2002エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ第3戦・もてぎ |
| _/_/_/2002 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 3 MOTEGI |
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FT初開催のもてぎで、2年目のドライバーが逆襲開始 前回の涙から、小早川済瑠が1年ぶりの勝利で笑顔へ一変! |
| 戦いの舞台も、未知なる領域へ。意外にも上位陣のタイム差はごくわずか
今年のエッソ・フォーミュラトヨタシリーズは、マシンがFT30に改められたことだけが、リニューアルポイントではない。実は戦いの舞台も増やされている。シリーズ第3戦は、そのツインリンクもてぎで開催された。このサーキットでは他にもFJ1600などが行われているのだが、練習はともかくとして実戦経験を持つ者はほとんどいない。 だから、普段のレース以上にハンディキャップの少ないレースとなることが予想され、ここまでの2戦で元気溢れる走りを見せているルーキーたちの活躍が目立つものと思われた。が、確かにハンディキャップの少ないレースとなったのは間違いない。その証拠に、予選ではトップから1秒以内に9名ものドライバーが続いたのだから。しかし、フロントローに並んだのは、いずれも2年目のドライバー。赤旗が2回も出る波瀾含みの展開の中、中にはタイミングを逸したドライバーもいたようだが。 ポールポジションを獲得したのは前回3位の小早川済瑠。計測開始とともにコンスタントに1分57秒台の前半で走行し、2回目の赤旗中断の直前に、きっちりとクリアラップが取れたことが功を奏し、一気に56秒670にまで突入する。 「やっと落ち着きました。今回はクルマがすごくいい感じなので、クリアラップさえとれれば絶対、と思っていました。57秒台を連発した後、いったんクールダウンして間を開けたら、すごくいいクリアラップが取れたんです。それでもミスはしてるんですよ、でも取り返せた分もあって、もしすべてがパーフェクトであったら56秒4ぐらいはいけたかもしれません。でも、まぁ良かった。1戦目は練習中にアップライトが壊れ、2戦目もやっぱり練習中にクラッシュ。今年初めてこれが何の問題なく走れた予選なんです。だけど、問題は決勝。これをトップで帰ってこなきゃ本物とは言えませんからね」と小早川。なお、2番手はチームメイトの名和克憲で、その差はわずかコンマ16秒。 3番手には2度目の赤旗中断後に唯一タイムアップを遂げた阿部伸次がつけながら、来は他区間での追い越しがあったため、ベストタイム削除の不運も。そのため、7番手へと後退してしまう。繰り上がって3番手は前回2位のルーキー番場琢で、これに続いたのは井上智。ここまでが1分56秒台で、以下は池田大祐、平手晃平の順となった。なお、連勝狙う平手は赤旗に最も翻弄され、満足にアタックできなかったばかりか、セッティングも今ひとつと首をひねる。しかし、「カート時代から追い抜いていくレースは好きでしたから」と、まだ勝負を諦めてはいなかった。 |
| リヤブレーキにダクトが装着。エントラントからの要望に応えて
なお、今回のレースからリヤのブレーキキャリパーに冷却用のダクトを引くことが許された。これは予選を前にしてエントラントからの要望に応え、決定したものだ。ここもてぎは、ただでさえブレーキの負担が大きいコースである上に、コンディション的には今季最高の暑さでもあった。なおかつ今年からラジアルタイヤに改められたことで、グリップ力が向上してもいる。TRDやFTAが要望に応えてくれたことに、エントラント一同感謝の模様。 蛇腹のホースで作られたダクトは、見た目こそシンプルだが、効果のほどは少なからず。今後もこうやってエントラントとオーガナイザーのキャッチボールが、スムーズに行われることを切に願いたい。 |
| オープニングラップのスパート鋭し小早川、後続をあっという間に引き離す
決勝レースも予選同様、初夏を思わせるような、汗ばむほどの天候の中で行われた。もてぎは意外にオーバーテイクポイントの少ないコースと言われ、となれば予選結果同様、スタートの成否が勝敗を大きく左右する。前述のとおり上位陣のタイムは僅差であるがゆえに、より一層その傾向が強くなることが予想された。 注目のスタート。ここではフロントローのふたりが無難に動き出したのに対し、それ以上に鋭いダッシュを決めたのが4番手スタートの井上だ。番場の脇をすり抜け中央突破、名和にも迫る勢いを見せたが、それは許されず、まずは3番手に。逆に番場はスタートにやや出遅れ、挽回しようとした4コーナーでコースアウト。すぐにコース復帰できたが、順位は大きく落としてしまう。 オープニングラップの順位は小早川、名和、井上で、池田がふたつポジションアップの4番手。そして開幕戦のウィナーであり、前回は火災のため決勝進出を許されなかった柴田裕吉が8番手から5番手に浮上。阿部がこれに続き、平手は8番手、番場は11番手に。この周の勢いはトップの小早川が最も良く、早々と1秒以上の差をつけていた。そして2周目ともなると、完全に小早川は独走態勢。名和から柴田が2番手争いの集団を形成するようになり、5周目に柴田が池田とポジションを入れ替えた。 1周ごとにじわじわと差を広げていく小早川に対し、後続集団は一時こう着状態を続けていた。逆にその間に差を詰め、ここに迫るまでとなったのがやはり平手と番場。ふたりでファステストラップを更新しあって、大逆転のチャンスを待っていた。が、阿部と争う際に、9周目の1コーナーで平手が姿勢を乱してしまい、その脇を番場がすり抜ける。間もなく平手も7番手に上がるも、前方の集団からは離されてしまう。 その2番手を争う集団だが、ファイナルラップに動きがあった。3コーナーでブレーキを詰めに詰め、名和をかわそうとした井上だが、ややオーバーラン気味になってしまい、その脇を「いただき!」とばかりに柴田が駆け抜けた。これですべての勝負が完了。そして、最後まで全く危なげない走りを見せた小早川が逃げ切りに成功し、約1年ぶりの勝利を飾るとともに、わずか1ポイント差ではあるものの、平手をかわしてランキングのトップに立つことになった。2位は「次こそ勝ちます!」と語る名和、3位は柴田で「今回は予選が悪かったので手堅く行こうと考えていたら、最後に表彰台が舞い込んできました」と、してやったりの様子。今回は2年目のドライバーで表彰台が独占されることとなった。 |
| WINNER'S COMMENT 「ここからは僕がまわりからマークされる存在になります」 「スタートが決まって、今回はトップを守れたらとにかく序盤のうちに逃げようと考えていたんですが、そのとおりのレース展開になりました。思った以上に早い段階から差も広がったんで、ブレーキやタイヤを労って走ることができ、途中からはミラーを見ながら、後続との差が詰まったら少しペースを上げて、また離すという自分の思いどおりのレース展開ができました。でも、実のところ途中からバックストレッチで4速が抜けたりもしてるんです。接戦になっていたらヤバかったでしょうが、幸い問題になることはありませんでした。それにしても1年ぶりの勝利。嬉しいです! だけど連勝しないとね、それこそ本物だと今の時代、誰も認めてくれませんから。今後は僕がまわりからマークされる存在になります」 WINNER'S PROFILE もう涙はいらない。欲しいのは祝福の笑顔だけ! 小早川 済瑠(Wataru Kobayakawa)出身:広島県 生年月日:1981.8.21 前回のレースではシートベルトの一部が外れてしまい、本領を発揮できず、3位でのフィニッシュにも表彰台の上で無念の涙さえ流していた小早川済瑠。無理もない。今年、継続参戦のドライバーで唯一優勝経験を持ち、昨年のランキングは3位。チャンピオンの最有力候補と言われながら、ルーキードライバーたちに封じ込められていたのだから。しかし、今回は一転して笑顔が表彰台の上でこぼれていた。それもまた当然のことだろう。完璧とも言えるレース展開で、ポール・トゥ・ウィンを飾れたのだから! その小早川の4輪レースでビューは昨年で、それ以前には豊富なカートレースでの実績がある。実戦デビューは94年からだが、実際に乗り始めたのは9歳の頃。いきなりローカルシリーズではあったがチャンピオンを獲得し、その後も地元の中・四国地方選手権で勝ち星を重ね、昨年は鈴鹿や猪名川のシリーズにも挑み、それぞれシリーズ3位、2位を得ている。その後、1年間のブランクこそあったが、貴重なチャンスをつかんで今日に至っている。 「前の2戦は予選の前にいろいろあったので、一応結果は残していますが、ここからが実質的な開幕戦だと考えています。これからも今回のようなレースを続けて、チャンピオンを狙うつもりです」と小早川。有言実行タイプのドライバーでもあるだけに、その言葉を信じてみるのも悪くなさそうだ。 |
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