開発キックオフ
豊田社長の一言で動き出したこのプロジェクトはボートの大きさと初期のデザイン案を決める中で、「誰の設計」で「どこで作るか?」という検討から始まった。外観のスタイルデザインは、トヨタ社内のレクサスデザインチームが担当することになったのだが、そのデザインを設計し、カタチにする企業を選定する必要があったのだ。
企業選定に当たっては、トヨタマリンの中で幾度も熱い議論が交わされ、その結果、構造などの基本設計はイタリア、生産をアメリカのマーキー&カーバー社で行うことで合意した。そして、2015年7月にはついにキックオフミーティングが開催され、ミーティングでは当時の友山専務が直々に激励に訪れ、協力企業に対してトヨタがこのボートにかける本気度を伝えたのである。
開発を始める前には田原工場でレクサス製造現場の視察も行われ、「レクサス品質」に対する関係者による考え方の共有も図られた。そして、プロジェクトが始まって5ヶ月が経過した同年12月には1分の1モックアップモデルができあがり、スタイル確認と内装の詳細決めが始まった。この工程ではデザイナーと開発担当者達の間で、家具の形、色、柄などがレクサスのテイストを加えながら一つ一つ慎重に決まっていったのである。
- ボートショー会場で開催された「海ゼミ」では開発時の印象的な出来事や思い出を時折ユーモアを交えながら紹介していた。
- 連日大きな話題を集めていたボートということで、その開発ストーリーに興味を持った多くの来場者達がイベントエリアに集まっていた。
徹底した生産管理
2015年の夏から動き出したLEXUS Sport Yacht Conceptの開発は年が明けた1月には型の制作に着手、3月にはハルができあがり、本格的な組立が始まった。この工程では確実に「レクサス品質」を実現すべく、トヨタから3人のエンジニアがほぼアメリカに常駐状態となり生産を監督していた。こうした徹底的な生産管理体制により、LEXUS Sport Yacht Conceptは高いクオリティで生産されていくのであった。
搭載エンジンの開発
LEXUS Sport Yacht Conceptのエンジン開発は冒頭7月のキックオフミーティングよりも更に前、開発企画ができた時点から既に始まっていた。搭載されるエンジンにはレクサス最高峰の高回転、高出力を誇り、LC500、RC-Fなどにも搭載される2UR-GSEを選択。 このエンジンをボートに搭載するためマリナイズすべく、開発委託先の選定が行われ、マリナイズ部品の設計・製造はレースチームで有名なサードの関連会社シグマオートモーティブ、ECUとハーネスの設計はトヨタテクニカルディベロップメント、そして、制御適合チューニングは豊田自動織機に依頼することになった。
マリナイズする過程では様々な課題を乗り越え、クルマ用のエンジンの改造・強化に成功し、マリナイズされた専用エンジンが完成したのである。
- エンジンはLEXUS LC500やRC-Fなどに搭載されている2UR-GSEをボート仕様にマリナイズし、2基搭載している。