自然環境と生き物のつながりを見つめる

ー生物多様性への取り組みー

生物多様性はなぜ必要?

人間を含めた全ての生き物は、
他の種に依存して生存・繁栄し、互いに密接に結びついています。

多様な生物たち全体のことを「生態系」と呼びます。
生態系は微妙なバランスのもとで成立しているので、
生物多様性が失われてしまうと種の大量絶滅が起こりかねません。

里山の生き物の食物連鎖
ー頂点に立つサシバー

ラーニングデザインズ

谷津田(やつだ。谷地にある田んぼ)周辺では、バッタなどの昆虫が植物を食べ、カエルやトカゲがその昆虫を食べ、さらにカエルを食べるヘビがやってきます。谷津田の周りの林では、コナラなどドングリのなる木の葉をヤママユの幼虫が食べます。また、ドングリはアカネズミなどの食べ物になります。サシバはこれらの谷津田の周りに生息する様々な動物を食べ物としており、谷津田の食物連鎖の頂点に立つ動物です。

里地里山は多種多様な
自然環境がそろう理想的な場所

人の暮らしが自然と共にあった頃、
人は自然を持続可能な形で利用し、その恵みを受けて生きてきました。

その自然とは、
森林、草地、ため池、水路、水田、畑、谷津田など
多岐にわたります。

これらの環境全体のことを里地里山と呼びます。
次第にそれぞれの自然環境に適応した生き物が住み、
人も含めて多くの生き物が共存していました。

里地里山マップ

タカハシデザイン事務所

里地里山が危ない!

本来、里山では木は燃料に使われ、家を建てるための木が植えられています。
また、谷にはお米をつくる水田(谷津田)があり、その周りには草地があって、定期的に草刈が行われていました。このような里地里山には、人が関わることで様々な環境がつくられ、多くの生きものがすむ豊かな場所でした。

しかし、近年は石油などの燃料の普及や木材価格の低下により、山の管理がされなくなり、うっそうとした暗い森が多くなっています。また、農家が減ったことで谷津田も耕作がされずに草が生い茂った場所が増えています。かつて、里地里山で暮らしていた生き物がすめる場所が少なくなっているのです。

耕作されずに草が生い茂った水田

里地里山の生き物たち


明るい里地里山の環境には数多くの生き物たちが生息しています。
これらの生き物たちは、暗い森では生きることができません。
私たちは里地里山の整備を行うことで、生物多様性が保持できる自然環境を模索しています。

生き物の生きる環境を守る

トヨタの社有林で保全している生き物たち

  • カヤネズミ

    カヤネズミ

    茅葺き屋根の材料を採取するカヤ場(採草地)に生息する世界最小級のネズミ。体長6-7cmほどの小さな体で、自分の体の大きさと同じくらいの丸い巣を上手に作ります。巣づくりができるように、春から秋に草を刈らないエリアをつくっています。

  • ホトケドジョウ

    ホトケドジョウ

    体長6cmほどの小型なドジョウ。日本固有の種で、谷津田(やつだ。谷地にある田んぼ)の水路やため池など、流れの緩やかな水域を好みます。ホトケドジョウ以外の生物の生息にも配慮した水管理を行っています。

  • ムササビ

    ムササビ

    モモンガに似ていますが、ムササビの方が体が大きい分、より長く遠くまで飛べるのが特徴です。夜行性のため昼間は巣箱で休んでいます。巣箱に温度計をつけることで、中にムササビがいることがわかるようにしています。

  • フクロウ

    フクロウ

    食物連鎖の頂点に立つ猛禽類のひとつ。音を出さずに移動する能力、獲物の位置を正確につかむ高度な聴力が、狩りのスキルの高さの秘訣です。活動しない日中は枝に止まって休むので、木の手入れの際には横枝を残しています。

  • ハッチョウトンボ

    ハッチョウトンボ

    体長は1.5cm前後と日本最小のトンボ。飛ぶ力が弱いため、普段は草の先などで羽を休めていることが多いです。草丈の低い環境を好むので、夏場は定期的に草刈りをしています。

  • ササユリ

    ササユリ

    里山の代表的な植物のひとつで、日本固有の種です。上品な姿からユリの中でも特に人気があります。明るい環境を好むので、周囲の木を切ったり、下草を刈ったりしています。

  • シデコブシ

    シデコブシ

    かつては広く分布していたものの、現在は東海3県の限られた湿地にしか生育しておらず、絶滅危惧種に指定されています。明るい湿地環境を好むので、周りの木を切ったり定期的な草刈りをすることで、光が入るようにしています。