トヨタは2011年3月にトヨタグローバルビジョンを発表し、トヨタが目指す企業像や価値観を明確化しました。そしてこのビジョンに基づく「もっといいクルマ」を軸としたぶれない経営こそが、トヨタの持続的成長を実現するものと考え、その取り組みをさらに具体化すべく、「クルマづくり」における改革を推進しております。
中長期的視点での取り組みとしては、まずは「企業風土」の改革です。グローバルビジョンの実現に向けた意識改革や他社との協業などを通じたベンチャー精神の復活を目指します。

また「開発・設計・調達」においては「もっといいクルマ」を実現するための新たなクルマづくりの方針の導入による開発・デザイン一体となった改革の推進、非常時の部品調達リスクを軽減するための「サプライチェーンの強化」、そして「生産」においては『モノづくり構造改革』を基本に生産技術や生産体制の改革を行います。さらに「販売」においては、成長著しい新興国への地域ニーズに見合うクルマの投入で、全世界の販売における新興国の比率を現在の4割から5割とすることを目指します。これらの取り組みは、現地生産・調達の拡大などで円高抵抗力を高めることなどによる「強い収益基盤の早期実現」と一体で推進することによって、ビジョンに基づく持続的成長への道筋をつけられると考えています。
トヨタは「もっといいクルマづくり」を実現する開発体制の改革に取り組んでいます。「いいクルマ」とは何かを徹底的に検討し、クルマを「趣味・感性に特化したクルマ(特にスポーツ系)」「量販車、個人・一般向けのクルマ」「社会貢献に資するクルマや商用車」「環境対応車・新コンセプト車などの次世代車」の4つのゾーンに層別。それぞれのゾーンで求められるデザイン、走行性能等をお客さまの目線で明確化し、お客さまの期待に応える「いいクルマ」を創出していきます。

トヨタは、開発体制の改革を推進すべく「デザインの強化」「開発力の強化」「地域重視のクルマづくり」そして「組織・体制の整備」に取り組んでいます。ここではお客さまに最も近いチーフエンジニア(CE)を開発の総責任者として権限を強化し、それに伴いデザイン決定プロセスなども含め、CEを中心とした組織・体制へと再編しています。さらに今後は、「いいクルマづくり」に向けた新たな方針となるToyota New Global Architecture(TNGA)」の導入などで開発体制の改革を着実に推進し、国際競争力を高めることで、新しい時代を切り拓く成長力につなげていきます。

トヨタは「もっといいクルマ」をつくるための取り組みの一環として、車両開発にあたって、設計とデザインが協力してクルマの骨格を改革する新たな方針であるTNGAを導入します。
TNGAでは、「走る」「曲がる」「止まる」といった運動性能はもちろんのこと、ドライビングポジションなど、人間工学やデザインの自由度を追求した新たなプラットフォームを確立し、複数の車種を同時に企画する「グルーピング開発」などにより、異なる車種間で部品・ユニットを共用化します。これにより、開発の効率化と原価低減を実現します。
TNGAの採用により、部品共用化によるコストや工数の削減は実現されますが、同時に「基本性能やデザイン性向上」「価格競争力向上」「品質確保」のための開発工数を創出することで「商品力の向上」を目指すもので、技術・営業・調達・生産技術など多岐にわたる活動を通じて「もっといいクルマづくり」につながっていきます。TNGAは、今後数年のうちに発売される新型車から順次導入する予定です。

トヨタは、「いいクルマ」を継続的に創出する体制をめざし、「開発力の強化」「地域重視のクルマづくり」「組織・体制の整備」を進めていきます。「開発力の強化」については、2012年末の開発能力*を2009年と比べて約30%向上させる目標を掲げ、設計・試作・テストといった開発に関わる「ツール」「プロセス」「人材・能力」の各要素の改善とレベルアップを図ります。さらにお客さまに一番近い開発総責任者であり、開発担当車種を代表するCEの権限強化による意思決定のスピードアップで開発効率の向上を目指します。
「地域重視のクルマづくり」では、各地域に地域統括部長を配置し、現地の営業部門や研究・開発部門と連携することで、市場ごとのお客さまニーズを把握し、品質・商品力の向上を図ります。
「組織・体制の整備」においては、CEが車両の総責任者として開発全般を統括し、個別技術については各技術領域が責任を持つ体制とし、CEが目指す「いいクルマ」の基盤となる専門技術の蓄積と先行開発を強化する体制としました。さらに社内で車両デザインの評価・審査においても開発責任者であるCEの意向が反映されるプロセスを導入しました。
TNGAでは量産効果プラットフォームを確立した上で、グルーピング開発などにより、部品・ユニットを共用化し、開発の効率化と原価低減を実現していきますが、生産技術部門ではこの考え方を実現すべく、技術と一体となって性能、機能が最も優れた図面、造り方を開発し、共用・共通部品を複数の車種に展開していきます。これを受けて、「調達」分野では地域、車種、立ち上げ時期を跨いで部品発注を行うことなどにより、量産効果を引き出していきます。この部品共用化においては、品質確保や国際競争力向上といった視点で、仕入れ先との協力のもとで推進します。さらに部品共用化によって部品あたりの生産量が増えることで、効率性を落とすことなく、複数の仕入れ先への発注や生産拠点の分散が可能となり、災害時でも安定的な調達を可能とするサプライチェーンの強化につながるものと考えます。
「アバロン」は、1994年に投入した米国におけるトヨタブランドの最上級車ですが、2012年4月にニューヨークで開催されたモーターショーにおいて、その4代目となる「新型アバロン」を発表しました。今回はカリフォルニアにあるトヨタのデザイン部門CALTYの若手デザイナーが担当し、車両開発はすべて北米主導で進められるなど、グローバルビジョンが目指す地域主導経営が実現されつつあります。

2012年4月に開催された北京モーターショーでは、中国常熟市の研究開発センターが開発を進めているハイブリッドコンポーネントを搭載するクルマのコンセプトモデル“雲動双擎(ユンドンショワンチン)”と、新規ユーザー獲得のために開発された小型のグローバル戦略車のコンセプトモデル"TOYOTA Dear~(チン)~"を発表しました。今後も環境車、福祉車両からスポーツカーにいたるまで、中国のお客様の生活や社会を豊かにするような"もっといいクルマ"づくりに取り組みます。

トヨタは、生産技術において「モノづくり構造改革」を進めています。これはお客さまに「安全と安心」をお届けすることで「お客さまに笑顔になっていただき」、さらにはお客さまが「ワクワク、ドキドキするクルマ」そして「環境にやさしいクルマ」を「良品廉価」でお届けする、「いいクルマづくり」を実現するための取り組みです。私たちは「いいクルマづくり」と「競争力のあるモノづくり」という2つの視点で取り組みを行っています。

「モノづくり構造改革」への取り組みのベースは、トヨタのDNAとも言うべき「トヨタ生産方式」にあります。それは、「自働化」と「ジャストインタイム」です。「自働化」は不良が発生する瞬間を検知して機械を止め、異常を取り除いてから再び生産を始めるというものですが、現在ではその考え方をさらに進め、不良の出ないモノづくり、100%良品しかつくれないモノづくりを目指しています。「ジャストインタイム」は、必要なものを必要なときに必要なだけつくる、運ぶことで、リードタイムの短縮に加え、サプライチェーンのリスク対応にも有効です。「ジャストインタイム」を行うためには、平準化生産が必要で、そのために生産工程の均等なタイミングを図るための「タクトタイム」と「標準作業」という考え方が生まれました。私たちは、このような考え方のもとに、「モノづくり構造改革」を行っております。
「モノづくり構造改革」には3つの柱があります。「1個ずつつくる」「売れるスピードでつくる」「少ない生産規模で設備を構える」です。これらは「トヨタ生産方式」の原理原則であり、その具現化に他なりません。

「1個ずつつくる」については、トヨタは従来から「お客さまのオーダーに基づいて」つくる、一個流し生産を基本としています。「売れるスピードでつくる」は、需要に合わせてつくることが大事であるという考え方です。さらに「少ない生産規模で設備を構える」は、需要の小さい時には小さい構えで少量をつくり、需要拡大時には素早く対応できるようにすることです。そのため我々は「少規模簡易切替ライン」を実現しました。その狙いは、「少規模でも安くつくる」ことであり、その実現のために「正味率*を上げる」、「汎用性を上げる」といった取り組みを行っています。
「モノづくり構造改革」を行うためには、「常識にとらわれない技術革新」も必要です。技術革新のためのキーワードとして「シンプル・スリム」「変種変量」「ネットシェイプ(トヨタ生産方式7つのムダ*の内「加工そのもののムダ」を省く)」「高付加価値」の4つがあります。

「シンプル・スリム」とは、設備を壊れにくく、万が一壊れても簡単に修復可能とするために、設備を極力シンプルにすることであり、設備投資の削減や設備償却費の低減にもつながります。具体的な例としては、プレス、鋳造、鍛造などの型を、体積比で従来の2分の1から10分の1までシンプル化しました。そのほかの設備やライン、さらには工場建屋までも徹底してシンプル・スリム化を行っています。
「変種変量」とは、種類や量の変動に柔軟に対応することです。そのために、最終組立工程では「伸縮可能なライン」を、エンジンやトランスミッションのラインでは、「機種の切替が容易なライン」を実現しました。
「ネットシェイプ」とは、特に粗形材加工した後の製品形状を、最終製品形状に近づけることです。これにより、切削加工などのムダを省くことができます。代表的な例としては、エンジンのクランクシャフトの材料ロス低減活動です。具体的には、匠の技のノウハウを自働機に移植することで、材料ロス低減をそれまでの80%から90%にまで高めることができました。
「高付加価値」とは、ハイブリッドをはじめとするユニット製品の小型化、高性能化、低コスト化の実現であり、高性能なクルマづくりを可能とする生産技術の開発です。
このような革新を行うには、経験によって習得され、受け継がれてきた匠の技をデジタル化・形式値化し、革新技術に移植することが必要です。そして匠はその技能をさらに磨き、その技を革新技術に移植することでより高い革新技術をもたらすという、「匠の技と革新技術の好循環」を実現していきます。
トヨタ生産方式の高度化と、それを支える新技術や新製品の開発と生産は日本から生まれると考えます。日本の強い生産現場、仕入先と一体となって実現される高い技術、そしてハイブリッド車開発に代表される付加価値の高いモノづくりを国内に残し、その強みを生かすことで競争力を高め、日本のモノづくりを磨くことが重要です。1980年に国内300万台を達成したときの海外生産はわずか20万台。今では海外500万台と大きく成長していますが、その礎となったのが国内300万台の生産体制です。トヨタは、この300万台体制を維持しつつ、高い技術を持つ日本のモノづくりの競争優位性を最大化し、日本で開発、熟成した革新技術をスピーディに世界の各拠点に展開していくことで、グローバルでのトヨタの競争力をさらに向上させたいと考えています。
トヨタは東北のグループ企業3社(関東自動車工業(株)、セントラル自動車(株)、トヨタ自動車東北(株))を統合し、新しく「トヨタ自動車東日本株式会社」として発足させました(2012年7月1日合併)。東北3社の統合により、「東北」を「中部」「九州」に次ぐトヨタ第3の国内生産拠点と位置付け、コンパクト車の企画・開発から生産に加え、ユニット部品の生産、海外事業支援業務まで含めた総合車両メーカーへの発展を目指します。
トヨタ3極体制では、「中部」は「国内生産の中核」として今後さらに新技術・新工法などのイノベーション技術の開発という役割を強化します。「九州」はミディアム・クラスやレクサスブランドといった高品質・高付加価値のクルマづくり拠点として、「東北」はコンパクト・クラスのクルマづくりの拠点となります。
各地域会社が、特定車種群に特化した量産化技術の確立を担うことで日本のモノづくりの高度化が図れるものと考えています。そのためにも国内生産300万台体制を維持し、技術開発・商品企画と生産・販売の現場との相互作用を通じたイノベーションを生み出す環境を確保することで、3極体制の強化と自立性の向上を図り、国際競争力をより一層強化していきます。
世界トップクラスの低燃費*を誇る「アクア」は、HVシステムの小型・軽量・高効率化など、トヨタの量産HV車開発17年間の知恵と技術を結集し、新たに誕生したコンパクト・クラスのハイブリッドカーです。また、世界3900万台を誇るロングセラーカーを日本の道やお客さまにジャストフィットさせたコンパクトカー「新型カローラ」も誕生しています。
「アクア」は関東自動車(現:トヨタ自動車東日本(株))の岩手工場、そして「新型カローラ」はセントラル自動車(現:トヨタ自動車東日本(株))の宮城工場と、いずれも東北において生産されていることから、東北におけるモノづくりの競争力強化の重要なステップであり、日本の元気のひとつになるべく、地域に根付いたモノづくりを推進していきます。

トヨタは「グローバルビジョン」において、グローバル販売比率を引き上げ、2015年に全世界の販売における新興国の割合を2010年の4割から5割とすることを目指しています。この実現に向け、「新興国」を重点分野の一つとして位置づけ、現地の研究・開発機能の強化を進めるとともに、地域の市場やニーズに見合う良品廉価なクルマを、タイムリーに提供できるよう地域重視の「いいクルマづくり」を実践してまいります。

トヨタでは、2004年に世界規模での効率的な生産、供給体制を目指すIMV(InnovativeInternational Multi-purpose Vehicle)プロジェクトを立ち上げ、円高や競争激化など厳しさを増すグローバル環境で成長を果たすべく、新興国にベストフィットする商品の開発、タイ、インドネシアを含む4工場に輸出拠点を集約することによるグローバル供給拠点化、為替変動対応力を高めるための日本以外からの現地調達率100%を目指しました。
新興国市場の拡大を追い風に、IMVは年々販売台数を伸ばし、現在ではピックアップトラック、多目的スポーツ車など5車種を、日本・中国・北米を除く全世界に展開、累計販売台数は500万台を超えました。さらに2010年には、グローバルモデルを各地域に展開するIMVをさらに一歩進め、現地ニーズを反映した「エティオス」をインドに投入し、累計販売台数は2012年5月現在、10万台を突破しています。
今後、新興国においては、IMVを積極的に展開するとともに、急速に拡大する中間所得層を主要顧客とした、100万円前後の小型車を100カ国以上で販売する「新コンパクトカー戦略」に取り組みます。具体的には「エティオス」をベースに8モデルを投入し、IMVに次ぐ新興国専用コンパクトカーとして2015年を目処に年間100万台以上の販売を目指します。
トヨタはIMVプロジェクトで実現した「世界のお客さまへの魅力的なクルマの提供」をさらに発展・拡充させ、現地事業体の自立促進と、現地での部品流通ネットワークおよびサプライチェーンの確立によって、新興国市場でのシェア拡大を目指します。
