トヨタ自動車(TMC)
アカウミガメの産卵地として知られる愛知県渥美半島の表浜海岸は、天竜川供給土砂の減少などによって砂浜の侵食が進み、生態系への影響が懸念されています。そこで、2011年4月より、表浜海岸に近い田原工場と本社地区の従業員と家族が集まり、NPO法人「表浜ネットワーク」「あかばね塾」と協働し、砂浜を保全する役割を果たす堆砂垣(たいさがき)を製作・設置するとともに、海岸清掃を行い、産卵に訪れるアカウミガメを迎える準備活動を開始しました。
日本ウミガメ協議会によると、北太平洋域に生息するアカウミガメは日本列島の太平洋岸でしか産卵しないため、日本で保護しないと絶滅してしまいます。表浜海岸を含む遠州灘沿岸は、本州では最大のアカウミガメの産卵地です。特に表浜海岸は、海と長く伸びた砂浜、緑が豊かな丘陵が連なるなど自然が豊かで、産卵にとって良い条件がそろっています。
孵化した子ガメが大海原へ
現在、アカウミガメの産卵に欠かせない砂浜が全国で消失しつつありますが、ここ表浜でも同じメカニズムが働いています。即ち、天竜川の上流に建設されたダムにより海に流れ出る土砂が減ってしまい、砂浜の侵食が著しくなりました。
海からの砂の流れ
山からの土砂の流れ
風などの自然の力を利用して砂浜を保全する「養浜(ようひん)活動」として、表浜海岸では昔から日本の海岸で行われていた「堆砂垣」を製作します。メダケなどを用いて作られた堆砂垣は、季節風によって運ばれてきた砂を堆積させて、局所的に砂丘を作ります。さらに、堆砂垣で風が弱められることで砂が動きにくくなり、海浜植物が繁茂する状況を生みます。いったん海浜植物が拡がれば砂丘は安定し、アカウミガメにとって産卵に適した砂浜になっていきます。
トヨタ自動車は表浜海岸で養浜活動を展開しているNPO法人「表浜ネットワーク」「あかばね塾」の取り組みに賛同し、2011年4月から定期的に従業員と家族がボランティア活動として堆砂垣づくりを行っています。3回目の活動となった2013年3月には、表浜海岸に近い田原工場の従業員と家族を中心に約150名が参加。表浜ネットワークの田中雄二代表から、アカウミガメの生態や砂浜の環境保全などについてレクチャーを受けた後、メダケなどを材料に15基の堆砂垣を製作し、5月から産卵に訪れるアカウミガメを迎える準備をしました。
強い砂浜をつくるために
風で動く砂を止める
数ヶ月でこんなに砂がたまる
親子で参加の多いこの活動では、砂浜に落ちている漂流物や貝殻などを併せて探すビンゴゲーム形式で清掃活動を実施し、楽しみながら参加できる工夫をしています。
親子でゴミ拾い
清掃活動の様子
産卵時期にあわせて8月に観察会も実施しています。 以前設置した堆砂垣の効果を確認し、実際にアカウミガメの産卵場所や足跡を調査しました。またアカウミガメの放流なども行い、活動の意義や生物保護の大切さを実感できる場を提供しています。
アカウミガメとのふれあい
放流の様子
「工場のある田原市に全国的に有名なアカウミガメの産卵地があるので、地元への貢献としてこの活動にも取り組んでいくことにしました。若い方や普段なかなか参加できない家族連れの方にも楽しみながら参加できる、海をフィールドにした初めてのボランティア活動です。従業員が地元の社会課題について問題意識を持ってもらうきっかけになってほしいと思っています。」
(トヨタ自動車 田原工場 ボランティア支援窓口 伊藤 健人グループ長)
「今の海岸では色々な問題が差し迫っているなかで、少しでもアカウミガメのために健康な砂浜を取り戻すことが自分たちの目標です。堆砂垣というのは恒久的なものではないですが、自分たちの手で出来る範囲で砂浜に関わっていくことが大切で、そういった意味でも良い活動だと思っています。」
(NPO法人 表浜ネットワーク 田中 雄二代表)
「環境に対して普段意識をもっていないので、活動に参加したことで海の大切さを学べました。子どもの成長にもよい影響になるのではないかと思っています。」
(親子ボランティア)
「アカウミガメの産卵地保全活動」紹介映像
動画を見る
(3分57秒)
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