スペシャルインタビュー 森に息吹きを

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砂漠化地域を森に変える「中国砂漠化防止プロジェクト」

中国植林プロジェクト 概要

2001年より10年間、中国河北省豊寧満族自治県において、中国科学院、河北省林業局/豊寧県林業局、NPO地球緑化センター、トヨタ自動車の4者で砂漠化防止のための植林プロジェクト日中「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠点」共同事業に取り組んできました。

プロジェクトは3段階に分けて行われ、第1期(2001年4月~2004年3月)は主に植林を、第2期 (2004年4月~2007年3月)では、砂漠化の原因であった家畜(山羊)の過放牧対策として、乳牛飼育を導入、そして第3期(2007年4月~2011年3月)では、緑化技術者の育成、緑化技術の情報発信等を行いました。

プロジェクト開始以来、10年間で3,000haの土地に387万本の苗木を植林するとともに、現地で活動が持続する植林モデルを構築しました。

國友 淳子

バイオ・緑化事業部 緑化技術開発室
森林保全グループ
主任・農学博士(当時)

砂漠化地域が抱える問題

石井 義朗

バイオ・緑化事業部 緑化技術開発室
森林保全グループ
農学博士

中国の北京にほど近い地域では、山羊などの過放牧が原因で草原や森林が砂漠化している問題が発生していました。トヨタが中国で本格的に事業活動を開始した当時(2000年頃)、日本でも話題になりました、黄砂、つまり砂による被害が広がっていました。

社会貢献活動のひとつとして、砂漠化が進行している地域に緑を回復させ、地域の環境を改善するため、植林活動を始めました。

最初に現地を訪れた時、砂で埋まった家を目の当たりにし、地域住民の方の苦しみを肌で感じ、このプロジェクトを絶対に成功させようと強く思ったことを覚えています。

放牧の様子

プロジェクト開始前のシャオバーズ

道路にまで砂漠が迫る

砂に埋もれる家

植林プロジェクトを成功させるために

まず、最初は、木を植えることに重点を置きました。植林を始めた当時は、林業局が推奨する樹種を植えていましたが、種類が少なくまた、生存率も低かったりしたため、適切な樹種の選定や種類を増やすようにお願いしたり、第2期からは果樹や薬草などの売れる樹種、いわゆる経済樹種も植えるよう改善していきました。

苗を植えてから実がなるまでに5~6年かかる山杏という樹を初年度に植えたのですが、根付いて、育つだろうとは思っていましたが、2005年に実際に実がなるとほっとした気持ちと同時に嬉しさがこみ上げてきました

山杏の実

プロジェクトを進め、地域住民と話をするようになると、住民の多くは放牧や山杏の収穫など、自然に依存した生活をしていることがわかってきました。このまま単に木を植えるだけではトヨタの支援が終了した時に放牧に依存した生活に戻り、再び砂漠化してしまうのではないかという懸念がわいてきました。

そこで2004年から放牧しなくても飼うことができる家畜として乳牛を導入しました。乳牛は、牛乳から継続的に収入を得られるメリットがありましたが、高価なためすぐに移行できない状況でした。そのため乳牛を購入する資金を無利子で貸し、さらに餌となる草は人間が刈り取り、管理することで放牧を抑制していきました。

こうして貸したお金は2~3年後には回収でき、また別の住民の方へ同じように貸していました。住民の方にも大変喜ばれましたし、プロジェクトとしても、一定の原資だけで運営を維持できるメリットがありました。

活動を継続させ、住民の生活スタイルも改善

将来にわたり植林ならびに住民を経済的に支援する仕組みとして、経済樹種からの売上げの30%を緑化基金として林業局がプール、管理するようにしました。これを資金に自分たちの力で植林活動を継続できるようにしたのです。

地域住民の収入はプロジェクト立ち上げ当初に比べ、1.5倍程度増えているようです。

プロジェクトでは植林による環境変化をモニタリングしています。植林後に砂の移動が止まったことは確認されていますが、住民の方からも「家の回りの砂かきをしなくてもよくなった。ありがとう。」と声をかけていただきます。そんな時、このプロジェクトをやって本当によかったと感じます。

プロジェクトの成功の鍵を握る人材育成

通常こうしたプロジェクトは、企業からの資金的な支援だけだと思いますが、トヨタでは資金だけでなく、専任の人材を割り振り、さらにはプロジェクトの中身にまで入り込んで10年間継続させてきました。現地出張も40回以上になりました。現地現物をとことん追求していく姿勢は、社会貢献活動でも必要だと思います。

最初の2年くらいは言ったことが伝わらないなど、なんで?と思うことが多々ありました。例えば計画をスケジュール通りに推進させるためには、PDCA(Plan-Do-Check-Action)の徹底を行いましたが、相手の林業局の方も最初はビックリしてました(笑)。計画を立て、ちゃんと実行して、チェックして、対策を立て、やってくださいねとお願いしても最初は理解してもらえなかったし、次回までにここまで進めておく手はずで日本に帰国、そして再び現地に訪れても・・・進んでいなかったり、計画が知らない間に変更されていたりと、面食らう場面もありました。・・・とはいえ、年々改善されてきて、林業局の方の理解も深まっており、2008年に建設した人材育成拠点にて、後継者の育成も進んでいます。

現地滞在中は、白酒(パイチュウ)という現地の強いお酒を飲み交わしました。本当は飲まされていたのですが。酒の席で本音で話すことが、信頼関係の構築に一役買うというのは、世界共通ですね。

人材育成拠点「21世紀中国首都圏環境緑化交流センター」

現地パートナーと白酒を飲み交わす様子

今後も継続する植林活動

トヨタとしての活動は2011年3月に終了しましたが、8月からは現地法人のTMCI(Toyota Motor(China) Investment Co.,Ltd.)に活動は引き継がれました。

これは、10年間の活動が評価された結果だと思います。砂漠化した地域が森林へと再生され、地域住民の生活が向上できたなど、それぞれに成果が出たプロジェクトだと思います。

2006年に、企業フィランソロピー大賞の特別賞をいただきました。この賞をいただいたことで社内での見方もかわってきたと思いますし、私たちのモチベーションも上がってよかったと思います。2006年からは、中国での社員ボランティア活動に参加する人をトヨタ社内でも募って実際に植林活動を現地で行ってきました。このボランティアはリピーターが多いのが特徴で、さらに地域住民の方や現地事業体の方との交流の場になっていることが良いと思います。

社員ボランティア植林の様子

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