スペシャルインタビュー 森に息吹きを

里山を守る「トヨタの森」

トヨタの森 概要

里山の活性化を図るため、1996年より、里山整備・保全活動を豊田市内の社有林(40ha)で行っています。活性化の指標として「樹木の成長量」と「種の多様性」を掲げ、効果把握のため「エコモニタリング」を10年間実施しました。再生した里山は、自然ふれあい体験学習など環境教育・学習の場として提供し、多くの学童が利用しています。あわせて、1998年から7年間にわたり、日本環境教育フォーラムとの共催で里山保全の専門人材育成のための環境教育プログラム「エコのもりセミナー」を開催し、約3,000名の方々に参加いただきました。

池上 博身

社会貢献推進部 企画室
環境・社会活動グループ
プロフェッショナル・パートナー
(当時)

日本の里山の抱える問題

1960年代半ば以降、日本の国土の約7割を占める森では、貿易自由化により安価な外材が入り始めたことなどによって林業の衰退がはじまり、同時に里山や中山間地といった地域では都市への人口流出、過疎化が進み、高齢化が問題となってきました。

一方、トヨタでは、将来の環境問題を見越した企業としての取り組みを進めるために、1990年に技術部門の中に「バイオラボ」を開設し、「環境緑化」というキーワードで、植物を使って環境改善を目指すための基礎研究に着手しました。社会的には大気汚染など環境破壊が社会問題視されはじめたころで、植物の力を借りて排気ガスの浄化やCO2の吸収などの可能性を見出すための様々な実験が行われました。

技術部門が主体となって進めていた「環境緑化」プロジェクトを、一般の方も参加可能なプログラムへと進化させたのが里山活性化を狙いとする「トヨタの森」プロジェクトです。

里山の活性化に重要なことは?

トヨタの森プロジェクトは、1997年10月に豊田市内にある社有林40ha(ドーム球場約10個分の広さ)の雑木林を使い、里山活性化のための実験フィールドというキャッチフレーズで着手しました。
最初に行ったことは、光が入らず成長が芳しくない雑木林に手を入れる。ひと言で言うと散髪をするようなイメージですが、雑木林の木を半分以上伐って、もう少し若返らせる作業を行いました。それにより、改めて木々が成長し始めて、多くのCO2を吸収することが期待できました。これが里山整備・保全のはじまりです。

そして、整備・保全活動を効果的に進めていくために環境教育および環境を調査すること、エコモニタリングに取り組みました。
ここでの環境教育とは、里山の整備・保全に関わる専門的な人材を育成していくことで、その中心的存在となるのが里山インタープリター(里山案内人)と呼ばれる人材の育成です。エコモニタリングとは、森に手を入れることによってどんな風に元気になったか、あるいはそこで生きている生き物の多様性がどれだけ回復してきたのか、見た目だけでなく、数値として科学的に解明していくことです。

落葉等リターの回収作業

例えば、手を入れた所、そこそこ手を入れた所、まったく手を入れてない所や肥料をやった所、やっていない所の違いがどう変化するのかモニタリングし、1998年から10年間のさまざまなモニタリングの結果をまとめました。このデータはインターネットでも公開しています。

この2つを同時に立ち上げたことが、その後、10年以上活動を継続して続けられた秘訣だと思っています。特に環境教育では、周辺住民や市民団体と協働した点がよかったと思います。

エコモニタリングは学習プログラムにも利用

環境教育については社団法人日本環境教育フォーラムの協力を得て一般の方を対象にした「エコのもりセミナー」を発足させました。トヨタの森での1998年から2004年の7年間の活動でおよそ3,000人の方が参加されました。また、小学校の環境学習を対象にしたプログラムでは、エコモニタリングで得た結果を蓄積し、データ化してインタープリターのノウハウ、プログラム構築に大いに活用されてきました。

エコのもりセミナーでのワークショップ活動

環境学習はその後、「自然ふれあい体験学習」という名前で呼ぶようになりましたが、年々参加者が増えており、現在では、年間約180回の開催で、7,000人以上の子供たちが利用するほどになりました。今ではトヨタの森のメインの活動になっています。そういう意味でもエコモニタリングで得られた結果やデータの中からインタープリターがなにを伝えるか大変重要だと思います。また、今後は市民活動を中心に蓄積したデータ、成果を活用していく予定です。

自然ふれあい体験学習の参加者の推移

自然ふれあい体験学習の様子

トヨタの森で得られた成果は?

トヨタの森では、人材育成とエコモニタリングの両面からプロジェクトを進めてきたわけですが、蓄積したデータ、ノウハウは様々な場面で活かされています。例えば、三重県で取り組んでいる人工林の再生プロジェクトでは、一般の方に見てもらうための工夫であったり、岐阜県の白川郷自然學校とはインタープリター(里山案内人)同士の相互交流を行い自然へのふれあい方などを学んでいます。

また、トヨタの森は、地域の森林整備ボランティア活動の場としても活用されています。1996年11月から「エコの森クラブ」と称して、社員やOB、地域住民が一緒になって月一回の除伐・整備活動を続けています。

エコの森クラブでの除伐整備

個人的には、子供たちの笑顔を日常的に見られることがやっててよかったと実感する時です。そして、私自身もこの仕事に関わる以前は、生き物への優しさだったり、自然を大切にする気持ちがほとんどありませんでしたが、現在では環境へのマインドが自分そのものだと言っていいくらいだと思います。同時に、多くの専門的な知識が身につき自身の成長も感じます。自分の生きざまに大いに影響を与えてくれたのがトヨタの森です

整備林

ササユリ

湿地エリア

多様な生きものが見られる吉田池

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