'00 ESSO FORMULA TOYOTA
SERIES ROUND 10
●スポーツランドSUGO/17周
●予選/10月28日(土)晴れ/ドライ/観客数:5,500人
●決勝レース/10月29日(日)晴れ/ドライ/観客数:24,900人


チャンプ後藤聡との激しい攻防戦を制し、
ジェフ・ライトが2勝目を挙げて、シリーズ閉幕

◆QUALIFY◆

 鈴鹿を舞台に開幕戦が行われたのが、つい先日のように思えるが、早いものでこれがシリーズの最終戦。エッソ・フォーミュラトヨタの今季最終決戦は、すっかり秋色に染まったみちのく、スポーツランドSUGOで開催された。前回までの結果で、後藤聡のチャンピオンだけでなく、伊藤健二のシリーズ2位も確定。しかしながら、3位以下は依然として混沌とした状態となっている。そのあたりも今回の焦点だ。

 コンディションに恵まれた予選は、1分23秒台での激しい攻防戦が繰り広げられた。今回、もっとも勢いづいていたのはジェフ・ライトだ。アタック開始から間もなく、そのターゲットタイムに乗せたばかりか、3周目には1分23秒311をマーク。その後、ピットで待機した後、再度アタックをかけるも、ここでのタイムアップはならなかった。しかしながら、ライトのタイムを破る者も現れず、第3戦富士以来のポールを決定する。

「2コーナーで少しだけミスをしたけど、あとはほとんど完璧なスペシャルラップだった。ただ、もう一度アタックをかけたんだけど、何故かオーバーステアが強くなり、さらにタイムアップできなかったのが残念だ。決勝はドライなら大丈夫。ウェットならもっと大丈夫さ!」と、ライトは余裕の表情さえ見せていた。

 これにコンマ1秒遅れで続いたのは後藤。「出せる時に出せなかった僕のミス。途中でタイヤを換えてから出したタイムなんですよ。最初のうちに出せなきゃダメですよね」と、こちらは悔しそうな表情を隠し得ず。なお、3番手には友森雄一がつけたが、黄旗無視のペナルティにより、ベストタイムが抹消に。同様のペナルティを本来は5番手の伊藤らが受けていた。繰り上がって3番手となったのが前回のウィナー横溝直輝で、友森は4番手。そして伊藤は小暮卓史に次ぐ6番手から決勝レースに挑むことになった。


◆RACE◆

 前日の未明に降った雨が、勝敗の行方を思いがけず支配することとなった。決勝レースを前にして併催レースのフリー走行が行われたのだが、濡れた路面を走行ライン上だけ乾かしてしまい、左右に分けられたグリッドで大きくコンディションが異なってしまう。皮肉なことに、ここSUGOでポールポジションに与えられるのは、1コーナーに対してイン側のグリッド。有利不利の問題以前に、これでは危険と審査委員会は判断し、レースはセーフティカー先導によるローリングスタートが実施されることが急きょ決定した。

 そのローリングラップは2周に渡って行われた。そして、セーフティカーがコースを離れると同時に、鋭いダッシュを決めたのがポールシッターのライト。後藤を従えて、1コーナーに飛び込んでいった。グランドスタンドに戻ってきた段階で、ライトと後藤の間隔はコンマ2秒のみ。通常ならば、十分1コーナーでのオーバーテイクが可能な間隔だが、そのために一本ラインを外せば路面はウェット。そのため、後藤は攻めあぐねてしまう。しかも、一時はこのふたりによる一騎討ちの様相を示していたものの、やがて後続の接近をも許し、気がつけば10台ものマシンが数珠つなぎとなっていた。

 ライトと後藤の背後につけたのは、横溝に小暮、友森、伊藤。中盤からは松永章嗣、坂本祐也、吉本大樹、小早川受黎さえも加わることに。しかし、後藤のみならず、この不安定なコンディションはすべてのドライバーに対し、オーバーテイクを困難にしていた。結局、最後まで上位陣にポジションの変動はなく、ライトが辛くも逃げ切りに成功。後藤は残念ながら、チャンピオン決定後のレースで有終の美を飾ることができず、2位に留まることに。また、今回3位でゴールの横溝がランキングでも3位につけることとなった。


◆WINNER'S COMMENT◆

 スタート方式が変わったのは、僕にとってすごくラッキーだった。そうでなければ、スタートでトップに立つのは難しかっただろう。とはいえ、後藤もずっと背後についてきたんで、楽なレースではなかったよ。彼が速かったのは1コーナー。もし、抜きに来るとすれば、あそこしかないと思っていたから、僕はドライのラインをキープすることに集中した。抜くためには彼はウェットの部分でブレーキングしなきゃいけないだろう? まぁ、おかげでブロックしなくても済んだよ。それにしても今年最後のレースを優勝という形で締めくくれて良かった。特に今日は僕のバースディなんだ。今までで一番のバースデイになったね!


◆WINNER'S PROFILE◆

● Jeff Wright(ジェフ・ライト)
出身地:アイルランド
生年月日:1976.10.29

 コメントの中にもあるとおり、24歳の誕生日にシリーズ2勝目を挙げて、今シーズンを締めくくったジェフ・ライトは、同郷アイルランドのF1ドライバー、エディー・アーバインのアレンジメントによって、今年から日本でのレースに挑むこととなったドライバーだ。もちろん所属するチームは、外国人ドライバーの育成に定評のある、土居隆二監督率いるDTM.LTDである。

 3歳の頃からオートバイを駆っていたというだけに、モータースポーツとの最初の関わりはモトクロスからだったが、15歳の時にアーバインと出会ったことでフォーミュラの魅力を知り、17歳になった94年よりフォーミュラ・フォードに挑むことに。最初はアイルランドでの選手権のみの活動だったが、やがて全英選手権にも挑むようになり、世界中から血気盛んなドライバーが集うフォーミュラ・フォード・フェスティバルでは3位につけた経験も持っている。昨年はさらなる可能性を求めて渡米し、F2000に出場。わずか3戦のみではあったが、2勝をあげて非凡な才能を強くアピールした。

 そして、今年は日本でフォーミュラトヨタに挑戦することに。第3戦の富士で初優勝を飾り、そのままトントン拍子にポイントを重ねていくものと思われていたが、不運な展開に見舞われることも少なくなく、持ち前の速さを完全には発揮できずにいた。それだけに今回挙げた2勝目は、待ちに待った、またこれまでの不本意な思いを一掃する結果となった。

「実は来年に関してはアメリカのFフォード2000で、あるトップチームから『うちで走らないか』というオファーを受けている。賞金もいいし、最終的にはCARTにもつながる道のりだから、関心がないといったら嘘になるけど、自分としては日本でF3をやるのが第一希望。そのために日本に来たんだからね。ただ、具体的な話はまだなくて、これからスポンサーを探したりしなくてはならない。けれど、僕は来年も日本で走っていると信じているよ」と語るライト。夢実現なるか、大いに期待したい。


第10戦 結果表
順位 No. ドライバー名 所要時間 予選グリッド
1 20 ジェフ・ライト 23分03秒786 1
2 62 後藤聡 +00秒432 2
3 8 横溝直輝 +01秒410 3
4 14 小暮卓史 +01秒973 5
5 32 友森雄一 +02秒421 4
6 71 伊藤健二 +03秒469 6
7 25 坂本祐也 +03秒886 8
8 11 松永章嗣 +04秒580 7
9 23 吉本大樹 +04秒841 11
10 33 小早川受黎 +05秒512 9


選手権 ポイント表(最終有効ポイント)
順位 ドライバー名 ポイント
1 後藤 聡 137
2 伊藤健二 100
3 横溝直輝 69
4 ジェフ・ライト 67
5 小暮卓史 58


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