モビ・レポ!モビリタを体験したゲストが語る安全の話 レーシングドライバー  中嶋 一貴さん 中嶋 一貴さん
中嶋 一貴(なかじま かずき) プロフィール
職業:レーシングドライバー
生年月日:1985年1月11日
主な経歴:10歳よりカートに乗り始め、1996年にカートレースデビュー。2002年、フォーミュラトヨタ・レーシングスクールのスカラシップを獲得。以降、全日本F3選手権、SUPER GT、F3ユーロシリーズなどへ参戦後、2008年からの2年間、AT&TウィリアムズからF1世界選手権にフル参戦。2012年は、ル・マン24時間耐久レースのドライバーに決定している。
中嶋 一貴さん
1.ル・マンへの挑戦 2.F1で得たこと 3.クルマの楽しさ
photoF1に見る安全意識の高さ
2007年、イギリスのF1チーム、ウィリアムズのサードドライバーに就任。2008年からはレギュラードライバーとしてF1世界選手権にフル参戦した。モータースポーツの最高峰であるF1でのドライバー経験は、中嶋さんに多くの気づきをもたらしたようだ。
そのうちのひとつが、F1を主催するFIAやチーム、世界のトップドライバーたちの「安全」に対する意識の高さだ。予選前に行われるドライバーズミーティングでは、コースレイアウトや路面状態など、気になる点は細かいところまで運営側と話し合われる。特に1994年にイモラ・サーキットで起こったアイルトン・セナの事故以来、安全策がよりとられるようになった。
「F1はいますごく安全につくられていると感じます。ドライバーだからこそ気がつくコースの改善点や運営の仕方などはすぐフィードバックされるし、対処も早いです」
例えばマシンのレギュレーション。中嶋さんがテストドライバーとして参加していた2007年、小規模ではあるがクラッシュが起こりドライバーが頭部に怪我をした。その後すぐ、運転席わきのシャーシの高さが変更になったという。ドライバーの耳半分までだったものが、頭をほぼ覆うようになった。
また2009年には、あるマシンから落ちたバネが後ろを走行していたドライバーに当たる事故があった。バネの重量は800グラムほどだがスピードは時速200キロ。幸いヘルメットは頑丈でドライバーも命に別状はなかったが、ヘルメットに取り付けられているバイザーの強度が見直されたという。
「事故で死ぬ確率はゼロではないけれど、そうなったら仕方ない。…レースに参戦する中で、そんな意識がどこかかしらにあったと思います。でも、そんな考え方ではいけない。F1の徹底した安全への取り組みを目の当たりにし、目が覚めた思いでした」
モータースポーツはひとつ間違えば大事故につながりかねず、ドライバーには大けがのリスクが及ぶ。ドライバーは自分が乗るマシンを、組み立てメンテナンスするチームメイトを、サーキットとその運営すべてを信頼できて初めて、マシンに身を委ね高速でサーキットを駆け抜けることができるのだ。
photo「謙虚」だからこそ結果が出せる
もうひとつ、F1で中嶋さんが気づいたことがある。それは、各ドライバーがある意味「臆病」であることだった。尋常でないスピードで競うF1のドライバーは、スピードに慣れドライビングに対する恐怖など持ち合わせていない剛胆な人たちばかりだろうと思っていた。実際は意外に繊細な人が多くて驚いたという。
「コースやマシンセッティングに対して他の人が見落とすことでも、ドライバーだけが気がつくことも。トップドライバーであるほど、ドライビングに余裕が出て気になる範囲が広がってくるというのもあるでしょうね」
F1での経験を積むにつれ、中嶋さんも敏感になるべきだとという考えに変わっていった。特に命がかかっているドライバーは、細かいことに気づけることが大切なのだと。自分が「臆病」であれば、有事にそなえて準備もでき、余裕もできる。
「アスリートとしてはそういう姿勢の方が、いい結果につながるかな。もちろんレース中に臆病ではいけませんが、『謙虚』であることは必要だと思うんです」
「謙虚」とは、取材中に中嶋さんが数多く口にした言葉のひとつだ。その意味を大切に意識し始めたのは最近だという。
「2009年のシーズンをもってトヨタがF1を撤退し、2010年の1年間はマシンに乗らなかった。時間だけは恐ろしくあった中で、自分自身を振り返り、考えました。その中で『謙虚』という言葉と意味がフィーチャーされて心に刻まれたように思います」
レースにおける「謙虚」は、「自分の力を過信しない」という意味もあるだろう。しかし中嶋さんが言う謙虚とは、「ひとりでレースはできない。信頼できるチームがあるからサーキットを走れる、そのことに感謝する」と受け取れた。「一見謙虚に見えないアグレッシブなドライバーも、多かれ少なかれそういった気持ちは持っているものですよ」。そう言って、中嶋さんは微笑んだ。
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