エコモニタリングの成果から

動物の生息場所としての里山


森の構造と動物の生息場所
動物は、森の様々な空間にそれぞれすみ分けています。
そのため、森の内部の構造が複雑であれば、そこにすみ分ける空間が沢山できるので、生物の多様性も高まります。
森の内部が複雑であるということはどういうことでしょうか?
例えば、手入れされていないスギ林や竹林のように、高木が生えていますが、その下にほとんど他の植物が生えていない森林と、高木層の下に亜高木層が、その下に低木層が、その下には草本層が生育する、4層の空間が形成された複雑な複層林を考えてみましょう。
複層林の場合は高木と草本層だけでなく、その間の亜高木層や低木層にも動物が生息できる空間ができます。餌となる植物も多種多様になります。そのため、様々な大きさの、様々な植物を餌とする昆虫や鳥類などが集まってきます。
ところが、単純な森林では中間に昆虫や小型の鳥類が生息する場所がないため、それらをエサとする動物にとっても餌場として貧相になります。そのため結局高木層を利用する大型の動物もすめなくなります。

大木のある森林は空間的な多様性も高まるため、これまで述べてきたフクロウやムササビの巣としての利用だけでなく、あらゆる動物の生息場所として必要です。
単純林複層林
[単純な生息地ー単純林][複雑な生息地ー複層林]
生物多様性を高めていくために
トヨタの森航空写真
トヨタの森航空写真
奥山と都市との中間に位置する里山は、人が利用する空間、動物が利用する空間が混じり合う場所であり、それゆえに異なるタイプの環境が数多く創出されて、生物多様性を高めている土地です。

トヨタの森の10年間のエコモニタリングから、これからの里山の姿について少し整理しておきます。
○大木を育成、手入れをして、更新される若い木と混在させていきましょう。
・フクロウやムササビの巣となる樹洞を形成し、より多くの生物のすみかを提供します。
・また、二酸化炭素の吸収・固定にも効果的です。
○里山を手入れして維持管理する林の姿は一種類ではなく、いろんなタイプの植生にしましょう。
・森の機能を総合的に高めることができます。
・生物の多様性が高まります。
○愛知県の里山において湿地は重要です。できるだけ今ある立地そのものを保全しましょう。
・湿地には貴重な動植物が生息し、生育しています。
・湿地があると格段に水辺の生物多様性が高まります。
○里山の中に撹乱の立地である水田や畑を作っていきましょう。
・撹乱によって、他の植物や動物が取り除かれた環境を好む生物がいます。
・そういう生物は常に移りすめる環境を探しています。

このような里山から周辺へと種を供給していくことができ、里山全体の環境の質を上げていくことができます。

そして、里山同士を繋いで、自然環境の確かなネットワークを形成していきましょう!

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