WHO(世界保健機構)の調査結果によると、交通事故による全世界の死亡者数は124万人で、死亡原因の8位となっています。日米欧では少しずつ減少傾向にありますが、特に新興国ではクルマの増加に教育や交通環境が対応できず増加傾向にあります。世界規模では確実に増え続け、このまま対策を講じないと2030年には死亡原因の5位になると言われています。
トヨタの究極の願いである「交通死傷者ゼロ」を達成するためには、安全なクルマの開発が必要なことはもちろんですが、並行して、ドライバーや歩行者という「人」に対する啓発活動、「交通環境」整備への働きかけも欠かせません。トヨタでは安全なモビリティ社会の実現に向け、人・クルマ・交通環境の「三位一体の取り組み」を推進するとともに、事故に学び、商品開発に活かす「実安全の取り組み」が重要と考えています。また、交通死傷者ゼロに向けた技術の基本的な考え方として「統合安全コンセプト」を掲げ、技術開発を推進しています。
クルマに搭載される様々な安全システムを個別に考えるのではなく、「連携を図り安全性を高めていく」。そして、従来は事故の前後にフォーカスされていた対応領域を、駐車状態から通常運転、衝突直前、衝突後、事故の際の救助まで、「様々な運転ステージで最適なドライバー支援を追求する」。これが「統合安全コンセプト」の考え方です。
日本における事故の要因をみると、追突事故が全体の約3割を占め、次いで出会い頭など、交差点での事故が多く、近年は高齢者などによる駐車場でのペダルの踏み間違い事故も社会的な課題です。トヨタはすべての人に安全なクルマを目指して、万一の事故でも被害を最小限にとどめる安全技術の開発を進めています。
追突事故を減らすためには、事前に衝突を予知し、身構えることによって、被害を軽減したり事故の回避に貢献できる技術が必要です。システム・技術を開発する前には、まず追突事故の実態を知る必要があります。トヨタでは、「実安全の追求」に基づき、ドライビングシミュレーターを使い追突時のドライバーの運転行動を検証しました。その結果、追突する前に警報があれば約9割の人がブレーキを踏めることが明らかになりました。こうした結果を基に、今回、ブレーキを踏める人と踏めなかった人、双方へ配慮したシステムを開発しました。これは、「プリクラッシュセーフティシステム」に機能改良を施し、強力なブレーキアシストと自動ブレーキにより追突の回避を支援する新システムです。
約9割の人がブレーキを踏めたという実験結果から、実安全を追求。運転の主体はあくまでも「人」の観点から、警報を聞いてブレーキを踏めた場合、衝突を避け止まろうとする回避行動を強力にサポートするブレーキアシストに加え、残りのブレーキを踏めなかったケースでも、自動ブレーキにより回避支援するシステムとしています。先行車と追突の危険がある場合、新開発のミリ波レーダーが素早く正確に検知、ブザーとディスプレイ表示により警報を発してブレーキ操作を促します。ドライバーがブレーキを踏むと、その踏み込む力を強力にアシスト、最大60km/hの減速を可能としています。また、ブレーキが踏めない場合は自動ブレーキが作動、最大30km/hの自動減速で追突を回避支援します。
60km/hの減速により、90%以上の追突事故に効果があると考えています。これらのドライバーを支援する安全技術に加え、万一の際の歩行者事故に対応した歩行者衝突回避型プリクラッシュセーフティシステムの技術開発にも取り組んでいます。
ペダルの踏み間違いによる事故は、年間7,000件程度(日本)発生しており、ほかの操作ミスに比べて死亡率が高いという特徴があります。高齢者、パニック、乗り慣れないクルマを要因とするケースが多く、踏み間違い事故は、起こってしまってからドライバー自らがミスを挽回することが難しく、クルマ側でのサポートが重要です。トヨタでは、操作ミスにより急発進した場合の衝突を緩和、被害の軽減に寄与するシステムを開発しています。
万一のアクセルの踏み間違いや踏み過ぎなどによる障害物との衝突を緩和、被害を軽減するシステムです。駐車場などでの発進時、壁などの障害物があれば、ブザーと表示で注意を促し、状況に応じてエンジンやモーターの出力を抑制。さらに、自動的にブレーキがかかり減速します。
アクセルとシフト誤操作による急発進を抑制するシステムです。発進時の誤操作では、表示によりドライバーに注意を促し、同時に、エンジンやモーター出力を制御、急発進・急加速を抑制します。


追突事故に続き、件数が多い交通事故の要因は、交差点における出会い頭や右折・左折時の事故です。見通しの悪い交差点での出会い頭事故は、クルマに搭載された安全装備だけでは防ぐことが難しく、ITS技術の活用による事故低減が期待されています。
インフラ協調型安全運転支援システムは、クルマ単独では入手できない見通し外の情報や、信号等の情報を、道路インフラとクルマ、あるいはクルマとクルマ、クルマと歩行者が直接通信し、連続的に情報交換することで、ドライバーの安全運転を支援し、事故低減につなげるシステムです。たとえば、見通しが悪く、対向車が見えない交差点でもクルマとクルマが直接通信し合うことで、お互いの情報を入手。対向車の接近情報をドライバーに通知し注意喚起することで、安全運転を支援します。トヨタは、技術開発を進めると同時に、通信方式の標準化等の基盤整備や公道実証実験など、官民一体となって実用化に向けた取り組みを進めています。
道路状況が様々に変化する公道では困難な、ITSの試験・評価を繰り返し実施するため、2012年4月に「ITS実験場」を新設しました。東富士研究所内の敷地3.5ha(東京ドームの約3倍)に国内の市街地交差点を忠実に再現し、光ビーコン、760MHz通信装置、車両/歩行者検知センサーを設置。ITS実験場の本格運用により、市街地や交差 点でのクルマ・歩行者との事故防止を目指した安全運転支援システムの開発を一層進めます。
東富士研究所内にあるITS実験場
トヨタ交通安全センター モビリタでは、一般および企業・団体向けに「トヨタ ドライバーコミュニケーション」という安全運転プログラムを開催。安全装置の使い方や限界を超えたクルマの挙動を安全に体験できます。また、各地の自治体や企業、販売店とともに「体験型交通安全イベント」を開催しています。「飲酒擬似歩行体験」や「反射材効果体験」など、安全への意識を高める取り組みを行っています。
トヨタドライバーコミュニケーション
累計受講者数 6万3,770人
サッカーグラウンド14個分もの広大なフラットコースで、危険を安全に体験できるモビリタ(富士スピードウェイ内)