Formula TOYOTA


Press Release

2005エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ最終戦・富士
_/_/_/2005 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 11 FUJI
  • 富士スピードウェイ/15周
  • 予選:11月12日(土)晴れ/ドライ/観客数:未発表
  • 決勝:11月13日(日)晴れ/ドライ/観客数:30,200人

苦しいレース展開を耐え抜いた、大嶋和也がタイトルを獲得!
阿部翼がラスト3連勝、坂本雄也と1-2フィニッシュを果たす

秋晴れの富士スピードウェイで、大決戦の予感が! 果たしてタイトルの行方は?
 エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズの最終戦は、今年も大人気のTMSFことトヨタモータースポーツフェスティバル、そのプログラムのひとつとして開催された。ただ、昨年と異なるのは、舞台がトヨタのお膝元である富士スピードウェイに戻されたこと。新装なってからは6月の第3戦以来、2回目のレースとなるが、新鮮味が少しも損なわれていないのは、それだけ魅力的なサーキットだということなのだろう。
 さて、ここまで10戦を経て3勝ずつ分け合って、チャンピオン候補となっているのは、大嶋和也と阿部翼のふたり。もっとも、大嶋は18ポイントものマージンを手にしており、阿部の優勝を許しても、自身は8位にさえ入ればタイトルが手に入る。精神的にはかなり有利だが、それは決して望まれている結果ではない。まして年間最多勝の記録もかかっているため、是が非でも負けるわけにはいかぬ。一方の阿部はチャンピオンの可能性もある一方で、石浦宏明が6ポイント差で迫っていることから、今回の結果次第では3位に陥落してしまう可能性もあるのだ。それだけに、大嶋も阿部も必勝を期して、この最終戦に臨むことになった。
阿部が4番手、大嶋が7番手に留まる中、坂本が初のポールを獲得!
 金曜日に練習走行が2回に渡って行われ、それぞれのトップは大嶋と阿部。奇しくも、ふたりのベストは1分44秒003で、まったくの同タイム。一騎討ちへのお膳立ては、完璧に整えられたとともに、予選では1分43秒台への突入も期待された。ところが、その日の深夜に強く降った雨が、せっかく乗ったラバーを削いでしまったばかりか、路面を汚してしまう。
 幸いにして、最終戦の予選は午後から。その頃には路面そのものはすっかり乾いていたのだが、その一方でF1やGTといったTMSFならではの練習走行、アルテッツァやヴィッツの予選があり、さまざまな車両が走行したことで、前日まではと路面状態は著しく変化していた。
 気温は今季一番の低さ。そこで予選計測は20分間と長めだが、いつものようなピットでの待機はなく、時間を全車がフル活用。それはタイヤにじっくりと熱を入れるための配慮だ。アタック1周目から1分45秒台に入れたのは石浦で、44秒台への突入も最も早かった。しかし、その時の44秒724から44秒台はコンスタントにマークするものの、以降のタイムアップが許されず。
これに対して、阿部は慎重そのもの。アウトラップを含め、3周を完全にウォームアップに充て、機の熟したことを確認してからアタックにかかったのだ。その甲斐あって、1分44秒787、44秒621と着実にタイムを刻んでいくが、次の周、その阿部が戻ってこない! ミッショントラブルが発生し、コース脇でマシンを止めていたからだ。
 しかし、その悔しさはチームメイトの坂本雄也に伝わった。坂本は阿部が44秒台に入れた直後に、やはり自身も一気にタイムアップ。まずは単独走行で44秒445をマークし、続けて今度はスリップストリームを使って44秒169にまで叩き込んだのだ。その後、スピンやコースアウトが相次いだため、コースの随所に黄旗が提示され、勢い十分の坂本ですら、以降のタイムアップは許されなかった。
 一方、そのセッション後半に勝負をかけていたのが大嶋だ。前半はチームメイトの関口雄飛、山内英輝とスリップストリームを使い合うが、今ひとつタイムの伸びに欠く。そこにきて、前述のとおり黄旗の連続で思うような走りができずに予選を終える。何と1分45秒台を切れず、8番手に留まってしまったのだ。
「手応えはもう、すごくあります! クルマが素晴らしくいいので、最後に勝って気持ち良くシーズンを終えたいですね」と、坂本は国内レースでは初めてのポールに大喜び。2番手は石浦で、3番手は高井美豪。阿部は4番手に留まることを許された。一方、山下雅之、水谷大介、そして関口に続く形となった大嶋ながら、水谷が他車のスピンに巻き込まれてタイヤを損傷。タイムの抹消を条件に交換を許されたことから、ひとつポジションを上げて7番手から決勝に挑むこととなった。「本当は競り合いも得意なので、8番手からガンガン抜いていきますよ。タイトルのことはあまり意識せず、いいレースをしてシーズンを終えたいですね」と大嶋。
追う者より、追われる者の方がプレッシャーは大きい。それを証明した阿部
 大嶋が7番手とはいえ、自らも4番手。とにかく勝たなければ逆転の目はない阿部だけに、さぞかしプレッシャーも大きいのでは、と思われたが、実際には正反対。「富士で、このポジションなら全然問題なし。なるようになりますよ! 大嶋のことは気にしない。上がってきたら、その時はその時ですよ。僕は、僕のレースをするだけ」と不安を斬り捨てていたからだ。
 秋晴れの富士は3万を超す大観衆を飲み込み、スタンドは超満員。フォーミュラトヨタの決勝は、ちょうどヤルノ・トゥルーリがドライブするトヨタF1のデモラン直後! まさしく誰もが、最もテンション高まった後のレースということになる。だが、そんな中でもひとりコンセントレーションを保ち続けていたのが、他ならぬ阿部だった。絶妙のスタートを切って、1コーナーにはポールの坂本に続いて飛び込んでいく。逆に大嶋は、スタートに関してはポジションキープ。
 オープニングラップ終了時の上位陣は、坂本、阿部、石浦、関口、高井、山下、大嶋の順。だが、2周目に突入して間もなく、1コーナーで阿部が坂本に襲いかかり、2コーナーでオーバーテイクに成功する。逆に山下がコース脇でストップ。CVジョイントの破損で、駆動が伝わらなくなってしまったためだ。これで大嶋は6番手に浮上。さらに、その直後4番手に上がったばかりの関口に黒旗が。ジャンピングスタートのペナルティとして、ピットロードのドライブスルーを命じられる。その結果、4周目には大嶋が5番手に。
 阿部がトップに立った後も、坂本はまったく遅れをとることなく食らいつき、ともに1分44秒台で周回して石浦以下、後続を引き離す。つまり、トップ争いはチームメイト同士の一騎討ちということに。一方がタイムを上げれば、もう一方も次の周にはタイムを上げ、時にはファステストラップさえ更新し合う。一方、一歩でも前に出たい思いは、坂本以上に5番手を走る大嶋に上回っていたのは明らかだ。しかし、少なくても10周もの間、1分45秒フラットからコンマ1秒の前後差なく(!)、時計のよう正確にタイムを刻み続けても、先行する高井との差はなかなか詰まらない。13周目の1コーナーで一度だけチャンスが訪れるが、逆転するまでには至らず。どうやらマシンは本調子ではなかったようだ。
それぞれの執念実り、大嶋がチャンピオンに輝き、阿部が4勝目をマーク
 ラスト3周、それまで1分44秒台を刻み続けていた阿部のタイムが、1秒ほど落ち続けた。1コーナーでアンダーステア症状が出ていたためだが、それはまた坂本にとって絶好のチャンス。阿部の異変に気づき、最後の力を絞り出す。14周目のダンロップコーナーでインを刺そうとするが、ここではガードを固められる。ならば最後のストレートでと、坂本はコーナーで無理に仕掛けず、ロスを少しずつ削ぎ取っていった。そして、ゴール寸前。坂本は阿部にコンマ2秒を切るまでに迫ったものの、逆転は許されず。それでもル・ボーセモータースポーツは、久々に1-2フィニッシュを達成。この上ないシーズンの締めくくりに、スタッフは安堵の表情を見せていた。
 阿部はラスト3戦の連勝と今季4勝という、胸を張れる結果を残してシーズンを終了。問題は大嶋のポジションだ。もちろん、過度の期待はしていなかっただろう。しかし、石浦、高井に続いて大嶋がゴールしたことによって、夢は潰えた。逆に大嶋は厳しいレースをしっかり走り切り、悲願のタイトルを手にすることとなった。6位は水谷が獲得。16番グリッドからの出走を余儀なくされながら、実に10人抜きを果たしたこととなる。
 レース後にシリーズ表彰が行われ、上位につけたドライバーたちの健闘がたたえられる中、併せて06年度のスカラシップが発表。F3スカラシップを新チャンピオンの大嶋が獲得、またFTRS受講生の中から選ばれるFTスカラシップは、今年の練習生でもある国本京佑が獲得した。ただし、いずれのスカラシップも若干名の追加が見込まれている。
WINNER’S COMMENT
「自分ができることは、すべてやりました! 僕だけの記録も残せたし」(阿部)
「チャンピオンになれなかったのは悔しいですが、自分ができることは、すべてやりました! 4勝っていうのは僕だけの記録だし、3連勝っていうのもね。レースはスタートから決めて、勝負は早いうちにかけるつもりでした。(坂本を抜く際)一瞬ひやっとしました? いや、僕にしてみれば別に。お互い変なブロックだけはしないよう、話はしていましたからね。ただ、最後に1コーナーでアンダーステアが出ちゃって。それで追いつかれちゃったんですけど、もっと自分でタイムを落とさない走りができれば良かった。それだけは課題として残してしまいましたね」
WINNER’S PROFILE
終盤戦、その勢いは誰にも優った。もう、フォーミュラトヨタからは卒業だ!
阿部 翼(Tsubasa Abe)生年月日:1982.4.7 出身地:神奈川県
 第5戦で初優勝を飾り、そこからの6戦はすべて表彰台を獲得。そして、ご存知のとおり、第9戦からは3連勝を飾って、阿部翼がシリーズランキング2位に輝くこととなった。シリーズ終盤の勢いは誰にも優り、内容の薄いレースがほとんどなかったのは重要なポイント。この1年間、阿部はシリーズを通じて急激な成長を、単にドライビングだけでなく精神面でも遂げたことは、そのことからも明らかである。
 その阿部のルーツは、カートレース。両親がともにカートレースをやっていたのがきっかけ。98年に全日本カート選手権FAクラスでシリーズ9位となり、99年にはFSAクラスで2位に。その翌年にはSRS-Fに入校し、それがきっかけでフォーミュラドリームに01年から2年間に渡って参戦した。初年度のランキングは8位で、2年目は7位。
 そして03年からはフォーミュラトヨタに活動の場を移し、第5戦で2位入賞。この年はランキング9位だったが、04年には2位1回、3位2回など入賞回数も増えて、ランキングでは7位に浮上した。そして、今年は前述のとおり4勝を挙げてシリーズ2位に。間違いなく来年は、新たなるステージで活躍を見せることだろう。
CHAMPION’S COMMENT
「来年はF3! 1年目からチャンピオン争いができるよう頑張ります」(大嶋)
「言い訳はしたくないんですけれど、クルマはちょっと厳しかったですね。その状態から、もっとタイムを出さなきゃいけないんですけど……。それとスタートでも前に出なきゃいけなかったし。だから、チャンピオンの実感はそれほど湧いてこないんです。むしろ、もっと順位を上げたかったという気持ちの方が今は強いですね。まぁ、でも嬉しいことには違いはありません。フォーミュラトヨタで2年間、いろんな勉強ができて僕自身、すごく成長することができました。スカラシップを頂けることになったので、来年は1年目からF3でチャンピオン争いをしたいと思います!」
CHAMPION’S PROFILE
抜群の安定感と、性格無比な走り、強い精神力。王者の資格十分!
大嶋和也(Kazuya Ohshima)生年月日:1987.4.30 出身地:群馬県
 フォーミュラトヨタ第16代チャンピオンに輝いた大嶋和也は、トヨタの育成プログラム、TDP(トヨタ・ヤングドライバー・プログラム)のスカラシップを受け、シリーズに参戦していたドライバーだ。FTRS(フォーミュラトヨタ・レーシングスクール)で実力を見いだされ、3期生としてスカラシップを獲得。
 ただし、1年を修行に当てられ、実戦デビューが昨年となったのは、スカラシップを獲得した段階で、まだ限定Aライでレースに出場できる16歳にも満たなかったからだ。今ではもう、18歳になって運転免許も取得している。
 FTRS受講前のキャリアは、もちろんのことカートレースで築き上げられている。97年に地元・群馬のGKT榛名シリーズからレースを開始し、2年目にはSクラスでチャンピオンを獲得。99年には同シリーズのFR2クラスでもチャンピオンを獲得するとともに、全日本のジュニアカート選手権にも出場し、チャンピオンを獲得してその名を轟かすことに。2000年にはICAクラスにステップアップし、ランキングは2位に。
 01年にはFAクラスでチャンピオンを獲得。02年にはFSAクラスに挑む傍ら、FTRSを受講。フォーミュラトヨタにステップアップを遂げた04年は、3勝をマークしてランキング2位となっている。今年も3勝を挙げたばかりか、追突によってリタイアした第7戦を除き、第10戦まですべて表彰台に上がって安定感を証明し、ポールを奪った時には確実に逃げ切る速さを見せた。最終戦では表彰台を逃したものの、正確なタイム刻みは集中力の強さ、精神性の高さを物語っている。今年のレースぶりは、王者の資格十分と認定されたことから、来年のF3スカラシップが決定。新たな舞台での活躍が期待される。
05年度シリーズランキング
1位:大嶋和也/155ポイント 2位:阿部翼/149ポイント 3位石浦宏明/135ポイント 4位:坂本雄也/107ポイント 5位:関口雄飛/68ポイント 6位:水谷大介/65ポイント 7位:高井美豪/65ポイント 8位:山内英輝:44ポイント 9位:山下雅之/36ポイント 10位:山崎信介/13ポイント
TOPICS
オールスターFTカップは、服部尚貴が有終の美(?)を飾る!

 FTRSのスクールカーを用いて、トップドライバーが覇を競う『オールスター・フォーミュラトヨタカップ』が、TMSFのイベントのひとつとして初めて開催された。出場したのは中嶋一貴、山本左近、片岡龍也、高木虎之介、脇阪寿一、服部尚貴の6人。本来は現役を退いたドライバーの出場も予定されていたが、恐れをなして辞退したとか!? わずか3周のレースだったが、そこはいずれも国内を代表するドライバー。山本のマシンが駆動系トラブルでスタートできぬハプニングこそあったものの、激しいバトルが終始繰り広げられた。抽選によってポールを得た服部が、脇阪、片岡の激しいチャージをものともせず、そのままトップを保って優勝。
「国内トップフォーミュラを今年で引退するんで、来年はフォーミュラトヨタやります。うそうそ(笑)。本当はみんなでシナリオも作っていたんだけど、途中から関係なくなっちゃった。自分が楽しむために頑張りました」と服部。もしかしたら、これがフォーミュラでの最後の優勝になるかも!
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