エコモニタリングの成果から

再生した湿地の保全に向けて


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谷沿いの湿地の保全
棚田を湿地へと再生した場合、生物の種の増加や生息状況からみると、以下のような遷移と時間との関係が分かりました。
湿生園写真
湿生生物観察園
1年〜2年:湿地の拡大期
3年〜5年:湿地の安定期
5年をすぎると、徐々に草地化し、森林環境へと向かっていきます。
トヨタの森では、湿地環境をできるだけ、生物多様性が高い状態で維持することを目的として、維持管理を行なっています。
その目的を決めるにあたっては、湿地がどの方向に進もうとしているのか、エコモニタリングで見極めた上で、目標植生と維持管理方針を定めました。それにより、立地と遷移の方向に沿った、無理のない目標植生と維持管理手法を決めることができたと考えます。

かつての里山では谷沿いに水田が作られ、その端々に湿地の植物が稲とともに生育している、そんな場所が沢山ありました。しかし、現在そのような場所の水田は放棄され、草地となり、森林へと変わっています。
谷沿いの湿地を再生することは、生物の多様性を向上させる上で非常に効果的です。あちこちの里山に湿地があれば、豊かな里山環境となると考えられますが、その際には、その土地の立地と遷移の方向性を見極めた目標植生と維持管理が必要になるでしょう。
再生した湿地も5年以上放っておけば、草地に逆戻りしてしまいます。適切な維持管理が必要です。

● 貧栄養湿地の保全
貧栄養湿地のコモウセンゴケ
貧栄養湿地のコモウセンゴケ
貧栄養湿地ができる場所は、愛知県のなかでもそう多くはありません。そのような場所も、これまでに開発によって失われたり、砂防の効果により、山林が安定して、失われてしまうことも少なくありません。

現在、貧栄養湿地がある場所は、その立地そのものが貴重な場所です。

貧栄養湿地を再生した場合、生物の種の増加や生息状況からみると、以下のような遷移と時間との関係が分かりました。

1年〜2年:裸地(植物にとってのフロンティアの発生)
3年〜8年:湿地の拡大期
9年以降:湿地の安定期、そして徐々に衰退期へ

貧栄養湿地の場合は貧栄養な立地であるために、安定化するまでに約8年と、谷沿いの湿地より時間がかかりますが、自然界の中では短い時間といえるでしょう。

か つてこの地域の里山は崩れやすい地質のため、出水によって崩れた山の斜面に次々と、このような湿地が現れ、そこに生育する植物は生育場所を移しながら、山 全体では維持されていました。しかし、現在は人々の安全のため砂防工事がすすみ、山が安定化してこのような湿地は生まれにくくなっています。

貧栄養湿地を再生した場合、それを保全するには、10年をめどに人為的な撹乱も必要となるでしょう。しかし、その際もモニタリングしながら(様子をみながら)、少しずつ手を入れることが必要です。


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