活動レポート

音楽×SDGsを考える

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“いい町・いい社会”づくりへの想いを「arts in hearts」という言葉にこめました。アートの力で感動を呼び起こし、みんなが集まることで大きなハートが生まれます。大きさも色も模様も異なる円は“感動の多様性”です。

message

トヨタからのメッセージ幸せの量産を考え続ける

長く続いている新型ウイルスや不安定な世界情勢の中、私たちはあらためて「人はなんのために生きているのだろうか」、「不要不急」といわれるものの中にも守るべき「必要」なものがあるのではないか。ということを何度も問い直しました。2020年、トヨタは自らのミッションを「幸せの量産」と定義しました。いま、そのミッションに、日本全国で活動するアマチュアオーケストラの皆さんが、一緒に取り組んでくれています。「自分たちが住む町に恩返しをしたい」。自分たちの活動を通して、地域に何ができるのかを真剣に考えてくれています。1981年から続く「トヨタコミュニティコンサート」は、そのようなアマチュアオーケストラの活動を地域のトヨタ販売店とトヨタが応援しています。芸術文化には言葉や国境を越えて、人と人をつなぎ合わせる力があります。自分以外の誰かのことを思い「小さな幸せ」を積み重ねていけば、SDGsが目指す「誰一人取り残さない持続可能な平和な社会」に少し近づくのではないでしょうか。

event report

もし地域のアマオケが
国連の掲げるSDGsを
実践したら

  • 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科
    特任教授・ファシリテーター

    若林朋子

  • 指揮者
    東京音楽大学 指揮科教授

    広上淳一

  • 日本アマチュアオーケストラ連盟
    副理事長

    関岡真

  • トヨタ自動車社会貢献推進部
    部長

    布垣直昭

2021年3月に開催した「音楽×SDGsを考える」オンラインイベント第一弾では「SDGsってなに?」を解説していただきました。その後、各地からは「SDGsをきっかけに、自分たちの活動を考え直してみた」「こんな取り組みをしたら、こんな変化があった!」という声が寄せられました。そのような嬉しい報告をうけて、2022年3月22日に第二弾のオンラインイベントを開催、サブテーマは「もし地域のアマオケが国連の掲げるSDGsを実践したら」。

そして、今回のゲストには広上淳一マエストロ(指揮者/東京音楽大学 指揮科教授)にご登壇いただき、マエストロがどのような思いでオーケストラや音楽活動をされているのか、お話を伺いました。いま、このタブロイド紙を読んでくださっている貴方は音楽とどのような関係にありますか。ご自身がオーケストラや合唱などをやっている、音楽は聴くことが好き、トヨタコミュニティコンサートにも時々ご来場くださっている方でしょうか。ぜひ我々と一緒に、地域や社会にできる「小さな幸せ」を考えてみませんか?

世界情勢が混沌としている
時代だからこそ、
音楽を通じて平和を祈りたい

イベントのはじめ、コロナ禍における活動について広上氏、関岡氏からお話がありました。

広上「2020年6月、いち早く日本フィルと無観客での有料ライブ配信、2020年12月にはベートーヴェン生誕250周年の配信コンサートを開催しました。コロナ禍でも、オーケストラは生きているよ。という想いをこめて実施しました。
私たちの愛する音楽には、世界の平和を願う曲がたくさんあります。現在、世界情勢は混沌としていますが、私はこんな時代だからこそ音楽を通じて平和を祈りたいと感じています。そして、現在は演奏会ができる当たり前の日常をキープできることを願いながら指揮をしています」

関岡「公益社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟(以下、JAO)は、TCCの重点テーマであるSDGsについて、昨年秋から分科会を作り、議論を重ねました。 検討会を重ねるうちにSDGsをアマチュアオーケストラが近年抱えている課題への解決手段につなげれば、もっと身近に捉えられるのではないかと考えました。
そこでJAOでは、『オーケストラ相互の活動を通じて、社会の多様性を大切にし、音楽の感動によって地域社会の豊かな未来づくりに貢献する』というコンセプトを掲げました。それをもとに全国各地でSDGsを取りこんだ音楽活動をおこなうことで、運営の強化や社会との接点の強化、地域社会やアマチュアオーケストラそのものの豊かな未来作りに貢献していけると考えます」

全国のアマオケが
「音楽×SDGs」に挑戦!

  1. case.1

    親子でのびのび、
    一緒に楽しむコンサート

    山陰フィルハーモニー管弦楽団 加藤幹雄氏

    後継者の育成を目的とし、0歳から入場できる『山陰フィルわくわくファミリーコンサート』を実施。いつもは60~70代のお客さまが多いのですが、今回はお子さまと、保護者がメインの客層となり20~50代が半数以上を占めていました。小さなお子さんがいるために演奏会への来場を断念していた方を取りこめたことが、とても大きな成果でした。

    コンサートの合間には楽器紹介をおこなったり、楽器のイラストをプログラムに描いたりして、どれか一つでも楽器を覚えて帰りましょうという呼びかけもしました。また、山陰フィルジュニア所属の中学生がお子さんと同じ目線で進行したことも良かった点です。チケットは完売し、お客さまの期待の高さが感じられました。今後とも県内各地で開催を続けていきます。

  2. case.2

    すべての人に、音楽の体験を

    八戸ジュニア・オーケストラ 秋田音々香氏

    コンサートをオンラインで鑑賞しながら、
    模擬楽器を弾いている様子。

    すべての人に演奏を楽しんでほしい。音楽に触れる機会が少ない人の入り口にしてほしいという思いから、SDGsのゴール目標を3番『すべての人に健康と福祉を』、4番『質の高い教育をみんなに』に決め、ファミリーコンサートを実施しました。実際に八戸市の障がい児入所施設に、ヴァイオリン、チェロなどの模擬楽器を届け、当日は配信映像を見ながら自由に使っていただきました。模擬楽器は、ネットで見つけたヴァイオリンの型紙を利用して、段ボールで作ったものです。
    コンサートでは、アニメーション映画音楽や子どもたちに親しみのある曲を選んだり、楽器の大きさ比べや音の紹介をしたり、子どもたちが音楽に興味を持てる内容を心がけました。また、保護者の方も周りの目を気にせず音楽を楽しめるよう、入場者を未就学児のいる親子限定にするという試みもおこないました。
    今回のファミリーコンサートでは、どんな内容なら子どもが喜んでくれるかということを団員全員で話し合い、みんなで一つのものを作るという意識を持って取り組みました。これからも音楽を通して、豊かな生活を支える活動を行っていきたいです。また、私自身のことにはなりますが、今回の経験で子どもの福祉に興味を持ったので、将来は福祉について学びたいと思っています。

  3. case.3

    住みやすいまちを目指した
    楽団の取り組み

    豊橋交響楽団 白井正彦氏

    実際に団員が心がけている目標をイベント会場の
    目立つ場所に掲示。

    豊橋交響楽団では豊橋市と連携してSDGsの課題を検討、実施しました。愛知県は、交通死亡事故が多いという地域の課題があり、その解決のためにコンサートに来場されたお客様に、反射材シールをプレゼントしたり、豊橋警察署から借用した交通安全ののぼり旗を設置したりしました。また、東三河フードバンクとも連携し、食品の寄付を募りました。その他、団員には『私のSDGs宣言』を書いてもらい、コンサート会場に掲示したことも。そのおかげもあり、普段の行動の中でSDGsに繋げていく、当たり前にSDGsを行うという意識が団員に芽生え、肩肘をはらずとも自然にSDGsを実践できるようになりました。地域に根ざした市民オーケストラを目指すため、少しでもSDGsの輪を広げ、住み続けられるまちづくりにつながればと思います。

SDGsを他人ごとではなく、
自分ごとへ

関岡「貴重なお話が盛りだくさんの素晴らしいイベントでした。SDGsは“他人ごと”ではなくて“自分ごと”として捉えていければ、より身近になると思います。ぜひ今後も取り組んでいきたいですね」

広上「音楽への感謝と平和を祈るだけです」

布垣「我々の活動のあり方をあらためて考えさせられました。音楽や芸術の持つ力を、アーティストの方たちと一緒になって社会に働きかけていきたい。災害、新型ウイルス、混迷極める世界情勢の中、人々を勇気づけ、生きる力につながるメセナ活動を真剣に考えていきたいと思います」

イベント終了後ファシリテーターの若林さんから「予定調和ではない広上マエストロのお話を聞き、与えられたことをただこなす日々に慣れきっていると、“考える”ことを忘れてしまう。清く正しく表向きの規範に上手に落とし込んで満足せず、本質をもっと“考える”ことが大事なのだと感じました」とコメントをいただきました。

今回のイベントでは「音楽×SDGs」が平和な社会の実現に繋げられる力があることを確認できました。また、全国の事例を知ることで、よりSDGsが身近に感じられるイベントとなりました。 オンラインイベント第二弾のフルバージョンはトヨタコミュニティコンサートの公式サイトからご覧になれます。

オンラインイベント第二弾を詳しくご覧になりたい方は
こちら(動画)

トヨタコミュニティコンサート(TCC)とは?

「音楽を通じた地域振興」を目的に、1981年から(公社)日本アマチュアオーケストラ連盟、全国各地にあるトヨタ販売店が協力し、日本各地で活躍するアマチュアオーケストラの活動を応援してきました。大きく3つの開催形態に分かれています。

  • 企画提案コース

    地元の文化団体とのコラボレーションや著名な指揮者との共演など、アマチュアオーケストラにとってのレベルアップにつながり、地域のみなさんにも喜んでもらえるチャレンジングな企画を開催。

  • 自由裁量コース

    SDGsをテーマに、各地域のアマチュアオーケストラが自ら考える課題解決を目指し、生演奏を聞く機会の少ない地域への移動公演、交通安全啓発企画の同時開催などを実施。

  • 販売店コース

    ショールームコンサートなど、地域活動活発化につながるコンサートを開催。

TCC公演の企画についての
ご相談、お問合せ先

(公社)日本アマチュアオーケストラ連盟事務局

〒441-8028 愛知県豊橋市立花町46番地 光陽ビル3階
TEL/0532-33-6885 FAX/0532-33-6875 
E-mail/info@jao.or.jp