'00 ESSO FORMULA TOYOTA
SERIES ROUND 3
●富士スピードウェイ/15周
●予選/5月3日(水)晴れ時々曇り/ドライ/観客数:14,500人
    ●決勝レース/5月4日(木)晴れ時々曇り/ドライ/観客数:48,500人

ルーキーふたりが魅せた、激しい攻防戦!
ポールの小暮卓史をJ.ライトが僅差で従える

◆QUALIFY◆

 エッソ・フォーミュラトヨタも第3戦を迎え、シリーズのホームコースでもある富士スピードウェイを、今季初めて戦いの舞台とすることとなった。長いストレートを持つこのコースは、スリップストリームをどれだけ効率よく使えるか否かでタイムはもちろんのこと、順位にも大きな違いをもたらす。そのため、チームメイトを持つ者はがっちりと共同戦線を張り、互いにスリップストリームを使い合ってのタイムアタックが予選では大いに目立っていた。

 従来のレコードタイムは1分32秒569。コンディションにも恵まれたこともあり、これを真っ先に伊藤健二が更新し、貫禄の速さを見せつけるも、トップでいられたのはほんの束の間だった。さらなるタイムアップに成功したのはルーキーの小暮卓史。31秒台にもあと一歩という32秒071をマークしたのである。「タイヤの一番おいしいタイミングに、絶妙のスリップストリームが使えました」と小暮。また、その小暮のスリップストリームを使い、計測終了間際に2番手に躍り出たのも、やはりルーキーの大串大介だった。今回はこの3人に加え、ジェフ・ライトもレコードタイムを更新。全体的にルーキー勢の好調さが目立っていた。


◆RACE◆

 富士の決勝レースでのセオリーは、『必ずしもポールシッターの勝ちが約束されていない』ということだ。コーナーそのものの数は少なくても、ここ富士にはストレートを筆頭にいくつかのオーバーテイクポイントが備えられているのが、その理由。まして当のポールから1秒以内に18人が並んでいるとあれば、なおさら誰が勝つか分からないというもの。

 さて、今回のレコードブレイカー4人組は、予選からの好調ぶりをスタートでも発揮し、1コーナーには横一列に並んで進入。しかし、どのラインを選んだかで明暗が分かれることにもなってしまう。インから伊藤健二、小暮、ライト、大串の順で並んだが、このうち行き場をなくした大串がオーバーラン。また、伊藤健二は左のリヤウィングを踏まれ、なおかつその際にトラックアームも痛めてしまう。

 これでトップ争いは小暮とライトの一騎討ちから、まず開始されることとなる。オープニングラップのトップは小暮が死守したものの、間もなくライトが1コーナーまでに前に出て、待望のトップに浮上。この間に3番手に浮上していたのは予選6番手の後藤聡だが、間隔はすでに1秒半ほどとなっていた。伊藤健二は4番手だが、ハンドリングの悪化に苦しみ、間もなく伊藤基司、赤嶋洋平に相次いでかわされてしまう。

 周回が進むにつれ、ライトと小暮は攻防戦が激しいがゆえに、皮肉にも後続の接近を許すことともなる。中盤には後藤が、そして終盤には伊藤基司と赤嶋の黒いウィンズコンビがトップ争いに加わることに。それでも、しばらくはこうちゃく状態が続いたが、機は熟したと見たのか12周目の1コーナーで小暮が再び前に出る。続くサントリーコーナーで後藤も仕掛けるが、これは成功せず。

 が、後続の相次ぐ追撃にも、ライトは少しも動じることなく次の周に再逆転。一方、小暮も勝負を諦めていなかった。最終ラップのダンロップコーナーでしっかり間合いを保ち、ストレートではぴったりとスリップストリーム圏内に。間隔は確実に詰まっていく。しかし、あと少し……のところで非情にもチェッカーが! コンマ08秒という僅差ながら逃げ切って、ライトが来日後初の優勝を飾ることとなった。


◆WINNER'S COMENT◆

 日本にやってきて3戦目で優勝を飾れて、本当に嬉しいね! だけど、レースはかなり厳しかった。コーナー、特にブレーキングして入るコーナーでは自分にマージンがあったけれど、どうやらストレートでは相手(小暮卓史)の方にマージンがあったようだ。それに実は昨日までギヤのリンケージにトラブルがあって本調子じゃなかったんだけど、これを決勝までにスタッフのみんなが直してくれた。おかげで今日はマシンの調子は完璧だった。声を大にして感謝の言葉を述べたいね。これで観客のみんなにも、少しぐらいは僕の名前を覚えてもらったんじゃないかな?


◆WINNER'S PROFILE◆

● Jeff Wright(ジェフ・ライト))
出身地:アイルランド
生年月日:1976.10.29

 同郷アイルランドのF1ドライバー、エディー・アーバインのアレンジメントによって、今年から日本でのレースに挑むこととなったジェフ・ライト。もちろん所属するチームは、外国人ドライバーの育成にも定評のある、土居隆二監督率いるDTM.LTDである。

 3歳の頃からオートバイを駆っていたというだけに、モータースポーツとの最初の関わりはモトクロスからだったが、15歳の時にアーバインと出会ったことでフォーミュラの魅力を知り、17歳になった94年よりフォーミュラ・フォードに挑むことに。最初はアイルランドでの選手権のみの活動だったが、やがて全英選手権にも挑むようになり、世界中から血気盛んなドライバーが集うフォーミュラ・フォード・フェスティバルでは3位につけた経験も持っている。昨年はさらなる可能性を求めて渡米し、F2000に出場。わずか3戦のみではあったが、2勝をあげて非凡な才能を強くアピールした。

 そして、今年は日本でフォーミュラトヨタに挑戦することに。ここまでの2戦、速さや他とは違ったライン取りで観客の目を釘付けともしたが、いずれも上位につけながらマシントラブルのため、無念のリタイアを喫していた。つまり、今回の勝利は三度目の正直ともいえる結果というわけだ。

「ひとつでも多くの勝利を重ねていけば、僕の名前はより多くの人に覚えてもらえるはず。僕はステップアップするために日本にやってきたんだからね。やっぱり当面の目標は、フォーミュラトヨタでチャンピオンを取ってF3に上がり、そしてフォーミュラ・ニッポンに出場することなんだ」とライト。再び外国人ドライバーによる旋風が巻き起こされるのか、大いに気になるところである。


◆TOPICS◆

 このレースと併せて開催された全日本F3選手権の第3戦において、フォーミュラトヨタ出身の峰尾恭輔が、ルーキーとしては今季最上位である3位入賞を果たすこととなった。

 予選6番手からスタートした峰尾は、2周目に前回のウィナーでもある井出有治をかわして5番手に浮上。その後、先行する1台の後退によって4番手となり、そのままフィニッシュを遂げることとなった。さらにレース後に『危険行為』の判定が下されたドライバーが出たため、残念ながら表彰台に上がることはできなかったが、思いがけぬ結果が転がり込んでくることに。「今まで5年間レースをやってきて、一番嬉しい結果」と峰尾。

 これからも峰尾らフォーミュラトヨタ出身ドライバーの活躍に、是非ご期待あれ!


第3戦 結果表
順位 No. ドライバー名 所要時間 予選グリッド
1 20 J.Wright 23分24秒514
2 14 小暮卓史 +00秒079
3 62 後藤 聡 +00秒593
4 36 伊藤基司 +01秒002
5 38 赤嶋洋平 +01秒119 10
6 3 横溝直輝 +06秒192 16
7 70 大平泰裕 +07秒169 14
8 66 伊藤寛隆 +07秒419 11
9 71 伊藤健二 +07秒903
10 99 信清友邦 +08秒165


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