クルマへの期待は常に変化しています。急成長する新興国での所有する喜び、運転する楽しさへの期待、環境性能への期待。急激に変化する時代においては、目に見えるものだけでなく、次の変化を予測する力が必要になります。時代を変えるのは、お客様です。お客様にしっかり目を向け、声を聞き続けることで、変化への対応が可能になり、持続的成長が可能になります。お客様に喜んでいただける「いいクルマ」をつくり続けることが、未来を開いていく唯一の道。トヨタはそれを信念とし、お客様によって異なるニーズを満たし、満足していただける「いいクルマ」づくりに取り組んでいきます。またそうしたことを実現していくためにも「日本のモノづくり」の維持・強化に努めていきます。

研究・開発ではR&D体制の強化として、チーフエンジニア(CE*)の権限を強化。CEの位置づけを「お客様に一番近い開発責任者」として明確化し、意思決定を迅速化します。さらにCEが主役となるプロセスを導入することでデザイン体制の強化を図りました。地域ニーズに沿った「いいクルマづくり」のために各地域のR&D拠点の強化、地域統括部長(北米・中国/日本・欧州/新興国)を配置、各地域の営業部門や研究開発拠点と連携して進めます。
今後の「もっといいクルマ」をつくるための取り組み、大幅な商品力向上と原価低減を同時に高いレベルで達成するための新しいクルマづくりの方針、それが「TNGA」です。「走る、曲がる、止まる」といった基本性能を向上させ、その上で賢い共有化を進め、地域のお客様の嗜好を反映していきます。新型プラットフォームは、設計とデザインが協力してこれまでにないエモーショナルなデザインとすぐれたハンドリングのクルマの開発を可能とします。3種類のFF系プラットフォーム(全体の約5割をカバー)から取り組む方針 です。併せて、複数車種の同時企画・開発を行う「グルーピング開発」を導入し、車種間の基本部品・ユニットの共有化率を高め、サプライヤーの皆様と協力して原価低減を進めます。これにより、開発工数やコストをお客様の嗜好や地域の特性にかかわる部分の開発に振り分けて差別化を図り、さらなる商品力の向上を実現していきます。

生産技術における「もっといいクルマ」は、「いいクルマづくり」と「競争力のあるモノづくり」が課題です。
自動車産業を取り巻く市場環境は多様で、新興国では市場拡大により地域のニーズに合った良品廉価なクルマが求められる一方、先進国では限られた市場の中で、環境車を軸にした熾烈な競争が繰り広げられています。また、現在の社会環境は超円高や電力危機をはじめとして、モノづくりには非常に厳しい状況です。しかし、トヨタには過去、オイルショックや排ガス規制、バブル崩壊など、大きな環境変化を技術革新によって乗り越えてきたモノづくりの実績があります。
今後の革新テーマは、グローバル競争を勝ち抜ける、お客様によいものをより廉価に提供できる企業になること。トヨタは、厳しい社会環境は大きなチャンスでもあるととらえ、日本発のモノづくり革新による画期的な原価低減を目指します。そのためには、モノづくりの知恵と熟練の技術を持つ「現場力」、新工法・材料開発・製品開発と一体の生産技術開発による「技術革新力」、東海・九州・東北の3極体制強化など「生産体制再構築」が必要です。
その方向性は(1)1個ずつつくる(2)売れるスピードでつくる(3)少ない生産規模で設備を構えること。これらはトヨタ生産方式の原理原則であり、その具現化にほかなりません。

よいものを少量でも廉価につくるためには、設備の正味率*と汎用性を上げ、段階投資(最初は少なく、必要に応じて増額)を可能にし、設備の寄せ止めなどをしやすくします。その結果、生産の現地化がしやすくなると考えています。技術革新実現のキーワードは壊れにくく簡単に直せる設備や設備償却を低減する「シンプル・スリム」、小規模汎用ラインや簡易車種切り替えによる「変種・変量」、工程削減と匠の技による「ネットシェイプ」、小型化・高性能化・高意匠化・廉価の「高付加価値」の4点です。こうした革新技術を駆使、生産の量・種類変動にスピーディに対応して機会損失を低減、投資・コスト低減も実現して、経営体質の強化を図っていきます。
また、トヨタはこれらの革新技術を、日本にこだわって、かつスピード感を持って開発・熟成し、スピーディにグローバル展開していきます。生産の基本は市場のあるところでつくること。したがって生産の現地化は進めます。しかし、日本の強い生産現場、高い生産技術、付加価値の高い商品づくり、そして強い販売力は、私たちの競争力の源泉です。その競争力を維持・増進するためにも、日本の300万台の生産体制を維持し有効に使っていく。それがトヨタの考えです。

「環境車は普及してこそ社会に貢献」という考えに基づき、最も需要の多いコンパクトカー市場に向けてハイブリッド車「アクア」を発売しました。新車発表会では、生産拠点となる岩手工場と生中継が行われ、発表前に6万台もの予約をいただき活気を取り戻した東北工場からライン担当者が次々と登場し、アクアに込めた熱い想いを語りました。アクアが東北の復興の一助になることを信じ、生産を始めた岩手工場。東北を東海・九州に次ぐ第3の生産拠点とする計画が、いま始まりました。

トヨタは、1997年に世界に先駆け量産ハイブリッド車プリウスを市場に出して以来、全世界で400万台以上のハイブリッド車を販売し、たくさんのお客様にご支持をいただいています。この間、ミニバンやセダン、SUV、ワゴンなど搭載車種を拡大し、ハイブリッド市場の裾野拡大を進めてきました。さらに、近年のお客様の環境意識の高まりと、より低燃費なクルマへのニーズにお応えするため、お求めやすいコンパクト車「アクア」を開発しました。
アクアのコンセプトは「2020年を見据えた、コンパクトカーの革命を起こすようなハイブリッド車の提案」であり、単にプリウスを小型化したものではありません。よりコンパクトで軽く、使いやすく楽しいクルマ、そして手の届く価格で、燃費性能No.1を誇るハイブリッド車、それがアクアです。ネーミングは、より多くの人に楽しんでもらおうということを意識し、水のようにクリーンで自由なイメージを持つという意味で、ラテン語の水を意味する『アクア』と名づけました。
ハイブリッドシステムはプリウスと同じTHSⅡですが、小型・軽量化のため、小型のモーターを採用するなど、ほとんどの部品を新設計しています。
また、ハイブリッド車の性能をドライバーの方に引き出していただくため、ドライブサポートにも工夫を凝らしました。「エコジャッジ」と「エコウォレット」がそれで、走行シーン別にエコ運転レベルを判定するほか、燃費によってセーブしたガソリンの価格を表示し、エコドライブを楽しめます。


アクア生産ライン
2012年7月、アクアを生産する岩手工場を有する関東自動車工業(株)、セントラル自動車(株)、トヨタ自動車東北(株)の3社を統合し、新たに「トヨタ自動車東日本株式会社」として発足しました。
統合新会社は、3社の革新技術力などを生かし、グローバルなコンパクト車づくりに参画します。
岩手工場をはじめとする東北の生産現場には、地域のサポートや、地域に根づいた優秀な人材、多彩な基盤技術など、東北の強みが活かされており、コンパクト車づくりの実力強化が図れます。
具体的には、ユニットから車両までリーンでフレキシブルな生産現場や、開発から生産技術、生産が一体となったクルマづくりの改善・改革を実現していくことで、お客様のニーズにきめ細かく応えた世界No.1の魅力あるコンパクト車を提供します。そうすることで、日本のモノづくりを守っていけるとも考えています。
なお、2012年5月に発売したトヨタの主力小型車種カローラも、宮城工場で製造され、東北での現地調達率は40%と東北の自動車産業集積に弾みをつけています。

初のハイブリッド車生産となるアクアは、岩手県で輝く東北復興の星です。検査項目をお客様目線に立った「お客様評価」に切り替え、各工程との連携を密にし、「チーム岩手」として早期に高品質のクルマを立ち上げることができました。品質世界No.1のアクアが世界中を埋め尽くすことを目標に、さらなる高品質を目指します。

トヨタ自動車東日本(株)
岩手工場 品質管理部
高橋 信昭