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2004エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ第3戦・TI |
_/_/_/2004 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 3 TI |
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予選6番手からわずか1周でトップに浮上、雨も味方に! デビュー3戦目の初優勝、今回のヒーローも16歳の関口雄飛 |
大嶋、関口の快進撃は果たしてTIでも続くのか? 全10戦で争われるエッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズはダブルヘッダーとして行われた筑波ラウンドを経て、舞台を岡山県・TIサーキット英田に移して第3戦が開催された。このコースは前半がリズミカルな走りを要求し、そして後半がストップ&ゴーの繰り返しという、典型的なテクニカルサーキットである。そのため、勢いよりも要求されるのは、むしろ確実さ。一瞬のミスが命取りになるようなレース展開になることは、まず間違いないだろう。 なお、このシーズンオフに路面はレイアウトこそ変更されていないものの、全面的に補修されているため、これまでのデータが生かされない可能性は多分にある。 さて、前回のレースで大いに話題を集めたのは、FTRSからエントリーする16歳コンビの大活躍だ。限定Aライセンスでの出場となる大嶋和也と関口雄飛は、これがともにデビュー戦にも関わらず、予選から2戦連続で1位、2位を独占したばかりか、決勝でも1-2フィニッシュを飾り続けた。 過去においてフォーミュラトヨタは平手晃平や小林可夢偉といった限定Aライホルダーを受け入れてきたが、デビューウィンを飾ったのは大嶋が初めて。4月30日に誕生日を迎え、17歳になったばかりのドライバーが、どこまで快進撃を重ねるのか大いに注目された。 |
武田がついにきた! ライバルを悲観させ、初ポールを奪う 公式スケジュールに先駆け、金曜日に行われた練習走行では、関口がトップタイムをマーク。その他にも筑波ラウンドで表彰台に上がった安岡秀徒や阿部翼、そして武田雄一が好調な走りを見せる中、大嶋のタイムが今ひとつ伸び悩む。特にタイトコーナーが続くコース中間に、まだ感触をつかめずにいるようだ。 予選開始から、いきなり絶好調をアピールしたのは石浦宏明。2年目であるだけにチャンピオン最有力候補と呼ばれたドライバーは、タイムの出し方も堂々たるもので1分32秒台を連発したばかりか、常にタイムアップを果たしてトップをキープした。その石浦は4周のアタック後、いったんピットに戻って左側のタイヤ2本を交換。さらにタイムアップを狙う構えだ。 一方、それより早くピットに戻っていたのが武田、安岡、そして嵯峨宏紀といったル・ボーセ勢。集中力の維持という点において、このタイミングは正解だったよう。それぞれタイムアップを果たし、武田にいたってはただひとり1分31秒台をマークして、待望のトップに躍り出る。対して、石浦もやはりタイムを縮めていたが、さらなる短縮を狙った周にコースアウトしてしまい、武田、安岡のタイムを上回ることはできなかった。 「ピットに入る前はミスばかりしていたんです、それも2周続けて。なので、いったんピットに戻って気分転換したのが良かったんでしょうね。もちろん、タイヤを換えたのもいい効果だったんですけど。ただ、心配なのは決勝が雨みたいだってこと。FTのレインはまだ経験がないんです。2〜3年目の人の方が(レインの)経験がある分、有利なのかもしれませんが、僕が一番前からスタートするメリットで、そういったハンディを相殺できるといいですね」と語るのは、フォーミュラトヨタで初めてポールを奪った武田。ライバルの誰もに「31秒7なんてタイムは出せない」と嘆かせたあたり、天性の勝負勘がものを言っているかのようだ。 しかし、その言葉にある決勝の天気だが、予報では90%もの降水を告げており、どうやら避けがたい状況のようだ。武田のみならず、2番手の安岡らルーキーたちには、もちろんのこと実戦でレインタイヤを履いた経験はない。その点では3〜5番手につけた石浦、阿部、嵯峨には経験があるだけに、逆襲をかける絶好の機会になるかもしれない。 ところで、注目の関口と大嶋だが、「セッティングを変えたのが裏目に出てアンダーステアがきつかった」という関口が6番手、「どうもこの週末はしっくりこないんです」という大嶋が7番手に留まっていた。特に関口は「フォーミュラに乗るようになって雨の中を走るのは初めてになるので、できればドライの方がいいんですけど……」と、ややコメントも弱気。逆に大嶋は練習では経験があるため、むしろ雨を歓迎しているようだった。 |
オープニングラップのごぼう抜き。関口がトップに躍り出る! 決勝当日はやはりというべきか、雨に見舞われてしまった。そのため、急きょスタート前に10分間のフリー走行が設けられ、それぞれセッティングの確認にいそしむこととなっていた。ウェットコンディション未経験のドライバーたちには、この設定は大歓迎だったはずだ。しかも、問題の雨もその頃にはほとんどやんでおり、スリックタイヤを履くまでの状況になっていなかったが、ごく弱い霧雨を肌で感じる程度になっていた。 そのフリー走行を終えて、グリッド上のポールシッター武田に不穏なムードが。メカニックがラジエータのダクトのみならず、エンジンカウルのルーバーにすらガムテープを貼っていたのだ。水温が上がらないのか? いずれにせよエンジンに何らかの問題を抱えているのは明らかだ。さらにフォーメイションラップでアクシデントが。なんと大嶋がモスSでスピン。なんとかコースには留まったが、最後尾スタートを強いられてしまう。 注目のスタートでは、武田がまずまずの滑り出しを見せて1コーナーにはトップで飛び込んだが、ぴったり背後につけていた安岡に、バックストレッチ後のヘアピンで逆転されてしまう。そのまま逃げたい安岡だったが、なんとそのすぐ後ろにつけていたのは関口だ! スタートも鋭く、アトウッドコーナーまでに3番手に浮上していた関口は、リボルバーコーナーで武田をかわした後、ついに最終コーナーで安岡にも迫り、そのままオーバーテイクにも成功。一方、「右コーナーはいいけど、左コーナーでエンジンが吹けなくなった」とレース後に武田が語っていたことから、キャブレターにトラブルを抱えていたのはほぼ間違いない。思うようにペースを上げられず、武田はその後しばらく我慢の走りを余儀なくされてしまう。 逆にこれで完全に勢いに乗った関口は、オープニングラップ終了時点ではコンマ2秒だった安岡との差を、次の周には1秒4にまで広げ、早々と独走の構えに。なにしろ他のドライバーが1分45秒の後半に留まっている中、ひとり44秒台で攻めまくっているのだから。一方、同じようにハイピッチで飛ばしていたのが大嶋だ。スタートからの1周だけで5台を抜き、6周目には6番手にまで浮上する。 その頃、トップの関口と2番手の安岡は既にそれぞれが単独走行となっていたが、大嶋の接近とともに嵯峨、石浦の4番手争いが激しくなり、やがてそれが三つ巴に。このうち、フロントウィングを痛めていた嵯峨がオレンジボール旗を出され、順位を落としてしまうが、激しいバトルでペースが上がったことから石浦と大嶋は、ついに3番手の阿部の直後にもつけることとなる。一方、この頃になると武田も何らかの理由でトラブルが解消したようでペースも上がるようになり、3番手争いは4台で繰り広げられるように。 |
最後尾から追い上げは激しく、かつ冷静に。大嶋が3位でフィニッシュ! その後、しばらく続いた阿部、石浦、大嶋、武田による3番手争いだが、大嶋にはある種の予感があったという。それは阿部と石浦が絡むのではないかという。その読みは適中し、13周目のヘアピンで2台は接触。やや間合いをとっていたことで、巻き込まれずにすんだ大嶋は、ついに3番手にまで返り咲くことになる。 しかし、チームメイトがそんな激しいバトルを強いられていたとは全く知る由もなく、関口は最後まで攻め続けていた。路面の回復に合わせ、ほぼ毎周にわたって自らマークしたファステストラップを更新し続けたのだ。ひとりアグレッシブな走りは観客の視線を釘づけにし、とてもこれがウェットコンディション初体験のドライバーとは思えぬほど。17周のレースを終えてみれば、2位の安岡との差は17秒7。つまり、1周1秒以上も速く走っていたことになる。その安岡も後続には大差をつけていたのだから、いかに関口のペースがずば抜けていたかが分かる。 もちろん、関口はこれが初優勝。限定Aライホルダーとしては4人目のウィナーに輝くことになった。安岡に次いで3位は大嶋で、わずか2ポイント差ながら関口を抑え、依然ランキングのトップ。4位は我慢のレースをしのいだ武田で、5位はFJ出身のルーキー林良三。6位には阿部がつけることとなった。 |
WINNER'S COMMENT 「雨のレースが好きになりました。ダブルヘッダーじゃないのがもったいない」(関口) 「雨のレースが好きになりました(笑)。でも、フォーミュラトヨタで濡れた路面を走るのは初めてだったのでレース前は不安だったんですが、チームのみなさんがすごくいいクルマを作ってくれたので、安心して走ることができました。いやぁ、本当に乗りやすかったですよ。もっと滑るのかと思っていましたが、そうでもなかったですし。それで思いっきり攻めることができました。最後までアクセルを緩める気はなかったですね。それが関谷(正徳監督)さんの教えですから。それにしても、ダブルヘッダーじゃないのがもったいない気分です」 WINNER'S PROFILE チームメイトに負けてたまるか! 新たな主役として名乗り上げ 関口雄飛(Yuuhi Sekiguchi)生年月日:1987.12.29 出身地:東京都 開幕戦ではチームメイトである大嶋和也の陰に隠れてしまったが、それでもデビューラウンドを連続2位で飾ったのだから、本来ならばビッグニュースになってもなんら不思議ではない。もっとも関口雄飛自身も、その成績に満足していなかったのだから要求する、されるレベルは相当高くなっているのだろう。しかし、そんな不満もわずか1戦で払拭。まして予選6番手からあっさりトップに立って、その後は独走となったのだから嬉しさもひとしおだったことだろう。 関口のモータースポーツデビューは言うまでもなくカートレースで、94年からというから実に6歳の時になる。キッズカーターを対象としたレースでは敵なしの快進撃を見せ、99年には日本ジュニアカート選手権に出場。その年にはシリーズ4位に、そして翌2000年には3位に輝く。01年からはついに全日本選手権にチャレンジ。ICAクラスでランキングこそ14位だったものの1勝を挙げて、02年にはタイトルも獲得する。昨年はFSAクラスに挑む傍ら、イタリアオープンマスターズシリーズにも参戦。そしてFTRSも合わせて受講し、才能が見いだされたことから今年はフォーミュラトヨタに挑むこととなった。 今回見せた速さはとにかく圧倒的だった。ウェットコンディションの中、マシンがいくら暴れようと巧みにコントロールし、コース幅をいっぱいに、縁石に乗ることなど全くおかまいなしに攻め立てる様子は見る者を唸らせるほどだった。この勝利で勢いをつかんだのは間違いない。ここからどれだけ成長を遂げるのか、またひとり見守りたいドライバーが誕生した。 |
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