Formula TOYOTA


Press Release

2002エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ第10戦(最終戦)・富士スピードウェイ
_/_/_/2002 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 10 FUJI
  • 富士スピードウェイ/15周
  • 予選:11月24日(日)/セミウェット
  • 決勝レース:11月24日(日)曇り/セミウェット/観客数:35,000人

平手晃平が4勝目を挙げて、今季最後の戦いを締めくくる!
チャンプ小早川は無念のリタイア。有終の美を飾れず

多くのトヨタ関係者が見守る中で、最終戦を飾れるか小早川!
 前回のレースで4勝目をマークし、この最終戦を待たずしてチャンピオンを決めた小早川済瑠。今年のエッソ・フォーミュラトヨタシリーズは文字どおりフレッシュなルーキーが多く、予想を遥かに超えて小早川を苦しめたが、2年目のドライバーとして、また本命との評価を裏切らず、強さを見せつけることになった。
 さて、この最終戦は今年もトヨタモータースポーツフェスティバルと併せ、富士スピードウェイを舞台に開催された。当日はトヨタF1のデモ走行もあり、次期エースとなるオリビエ・パニスも登場。話は前後してしまうが、そのパニスが決勝レースを見て、何人かのドライバーに将来性の高さを見い出したという。それが誰かは、すべてのドライバーに対するお楽しみとして、今回はトヨタ関係者の多くが集まることもあり、普段以上に気を抜くことを許されないレースである。
 果たして小早川はチャンピオンとして、相応しいレースを披露することができるのか? もちろん、どんなレースであれ、小早川のシリーズを通じての展開からすれば、評価が下がることはないだろう。しかし、その小早川を下すことができれば、そのドライバーに対する評価は上がる。そういった意識をどれだけ持っているのか、ある意味で試されるレースともなった。
 なお、今回は久々のワンデイレース開催。予選と決勝のインターバルが極めて短いため、どんなことがあっても予選でのクラッシュなど許されない。


絶好調を伝える平手、今季2度目のポールを奪う。3番手にはデビュー戦の可夢偉が!
 平手晃平は金曜日の練習中にクラッシュを喫していた。それも100Rでのアクシデントだっただけに、マシンのダメージは小さくなく、メカニックたちの必死の修復によって直ったというぐらい。だが、それは逆に絶好調の証だという。「今回は走り始めからすごく調子がよくて、クラッシュした時も行けそうだったから、行ってみたら思った以上にリヤが出てしまって。メカニックの皆さんには迷惑をかけてしまいましたが、ちゃんとお返しをしてみせます」と平手。
 しかし、肝心の予選はセミウェット。すでに雨は上がっているのだが、スリックタイヤで行けそうであり、行けなさそうでもあるという、微妙な状態となっていた。これでもし、計測時間が長ければ、最初はレインタイヤ、後半にスリックタイヤという方法もあったのだろうが、今回の計測時間はわずか20分。タイヤを交換する余裕はあっても、セッティングを変更することはほぼ不可能だった。
 結局、スリックタイヤを選んだのはわずか2台。結果論ではあるが、その選択は失敗となってしまった。また、レインタイヤ装着車の中でもリヤウィング上段のフラップを外した、富士ならではのレスダウンフォース仕様で挑んでいたクルマもあったが、予想以上に路面状態が向上せず、結果的には完全レインセッティングが正解となった。
 今季2度目のポールポジションを獲得したのは平手。誰よりも早く1分44秒台に乗せたばかりか、ライバルが接近してくると、駄目を押さんばかりに自身は43秒台に叩き込んだばかりか連発し、グウの音も言わせぬ状態へ。そして、ラスト2周で43秒455をマークして最前列のグリッド確保を決定的なものとした。平手以外に43秒台に乗せられたのは、池田大祐のみ。しかも、コンマ2秒の差をつけられてもいた。
「今回、ブレーキパッドがおろしたてだったので、慣らしを兼ねて前半は少し抑えめでいったんですが、結果的にはそれでタイヤも温存できて、後半の路面がかなり良くなったところでピークを迎えることができました。路面はウェットのままの部分もありましたが、最後はほとんどドライの部分もあって、積極的にそういうところを走れる気持ちの余裕もありました」と平手。
 2番手の池田に続いたのは、今回がデビューレースとなる小林可夢偉。平手と同様に限定競技ライセンスでの出場となる16歳の高校生ドライバーだ。本来、誕生日を迎えて間もなくの第8戦からの出場が予定されていたが、今年はヨーロッパでカートレースに参戦、いい流れを断ち切らぬための配慮として今回をデビューに変更されたのだ。「最初のうちは、富士も雨も初めての経験だったんで丁寧に走っていたんですが、そのうち路面も良くなってきたんで、ちょっと思いっきりいったら、想像以上にいいタイムが出て、自分でもビックリしています」と小林。そのコメントには初々しさも感じられた。
 そして4番手は番場琢、以下、柴田裕吉、村杉潤、開幕戦以来の出場となるベテラン大庭永仁、そして吉沢哲也と続き、ようやく9番手に小早川が続くという展開となった。ちなみに10番手は名和克憲。
「タイヤが肝心なところで厳しくなっちゃって。路面もずいぶん良くなってきたのに、一番いい状態をそういう時に使えなかったのが悔やまれます。まぁ、でも富士ですから。1台でも多く抜いて、いや最後にはトップに立って、やっぱりチャンピオンと、みんなをびっくりさせてみせます」と小早川は語っていたのだが・・・・・・。


小早川、スタート直後に無念のリタイア。中盤からは平手のひとり舞台に!
 決勝レースを迎える頃には路面はすっかりドライ。しかし、実際のところ、完全にと言い切れるのはレコードライン上だけで、それを少しでも外すと極めて滑りやすい状態となっていた。このコンディションはフォーメイションラップのうちに各自理解していたことだろうが、問題は競り合いになった時。もし、並んでコーナーに飛び込んでいくような状況において、あえて引くべきか、それともリスクを承知でそのまま行くのかは非常に判断の分かれるところだ。間違いなく言えるのは、トップに立って後続を引き離せば、一切リスクは不要となる。それだけだった。
 さて、注目のスタートだが、クラッチミートのタイミングはほぼ完璧だった平手ながら、運悪く走行ライン上でないイン側のグリッドは、まだ若干濡れたまま。その点、2番手でアウト側に並ぶ池田の方が明らかに有利だった。そのため、真っ先に1コーナーに飛び込んだのは池田の方。平手は番場や小林にも迫られたが、なんとかそこは凌いで2番手で1コーナーでクリアする。そして、その直後、思いがけぬ光景が飛び込んできた。なんと小早川が1コーナーでストップしているではないか!
「縁石が思った以上に高くて・・・・・・。イン側に当たって、そこが濡れていたんで弾かれるような形になってしまいました」と小早川。最も手強きライバルの離脱が、平手をより冷静にレースさせた。トップの池田に全く離れず続き、その間しきりにプレッシャーをかけ、待つこと4周。そして、勝負の時はやってきた。5周目に差しかかったばかりの1コーナーで池田を捕らえ、ついに待望のトップに躍り出る。と同時に一気にスパート。
 続いて池田に襲いかかったのは番場だ。6周目のストレートでスリップストリームから抜け出し並走。が、抜きにかかった1コーナーで半車身だけレコードラインから外れていたことが災いし、ブレーキがロックしてしまう。これに池田は巻き込まれ、両者ともに無念のリタイア。「100%、僕のミス。もう少し勝負を待てば良かった」と番場。一方、このアクシデントで、平手はほぼ5秒のマージンを得ることにもなる。
 また、繰り上がっての2番手争いも俄然活気づくこととなった。激しくポジションを入れ替えあっていたのは小林、そして村杉と名和。が、このうち10周目の1コーナーで小林とナワが絡んでしまい、やはり両者ともにリタイア。これで単独の2番手となるかと思われた村杉だったが、気がつけば背後には坂本祐也がぴたり。予選中のスローパンクチャーで11番手に留まっていた坂本が、激しい追い上げで忍び寄っていたのである。過去においてもスポット参戦ながら、たびたび光る走りを見せていた坂本だ。しかも、今年はニュービートルカップでチャンピオンを獲得し、より成長を遂げての参戦だけにブランクどころか勢いも十分、11周目には村杉をもかわしてしまう。「もし、予選を普通に走れていたら」とは、本人ならずとも思うところ。
 その間にも、トップを行く平手は少しもアクセルを緩めることなく走行。完璧な独走で最終戦を締めくくることとなった。2位は坂本で、3位は村杉。4位は1コーナーでのハーフスピンでいったんは順位を落としながらも、上位返り咲きなった柴田が獲得。ファイナルラップに大庭をかわして、そのまま逃げ切ることとなった。


チャンプ小早川はスカラシップでF3へのステップアップが決定!
 今年のシリーズ表彰はレース終了からほどなくして、その日のうちにサーキット周辺の会場で行われた。すでに最終戦を前にして小早川、平手の1位、2位は決定。その一方で、動きが出る可能性もあった3位は、番場が何とか逃げ切って獲得。そして、柴田、名和、池田の順が最終結果となった。
 なお、この表彰式の席上で来季のエッソ・スカラシップ受賞者も発表された。予想どおり小早川がF3スカラシップを獲得。またFTRSことフォーミュラトヨタ・レーシングスクールで高い可能性を認められたドライバーに対するFTスカラシップは、中嶋一貴と大嶋和也が獲得した。なお、大嶋はまだ14歳のため、2004年からの参戦。来年は中嶋と小林がエッソカラーに彩られたマシンを駆ることになる。
 中嶋は元F1ドライバー中嶋悟氏の長男。そして大嶋もまた父親を全日本ラリーストに持つ、いずれも生粋のサラブレッド。とはいえ、まだまだ未知数の彼らが今後どんな成長ぶりを見せるのか、暖かく見守っていきたいところだ。それはもちろんのこと、小早川や小林にも共通する。


WINNER'S COMMENT
「今年1年間勉強してきたことを、来年はもっと生かします!」
「チャンピオンは奪われてしまいましたが、勝率では小早川さんに並びたかったので、4勝目が挙げられて良かったです。スタートはグリッドが濡れていたので食いつきが悪く、それで抜かれちゃったんです。でも、僕のクルマの方がマージンあるのは明らかだし、池田選手の方は後ろから見ていたら苦しそうだったので、これはすぐ行くよりもちょっと様子を見ようと。実際、一度アウトから攻めたら抑えられたりもしたんで、無理なくいけるタイミングで抜きました。トップに立ってからは少し離すこともできましたし、さらにその後、後ろでいろいろあったんで、後半は楽なレースになりました。でも、変にアクセルを緩めるのだけはやめようと。そういうレースは関谷さんが一番嫌うんです。行ける時は思いっきりいって、自分をアピールしろ、って常に言われてましたから。それにしても最後を飾れて良かったです。来年はどう言う形でレースをやるのかまだ分かりませんが、今年1年間勉強してきたことを、最大限に生かしたいと思います」

WINNER'S PROFILE
さらに評価を高めた噂のルーキー。4勝を小早川と分ける!
平手晃平(ひらて こうへい)出身地:愛知県 生年月日:1986.3.24
 今年のフォーミュラトヨタにおいて、やはり最も話題を集めたのは高校生ルーキー平手晃平だった。噂どおりの実力をいきなり開幕戦から見せつけ、2位入賞。続く第2戦では早くも初優勝を飾り、当分の間、破られないであろう16歳と2ヵ月での勝利という大記録を打ち立てた。時に苦戦を強いられることもあったが、終わってみればチャンピオンの小早川済瑠と同じく4勝をマーク。また、ただひとりリタイアを一度も喫することなく、全戦でポイントゲットに成功している。もし、全戦有効のポイント制度が採られていれば、実は2ポイント差で平手が王座に輝いていたことになる。
 限定競技ライセンスによってレース出場が許された、スーパールーキー平手がレースに興味を持ったきっかけは父親に見せられたF1レースのビデオ。沸き立つ思いを堪え切れず、カートレースを始めたのは、今から4年前の98年、12歳の時である。その類まれなる才能は翌99年には全日本ジュニア選手権にも挑ませたほどで、ここではチャンピオンを獲得。2000年には全日本選手権のICAクラスに参戦、3勝を挙げてランキングでは3位に。そして昨年はFAクラスに挑み、2度表彰台に上がってランキングでは5位となっている。
 また、昨年は合わせてフォーミュラトヨタ・レーシングスクールも受講。とてもフォーミュラ未経験とは思えぬ走り、そして高い学習能力を見せたことから、関谷正徳校長を始めとする歴戦を誇る講師たちの目に留まり、スカラシップという貴重なチャンスを手にすることになった。周囲からの強烈な注目にも奢ることなく、常にそのコメントは高校生らしくさわやか。笑顔の中に秘めた才能は、一体どこまで伸びていくのだろうか。その成長の過程を見つめていくことは、我々にとってもひとつの財産になりそうだ。それを来年、どこで見られるのだろうか。継続参戦のFT? あるいは・・・・・・。
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