Formula TOYOTA


Press Release

2002エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ第1戦・富士
_/_/_/2002 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 1 FUJI
  • 富士スピードウェイ/15周
  • 予選:5月3日(金・祝)晴れ/ドライ/観客数:28,900人
  • 決勝レース:5月4日(土・祝)晴れ/ドライ/観客数:53,000人

FT30導入、新たな時代に突入したフォーミュラトヨタ
柴田が初優勝、噂の16歳・平手もデビュー戦で2位入賞!

フォーミュラトヨタも第3世代へ。著しい進化の兆しあり!
 1991年にスタートを切り、今年が12年目となるエッソ・フォーミュラトヨタ。日本では初めてのワンメイクフォーミュラが、ここまで長い歴史を誇るようになったのは、イコールコンディションをキープし、なおかつ安全性には最大の配慮を欠かなかったことが、重要な要素であるのは言うまでもない。
 そのフォーミュラトヨタが最初のモデルチェンジを実施したのは95年のこと。FT20は初代FT10のアルミモノコックを流用しつつ、エンジンを同じ4A-GEながら4バルブから5バルブバージョンに変更。合わせてカウルやサスペンションレイアウトを改めるとともに、サイドバーの追加やメインロールバーの強化を行ってきた。それからさらに月日は流れ、ドライバーの技量とともにセッティングに対するノウハウ、データともに飛躍的に向上し、当初想定されていた以上のラップタイムをマークするほどともなった。
 そこで世界的にも安全面の確保が叫ばれている現在、さらなる進化を求めてフォーミュラトヨタは2度目のモデルチェンジを実施することに。新たに用いられるFT30、その最大の特徴はモノコックが一新され、ついにカーボンファイバーが投じられたことだ。エンジンはそのまま、そして足まわりやリヤウィングなどは小改造に留められている。ミッションもまた流用されたものの、新たにLSDを追加、合わせてタイヤがいよいよバイアスからラジアルに改められた。その結果、よりF3に近い操縦特性を示すように。そのことが意味するのは、ステップアップした際に違和感を極力なくそうということに他ならない。
 現時点ではまだそれぞれ組み上がってから間もないため、FT20時代のレコードタイムは破られていないものの、ある意味で時間の問題ではないだろうか。それだけのクオリティは明らかで、もちろん潜在能力がまだ完璧には引き出されていないからだ。


ティーンエイジャー急増、限定ライセンスで16歳の平手もデビューを果たす
 エントリーリストを見ていると、明らかに目立つのは20歳前後のドライバーが増えていること。それどころか、16歳のドライバーさえ存在した。誤植? いや、そうではない。昨年よりカートレースでの実績を持つドライバーを対象とした限定ライセンスが発給されることになり、これを取得すれば16歳以上18歳未満のドライバーでもフォーミュラトヨタを含む、F3未満のフォーミュラカーレースへの参戦が可能になったのだ(ただし排気量は2000cc未満)。
 フォーミュラトヨタで初の対象者となったのは平手晃平。全日本カート選手権の実績もさることながら、昨年のフォーミュラトヨタ・レーシングスクールで実力を評価され、エッソのバックアップによるスカラシップで貴重なチャンスをものにすることになった。同じくエッソ・ウルトラフロースカラシップFTをドライブする機会を与えられたのは番場琢。両者ともに同スクール校長である関谷正徳のお眼鏡にかかった存在だけに活躍が大いに期待されている。何しろ、昨年の片岡龍也、平中克幸の例があるだけに!
 もちろんのこと、彼ら以外のヤングドライバーたちが、確実に存在するF3へのステップアップを狙い、今まで以上にフォーミュラトヨタに対し、目を向けるようになったのは明らかだ。


2年目の柴田が大躍進、練習時の好調さそのままにポールポジションを獲得する
 富士を舞台とする新生エッソ・フォーミュラトヨタシリーズの開幕戦には、実に24台ものエントリーが集まった。当初20台未満と予想していた関係者にしてみれば、嬉しい誤算となったのは言うまでもない。まだ完成から間もないマシンも少なくないことは、未塗装のままであるマシンも少なかったことからも明らか。そのため、仕上がり具合にも差があったのは否めぬ事実だが、それも間もなく詰まり、それぞれ均一のポテンシャルを見せることだろう。
 さて、事前に行われた合同テストも含め、練習時から速さを伝えられていたのが柴田裕吉。2年目のドライバーながら、昨年は今ひとつ目立った成績を残していないものの、マシンが改まったことが少なからず好影響を及ぼしたよう。とはいえ事前の予想では、同じ継続参戦のドライバーであっても、実績を残している小早川済瑠や名和克憲、阿部伸次、そして井上智あたりが有利だと思われていた。
 さて、予選の時を迎えた。さわやかな好天にも恵まれ、コンディション的には申し分なし。話題の柴田はしんがりでコースイン。やはりというべきか、開始からしばらくは本命視されていたドライバーたちが順調にタイムを刻んでいった。最初のアタックでいきなり阿部が1分33秒台に突入し、間もなく名和がこれに続く。ただし、小早川は今ひとつ切れが悪い。それもそのはず、シェイクダウン直後にパーツの破損からクラッシュを喫し、その際に首を痛めてしまったからだ。正直なところ、今回ばかりは苦戦は否めないだろう。
 一方、タイヤが十分に温まり始めると、他のドライバーもどんどんタイムを伸ばし出す。目まぐるしく順位が入れ替わる中、最後の最後に1分32秒811をマークしてトップに立ったのが柴田だった。そして、ほぼ同じタイミングで大躍進を遂げたのが池田大祐ながら、それでもコンマ3秒の差をつけられていた。この池田はルーキードライバー。4輪でのレース経験はFJがわずかに1戦あるだけだ。
「スリップストリームはあんまり使えず、ベストタイムを出した周もむしろ単独に近いです。後ろにつこうとするとアクセル抜かれちゃうんで、こうなったら自力で何とかしようと、がむしゃらにいきました。練習ではもっとタイムが出ていたので、あんまり納得はしてませんが、前に誰もいないレースは初めてなんで、決勝はもっと思いっきりいきます」と柴田。これが初ポールとは思えぬ強気の発言には、大物の雰囲気さえ感じられた。
 そして2番手は池田で、3番手は平手が獲得。ここまでの平均年齢は18歳、4番手のHIDEで引き上げられるも、以降も番場、阿部、小早川、井上、名和、そして郭美美らヤングドライバーがずらりと並ぶことになった。このあたりポールから1秒と差がついていないだけに、決勝での混戦が大いに予想された。


オープニングの速さが勝負の決め手に。柴田がポール・トゥ・ウィンで初優勝!
 予選日に比較すれば、雲も出ており、いくぶん気温も下がった決勝当日。が、そのことはよりコンディションが向上したことも意味し、加えてストレートに対して強い追い風も吹いていた。予選を上回るタイムが出ても、条件としてはおかしくない。また、スタンドは超満員。開幕戦からいきなり、こんな好状況でレースができるとは、フォーミュラトヨタ使いたちはなんと幸せなことか!
 注目のスタートでは、まず鋭いダッシュを決めたのが2番手の池田だ。1コーナーに真っ先に飛び込んだかのように見えたが、そこに白煙巻き上げて飛び込んできたのがポールの柴田。立ち上がりで2台は並び、縁石に足を落としてまでポジションを守ろうとした池田ながら、脱出速度で柴田が上回った。その勢いはオープニングラップ中保たれ、スタンド前に戻ってきた時には1秒3もの差をつけていたのだ。1周終了時点で3番手はHIDE、そして初めてのスタンディングスタートとあって、やや出遅れた平手は井上にもかわされて6番手ながら、それからの1周であっさりと3番手に浮上してしまう。ところで、この段階でふたりの注目すべきドライバーがすでにリタイア。番場がスタート直後の1コーナーで後続車両から追突され、フォーメイションラップのうちに阿部はドライブシャフトにトラブルが生じ、マシンを止めていた。
 周を重ねるごとに柴田は池田との差を広げ、そして平手は池田との差を縮めていた。やがて7周目に池田は平手にかわされるのだが、これがデビュー戦ということを考えれば、3番手であっても普段ならば相当の評価を受けるはずだ。が、今回ばかりは平手が相手とあってはどうしても分が悪い。それ以降、4番手のドライバーを一切寄せつけなかったのに! 一方、勢いに乗る平手はわずかながらもトップを行く柴田との差を詰め、ラスト3周はファステストラップを連発する。しかし、最後は柴田がオープニングラップで築いたマージンがモノを言い、最後まで誰にも攻め立てられることなく逃げ切りに成功。初の表彰台を初優勝という最高の結果で獲得することになった。
「2位でもおめでとうと言わないでください」という平手に、続いて池田がゴールし、表彰台は若さで満ち溢れていた。長いフォーミュラトヨタの歴史において、3人とも10代のドライバーで表彰台が占められたことは未だかつてなかった。4位はHIDEでベテランとしての抵抗を見せ、苦しい状況の中、小早川が5位。そして名和との接触があった井上が6位という結果に終わった開幕戦。開幕前の予想は今のところ大きく覆されているが、この状態は果たして今後も続くのか。解答は次回の菅生ラウンドで少なからず明かされることだろう。


WINNER'S COMMENT
「1周目は死ぬ気で走りました!」
「僕としてはスタートは普通で、むしろ2番手の人(池田大祐)の方が良かったんだと思います。1コーナーのブレーキングでは白煙上げたけど、それは予定どおり。突っ込んでいくのが僕のスタイルですから。それからの1周は死ぬ気で走りました。だから、差もつけられて最後まで逃げ切れたんだと思います。次の菅生は決して得意ではないんですが、正直な気持ち、『俺が一番速い!』って思い込んで挑みたいと思います。ええ、この調子でいきますよ!」

WINNER'S PROFILE
ノーマーク一転、一気に注目すべき存在に!
柴田裕吉(Hiroyoshi Shibata)出身地:福岡県 生年月日:1982.5.25
「昨年からフォーミュラトヨタを始めて、その前はカートを遊びでやっていました。その程度のレベルで、決してすごい実績とか出しているわけじゃないんです。別に全日本まで進んだわけでもないし。去年も大した成績を残していないし、カートの頃だってそんなに速くなかったんですが」と苦笑いする柴田裕吉が、新生フォーミュラトヨタ、FT30でのファーストウィナーに。自らも語るとおり、レースキャリアも極めて少ないドライバーであり、成績こそともなっていなかったが、その中に光るものを秘めていたのは間違いない。カート時代から所属するガレージ茶畑の今宮真代表が抜擢したドライバーは、今年いきなり才能を開花させた。
「去年はただただ言われるままに走っていたんですが、今はだいぶ理解しながら走れるようになったんです。それは大きいと思いますね。それと新しいクルマの特性が僕に合っているんじゃないかと。今はそんな気がしています」
 この調子は果たして今後も続くのか。ホームコースである富士以外でも速さを見せつけたならば、今以上に柴田を誰もが注目しないわけにはいかなくなるだろう。
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