3人に絞られたチャンピオン候補、SUGOで脱落者は出るのか?
残すは2戦! エッソ・フォーミュラトヨタシリーズのエンディングが近づく中、前戦に引き続き、舞台を東北とし、スポーツランドSUGOでシリーズ第6戦が行われた。早いもので、前回のレースを終えた段階で王座獲得権利を残すのは、3人に絞られている。開幕2連勝の国本京佑をポイントリーダーに、前回のレースで初優勝を遂げたケイ・コッツォリーノ、そして第3戦から2連勝の井口卓人だけが対象となる。 5戦すべてで表彰台に上がっているのは国本京佑だけで、その点では圧倒的に有利なのだが、今年は有効ポイント制度が採られているため、一戦分を帳消しにすることができる。すると、条件は3人にほぼ等しく、まだまだ予想がつかない状況ではある。ただし、コッツォリーノと井口に関しては、もう残りの二戦は絶対に落とすことが許されない。落としたならば、その時点で脱落が告げられたも同然。 また、チャンピオンの可能性はなくなってしまったとはいえ、まだ増田定臣や松下昌揮には2位まで上がれるチャンスは残されている。後半戦の快進撃は、これまでのパターンからすると、より高く評価されることが多く、それがきっかけでスカラシップを得られたドライバーも。3人だけの戦いではなく、全員に飛躍の可能性がまだまだ十分に残されているのは事実だ。
コッツォリーノが2回目のポール。井口が続くも、国本は下位に沈む……
10月も下旬に差し掛かり、しかも舞台は秋の東北。もはや涼しいを通り越し、寒いという声も交わされるようになり、季節が改まったことを実感させられることとなった。さて、予選だが、金曜日の午後から天候は崩れ始めたばかりか、唐突に発生した季節外れの台風の影響を受け、土曜日のサーキットは終日水浸し。それでもフォーミュラトヨタの予選は午前中に行われたこともあり、コンディションは最悪というところにまで至らず。ちなみに併せて行われたスーパー耐久の予選は、より雨足が強くなったこともあり、日曜日の早朝に順延されている。 普段なら、予選が始まってもピットからなかなか離れないクルマが多くを占めるのだが、今回はウェットコンディションとあって、いつ雨の勢いが強くなるとも弱くなるとも分からない。セッションは普段より長い30分ながら、天気予報で日曜は天気が回復することを告げていたこともあり、それぞれ時間いっぱい有効に走り続けていた。そんな中、いきなりアタックをかけていたのがコッツォリーノ。他のドライバーが最初の数周は様子を見たり、タイヤのウォームアップに専念していたりする中、いきなり攻めの走りを見せる。すると、タイヤにも程よく熱が加わり、いっそうアタックには適した条件に。その結果、わずか4周で41秒台に突入。これに準ずる勢いを見せたのは井口だけだった。 そして、いったんブランクを置くも、コッツォリーノは井口が1分40秒台に初めて乗せた直後に、それを上回るタイムをマーク。第2戦・鈴鹿以来のポールが見えてきた。だが、その矢先にコースアウトした車両があって赤旗中断。せっかくの流れも断ち切られたかと思われた。しかし、前回の初優勝でしっかり自信を身につけたコッツォリーノは、残り8分での再開後も、いきなりコースを攻め立てる。すると、2周目には1分39秒台にも入り、どうやらコンディションはわずかながらも向上しているよう。それを知ったライバルたちも果敢な攻めを見せたが、コッツォリーノの勢いには及ばない。 逆に最終ラップには1分39秒432まで短縮を果たし、コッツォリーノが第2戦・鈴鹿ラウンド以来のポールを獲得。これに39秒988で井口が続き、3番手にはルーキーの金井亮忠が。しかし、あと一歩のところで39秒台突入は果たせなかった。4番手は増田で、5番手は国本雄資。一方、国本京佑は松下に続く、7番手に甘んじることに。「昨日からウェットでは、どうもタイムが出なくって」と首をひねっていたあたり、緊急事態発生を思わせた。 「クルマが決まっているからポールが獲れたんですが、ただブレーキ進入では詰められても、立ち上がりではまだ完璧に踏めていない。だから、タイム的には少し不満があるんですけど、抜けないといわれているコースで、ポールはすごく意義がありますよね。とはいえ、練習中の感じではドライでは井口や国本(京佑)の方が速かったんで、明日ドライでしょう? 油断はできませんね、まだ」とコッツォリーノ。
コッツォリーノが初のポール・トゥ・ウィンで連勝、国本も2位に!
日曜日になると件の台風も、すっかり太平洋の彼方に移動し、予報どおり早朝からサーキットは青空に包まれていた。フォーミュラトヨタの決勝が行われる頃には、路面は完全とはいえないまでもドライコンディションに転じていた。さて、決勝を前にグリッドへと向かう際に、予選4番手の増田がスピンを喫してフロントウィングにダメージを負っていた。手痛いハンディを自ら背負ってしまう。 そんな中、いよいよ切られたスタートでは、コッツォリーノが無難に飛び出し、1コーナーにトップで進入していく。続いたのは井口、金井までは予選順位のまま。だが、オープニングラップのうちに国本京佑が早くもスパートをかけ、コーナー、コーナーで先行する車両を抜いていく。そしてスタンド前に戻ってきた時には、もう増田をも抜いて4番手にまでつけていた。 その間、コッツォリーノは井口に対してコンマ6秒のマージンを確保。これを1周ごと広げ続けて5周目には5秒差として早々と独走態勢に。井口もまた単独走行だったが、逆に金井と国本京佑による3番手争いが熾烈を極めることに。「ドライになれば、追い上げられる自信がありました」と語っていた国本京佑が金井を抜いたのは5周目の1コーナー。その勢いを保ったまま、今度は井口にも迫っていく。その間にファステストラップも樹立したものの、これがコッツォリーノをよりいっそう楽にした。 一時は均衡状態を保っていた井口と国本京佑による2番手争いだが、10周目に差し掛かったところで大きなアクションが。1コーナーで国本京佑が並んだが、ラインをしっかり守って井口が逆転を許さず。ところが、これで諦めることのなかった国本京佑はS字で軽くヒットこそしたが、ついに井口を抜いて2番手に躍り出ることになったのである。その後も井口が逆転の機会を狙ったが、国本京佑は一切隙を見せず。その間にコッツォリーノは難なく逃げ切りを果たし、2連勝を初めてのポール・トゥ・ウィンで飾ることとなった。 その結果、国本京佑、コッツォリーノ、井口の順でランキングは変わらなかったばかりか、脱落者さえひとりも出さず。非常にハイレベルな状態を保ったまま、3人は最終戦に臨むこととなった。三つ巴のチャンピオン争いの行く末は大いに気になるところだ。
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