、種が飛んでいきます。

このアイデアに落ち着くまでには、ほかに3つの案がありました。1つ目は、燃料タンクに堆肥を入れると、コインが出る仕掛け。しかし、模型の大きさに対してコインは小さすぎて、動きが見えにくい点を懸念して却下。2つ目は、車が走り出す仕掛けでしたが、もっと驚かせることに挑戦したいと、別の方法を選ぶことにしました。3つ目は、天井に集められた雨水がマフラーから出て、水まきをする仕掛け。種を飛ばす案とともに最後まで検討した案でした。その名残に、模型の内部に水を通す穴があります。

子供の想いを形にするうえで、関連部署とともに「絵に込められたメッセージは何か」を探る対話を何度も重ねたと、遠藤さんは言います。また、悩んだ時に後押しになったのは部署内の先輩・同輩の惜しみないアドバイス。遠藤さんは「こうした『つながり』があったからこそ完成できたと思います」と胸を張ります。

表彰式の会場でミニチュアカーが披露された時、会場はどよめきと歓声に包まれました。絵を描いてくれたミンハルさんが一番嬉しそうにしていたのは言うまでもありません。この様子に、池野さんは「彼女の目の前で披露すると聞いていたので、『喜んでもらえたらいいな』と思いながら作りました。当日は彼女が笑顔を見せてくれて、私も嬉しかったです」。

遠藤さんは「絵を初めて見た時、ボディに描かれていた『PEACE』という文字に強くひかれたんですよね。私の趣味であるレゲエ・ミュージックの『LOVE&PEACE』に通じて何か運命を感じました。制作に携われてよかった。子供たちの願いは大人が叶えるものだということを強く思いました」と力強く語ってくれました。