スペシャルインタビュー 森に息吹きを

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熱帯林を取り戻す「フィリピン熱帯林再生プロジェクト」

フィリピン植林プロジェクト 概要

中国で成果を得た「持続可能な植林モデル」を新たな場で展開するため、2007年からフィリピン・ルソン島北部のカガヤン州ペニャブランカにおいてフィリピン環境資源省、ペニャブランカ町、NGOコンサベーション・インターナショナルと共同で1,772haの植林活動を3年間実施しました。2009年には国際的な第三者認証「CCB(The Climate, Community and Biodiversity Project Design Standards)基準」のゴールド認証を取得。2010年8月からは活動の現地定着化のため、さらに3年間の活動を行っています。

熱帯林が抱える問題

フィリピンではラワン材等の商業伐採がよく知られていますが、現在はほとんど行われていません。しかしプロジェクトサイトでは森林荒廃が進んでいると聞き、何が原因になっているのか、住民のお宅に伺いました。その際に、軒下で地べたに焚き木を置いてご飯を炊いている様子や、庭で木炭を作る様子を見せてもらい、住民の煮炊き用の焚き木採取など周辺の森に頼る生活が森林荒廃の原因とわかりました。

生活をする上で煮炊きは行うわけですが、周辺の森からの木の採取を最小限にしなければ、森林は荒廃しつづけてしまいます。パートナーとどのような手が打てるかを話し合って、薪の材料専用に成長の早い樹種を植える焚き木林を作ることにしました。また、焚き木の他の燃料源が何かないかと探していたところ、現地行政が籾殻やとうもろこしの芯を燃料にする取り組みをしていたので、これだ、となって行政やコンロ製造業者にヒアリングをして、籾殻専用のコンロ導入を進めました。それと同時に、山から木を集めて売るよりも安定した収入源を提供することも考えました。住民からも収入を増やして子供の教育に充てたい、という声があって、一番リクエストの多かったマンゴーを植栽することになりました。

住民による薪炭の採取

焚き木用の樹木の育成

籾殻を燃料としたコンロ

甲斐 はるか

バイオ・緑化事業部 緑化技術開発室
森林保全グループ
主任

石井 義朗

バイオ・緑化事業部 緑化技術開発室
森林保全グループ
農学博士

中国での植林活動の経験を活かして

中国での砂漠化防止プロジェクトから多くのことを学び、そのノウハウがあるので、フィリピンでは6年間でやりきることを目指しています。プロジェクト開始前から持続可能なモデルの図を使いながらパートナーとどんな植林にしたいか、最終的に何を達成したいかを話し合いました。さらに、森林荒廃の対策となる焚き木林は住民の焚き木使用量からどれくらいの面積が必要かを計算したり、住民の焚き木収入12,000ペソをマンゴー栽培で確保するには、いくらで売れないといけないのか、何本植えないといけないかを具体的に決めていきました。マンゴーの売上の一部により植林地を維持拡大すること(植林基金)についても住民集会で意見を聞いてみました。ちょうど現地にマイクロファイナンス等の似たような取り組み事例があって、やってみてもいいんじゃないかと受け入れてもらえました。なにか問題が発生したときは、いつも大きな目標に立ち返って再確認することを意識しています。

持続可能な植林のモデル

住民との話合い(右側奥2番目がトヨタ担当者)

しかし、このプロジェクトは中国と大きく異なる点があります。主体が行政かNGOかということです。中国の場合は行政が主体であり、トヨタの支援が終了した後でも、現地主導で回していくことができますが、フィリピンの場合はNGO主体であり、トヨタ同様にいつか支援が終了する日が来るわけで、プロジェクト期間中に活動をいかに現地に定着させるかが現在の大きな課題です。

プロジェクトの現体制

プロジェクトを軌道に乗せるために

プロジェクトの目標の第一段階である木を植えることはほぼ完了しています。そして森林荒廃対策もコンロの配布や焚き木林を作ることでクリアしました。またマンゴーは最初の3年で植え終わり、住民が管理している状態です。来年からはいよいよ本格的な収穫がはじまります。同時に販売も来年からはじまるわけです。どういうルートで販売すると、安定した価格で、安定した量を買ってもらえるかを現地と知恵を出し合い検討しています。ここは活動が継続するか重要なところで、販売ルートを確立し、残すことで地域の潤いが維持できる仕組みができるわけです。

また、植林基金の運営はこれからになりますが、住民から募った代表で構成される農協のような「協同組合」を発足させました。普段は主婦をしている等、一般の住民の方々ですので、いろいろ大変とは思います。しかし、熱い想いを我々が持ち、住民の方の意見を尊重しつつ、目標や考え方を共有することで一歩一歩進むものと考えています。

協同組合のメンバー

収穫が楽しみになってきました

マンゴーは植えてから収穫までに約5年かかります。その為、短期的に収入を得るために、ナスやオクラなどの野菜の苗を配布してきました。マンゴーは、とうもろこし畑の空いたところに細々と植え始めたわけですが、約400軒ある農家に平均100本、地域全体で4万本を栽培しています。住民の方はすごく大事に育てていて、順調に育っています。栽培状況を確認するため、我々が農家を訪問すると、皆さんすごく良い笑顔を向けてくれます(笑)。本格的な収穫は来年からですが、今年も一部の木では大きな実がついていました。来年が楽しみです。

実をつけたマンゴーと笑顔の住民

フィリピンならではの取り組み

フィリピンでは新たに、苗の生存率を高めるための取り組みを行っています。NGOが区画を決め、担当の住民を選び、苗木の植栽、管理を主体的に行ってもらっていますが、住民に愛着を持って管理してもらうため、管理費は生存率に応じて住民に支払う方法を採用しました。

しかし、気象環境が想定以上に厳しく、年間の半分以上が乾季になる年もあったりして、行政、NGOと協議をして乾燥対策を検討してきました。ここで役に立ったのが中国植林で培った乾燥地での植林ノウハウです。トヨタから対策を提案し、関係者で議論し、結論を出すという形で進めて行きましたが、皆で議論し、気が付けば夜遅くということがよくありました。こうしたパートナーの熱い想いに触れる度に、皆でプロジェクトを絶対成功させようと決意を新たにしています。

苗木の栽培

現地での議論の様子(左端がトヨタ担当者)

フィリピン植林のモデルケースである「中国砂漠化防止プロジェクト」はこちら

砂漠化地域を森に変える「中国砂漠化防止プロジェクト」