アニュアルレポート 2012

特集 新興国におけるトヨタの取り組み

新しい戦略で「いいクルマ」づくりを目指す

ニーズへの適応と100%現地化を推進し、その国に深く根ざした事業活動を行います

トヨタの2011年における新興国の販売比率は45%に達し、2008年の35%から3年間で10%上昇しています。グローバルビジョンで掲げた、2015年までに50%を達成するという目標の早期実現に向けて、新興国で築き上げたグローバル供給体制をさらに強化するとともに、アジアを重要拠点としたより一層の現地化と、新興国専用コンパクトカーの積極的な投入による販売拡大に取り組みます。

新しい戦略で「いいクルマ」づくりを目指す

トヨタ販売台数

新興国でのトヨタの歩み

トヨタの海外進出の基本的な考え方

トヨタの新興国への取り組みの基本的なスタンスは、「産業報国の実を挙ぐべし」という考え方です。つまり自動車産業を通じて、その国の経済、雇用、交通などの発展に貢献するために「裾野産業の育成、発展に貢献し、現地に根ざした活動を行う」という考え方です。

トヨタは、その国に進出すればその国の市民となり、自動車産業を通じて財団活動や環境保全、人材教育などの社会貢献活動を積極的に推進し、その国で持続的に成長するために地域社会との対話を重視してきました。

新興国でのトヨタの歴史

ASEANとの関わりと取り組み

トヨタの新興国における取り組みの歴史は古く、特に、ASEAN諸国には1960年代から輸出と現地生産を推進してきました。

「創世期」
自動車産業のインフラ整備とサプライヤーの発掘・育成

1970年~1990年までの「創世期」の段階においては、現地の方に喜んでいただけるクルマをお届けするために、1976年にフィリピンに「タマラオ」を導入し、翌年にはインドネシアに「キジャン」を導入しました。フィリピンやインドネシアは、大家族主義でクルマは事業用と家庭用の兼用で使用できることが必要であり、未舗装の道路も多いことから多目的バンタイプのクルマが好まれました。また低廉なクルマづくりを行うためにプレス設備は導入せず、鉄板を折り曲げ、溶接してボディを製作する手法を採用するなど、現地スタッフやサプライヤーとともに新商品を開発してきました。このように「創世期」においては、自動車産業のインフラ整備とサプライヤーの発掘、育成に取り組みました。

「育成期」
域内水平分業体制の確立で裾野産業を育成

1990年~2000年までの「育成期」では、ASEAN自由貿易協定が徐々に実現していたこともあり、一国の市場規模では難しかった量産と原価低減を実現すべく、各国生産から域内水平分業体制を確立しました。自動車部品相互補完協定などの部品関税の減免措置を追い風に、各国が得意分野の部品を量産し、相互補完することで、規模拡大や量産効果による工場投資の効率化が実現され、裾野産業の育成にも繋がりました。

「発展期」
通貨危機を乗り越え、グローバル生産体制へ

そうした中、1997年に「アジア通貨危機」がASEANを直撃し、自動車市場も大きく影響を受けましたが、ここでの経験が、その後のIMVや世界戦略車の礎となりました。通貨下落に対応し、日本から調達品を大幅に削減し、現地調達比率を引き上げるとともに、通貨安を活かして、輸出体制を確立、さらに輸出に資する品質強化と原価低減に取り組みました。その結果、政府や地域社会の協力、サポートを受けながら、アフターサービスや部品ビジネスを強化し、販売状況に影響されることなく利益が出せる体質を構築、アジアの自動車産業基盤が大きく成長する2000年~2010年の「発展期」に繋がることとなりました。

新興国ーASEAN市場の推移

新興国シフトへ、トヨタの戦略 ~国・地域のニーズに対応したクルマづくりへ~

新興国での生産拡大―2013年には310万台体制へ

トヨタの海外ビジネスは、「日本で生産し、輸出する」初期段階から、「需要のある地域で生産する」第2段階を経て、「世界規模での効率的な生産・供給」へと進展しています。グローバルな生産・供給を担う新興国においては、その生産能力増強をめざし、投資を拡大しています。インドでは2009年に「フォーチュナー」、2010年には「カローラディーゼル」と「エティオス」の生産を開始し、それに伴い工場に対する投資を拡大しています。ブラジルでは2007年に「カローラFFV」の生産を開始、以降、順調に販売を拡大し、2012年後半には、コンパクトカーの新工場を立ち上げる予定です。

これらの結果、新興国における生産能力は、2013年には国内生産台数と同レベルの約310万台を見込むなど、2000年の54万台から、大きく拡大しています。

新興国での生産能力の拡充

新興国での販売戦略―「IMVプロジェクト」

「IMVプロジェクト」はトヨタの新興国における重要な販売戦略です。IMVは、2004年に140カ国以上の市場に導入することを前提に開発されたピックアップトラック3車型、ミニバン、SUVによって構成され、現在では11の国、地域で生産、世界約170カ国で販売する現地生産コアモデルとして展開しています。世界各地域でクルマがどのように使用されるかを「現地現物」の考え方で観察・分析し、各地域のニーズに対応したIMVを開発、投入し、販売後の充実したアフターサービスで、お客様から多くの信頼を獲得しています。
今後は、市場規模が大きく、自動車部品産業が集積されるタイをグローバル供給拠点として位置付け、生産能力の増強を図る方針です。インドネシアはじめ、その他の供給拠点も順次生産拠点の増強に向けた新規投資を予定しています。

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IMVは、Innovative International Multipurpose Vehicleの略称です。世界中のお客さまの様々なニーズに応えられる「多目的車」となりたいという思いで命名したプロジェクトです。

IMVシリーズ販売台数の推移

IMVシリーズ地域別販売台数

IMVグローバル供給体制

トヨタ「IMVプロジェクト」の強み

IMVプロジェクトのねらいは、「商品力」「低コスト・高効率」そして「為替変動対応力」にありました。新興国のお客さまの志向や使用環境によって最適な商品を提供すべく専用モデルを開発することで「商品力」の向上を目指し、さらに従来11事業体に分散していた小規模生産拠点を4拠点に集約し、コスト低減と効率性の追求を図りました。さらに円高が進行する中、日本以外の国々からの現地調達率を極限まで高める体制を目指しました。

IMVプロジェクトは、現在では世界規模での生産・供給が加速しています。4拠点のうちタイはアジアをはじめ、オセアニア、欧州、中近東、中南米など世界中の輸出を担うグローバル拠点の中心的拠点に成長しています。さらに現地調達については、単に自国内で部品調達を推進するというだけでなく、部品の「グローバル最適調達体制」へと進化しています。

IMVを構成するモデルはアジアがその販売の約半分を占めますが、中近東、アフリカ、中南米でも好調な販売状況であり、それぞれの地域のコア車種を構成していいます。2011年は東日本大震災やタイの洪水による供給不足の中、比較的早期に生産能力を回復させ、販売数が大きく伸長しました。その結果、プロジェクト立ち上げ直後の2005年における46万台から、2011年には77万台へと増加し、2012年以降も市場拡大が予測され、販売増加を見込んでいます。

ハイラックス
プライベートからビジネスまで、リーズナブルから高級車まで、幅広く開発・生産。

フォーチュナー
高級感あるSUVとして中近東やインドのお客さまの支持を集めています。

イノーバ
インドやインドネシアの大家族、タクシー業会などで支持されています。

新興国での今後の取り組み ~(1)伸張する新興国市場に向けた新しい戦略~

アジアは第二の母国

トヨタの新興国での今後の取り組みにおける基本的な考えは、アジアを「第二の母国」と位置づけ、拠点化を推進していく方針です。具体的には、アジアをIMVに続きコンパクトカーの生産・供給拠点として強化し、徹底的な現地調達化を進め、原価競争力を確保、向上していきたいと考えています。

今後の取り組みの方向性

今後の取り組みの方向性

新コンパクトカー戦略

新興国の自動車市場は各国の経済発展にともない年々伸長しています。中でも「コンパクトカーの拡大」が顕著であることから、コンパクトカー商品群を重点的に強化する「新コンパクトカー戦略」を推進し、新興国のお客さまニーズに対応していきます。

具体的には、2010年12月にインドで発売した「エティオス」を皮切りに、計8モデルの新興国専用コンパクトカーを投入します。新興国で生産し、年間100万台を超える台数を100カ国以上のお客さまにお届けする計画で、すでに2012年4月にはトヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)を通じて、小型車「エティオス」とハッチバック車「エティオス・リーバ」の南アフリカ共和国への輸出を開始しています。


2012年4月 インド・エティオス南アフリカ向け輸出開始式典

現地化への取り組み

トヨタは、域内展開、域外輸出のさらなる推進のためには、徹底的な現地調達化による原価競争力の確保が必要だと考えており、このため現地の研究開発拠点の機能を最大限活用し、出来るだけ早い段階での現地や域内での調達率100%を目指しています。

現地調達化率(IMVの例)

現地調達化率(IMVの例)

新興国での今後の取り組み ~(2)各市場での今後の取り組み~

ロシア市場

ロシアは欧州のみならず、世界の市場で最も成長が期待される市場の一つであると考えています。トヨタとしてはロシアのお客さまから高い評価を頂いている「カムリ」「ランドクルーザー プラド」をコアモデルとして育てながら、着実に現地化を進めています。トヨタモーター マニュファクチャリング ロシア(TMMR)での「カムリ」の生産増や、極東地域ウラジオストクでの本年末からの「ランドクルーザー プラド」の組立生産を通じて、ロシアの自動車産業及び経済の発展に寄与したいと考えています。

ロシア市場

アフリカ市場

アフリカ市場は着実な経済成長や人口増加を背景に、今後も成長を続ける市場であると考えています。トヨタは南アフリカ共和国を核に、アフリカ各国の特性に合わせて車両供給体制の構築を検討しています。地域に密着した販売施策を通じ、新市場の開拓と浸透を目指します。また、エジプトにおいては、2012年4月より、IMVモデルのひとつである「フォーチュナー」の組立委託生産を始めています。

アフリカ市場

インド市場

インドの自動車市場は経済成長に伴い、今後も拡大していくと見込まれます。トヨタは今後も「エティオス」のような地域で拡大するお客さまのニーズにお応えする商品を展開します。また、TKMは2007年にモノづくりの専門技術教育を目的に、「トヨタ工業技術学校(トヨタ・テクニカル・トレーニング・インスティテュート)」を設立し、人材育成と雇用創出によるインド経済の発展に寄与できるよう取り組んでいます。

インド市場

アジア市場

中国・インド・パキスタンを除く「アジア総市場」については、2012年はタイ洪水の影響から回復し、2011年を上回る需要増となることを見込んでいます。中長期的にも、経済発展に伴い、市場成長が予想されることから、アジア・オセアニアにおいて、現在の年間販売台数160~170万台から、将来的には200万台以上を目指します。その目標の実現に向けて、タイ、インドネシアなどにおいて生産施設の増強に取り組みます。

アジア市場

アジア市場

ブラジル市場

ブラジルではサンパウロ州ソロカバ市に新工場を立ち上げ、2012年後半から新開発小型車エティオスの生産・販売を開始する計画です。将来的により幅広いお客さまのニーズに応える商品を提供し、現地生産など、地域に根ざした企業活動を通じてブラジル市場を着実に拡大・深耕していきます。

ブラジル市場