TM9とは

TM9(ティーエムナイン)とは

TM9は、景観性の良い芝生を、管理を省いて維持することを目的に開発されたコウライシバ(高麗芝)の品種です。草丈が低いため、芝刈り回数を減らすことができます。肥料の量を減らしても、美しい状態の芝生を維持することが容易です。
省管理により芝生が普及することで、人や環境に優しい緑地が増加することを目指して開発されました。

地温の低下効果

芝生が土壌から吸収し、葉から蒸発する水の作用により、地面の温度が大幅に低下します。打ち水した場合と同様の効果です。利用する人の体感温度や、周辺の温度が低下します。土のグラウンドと芝生の表面温度を夏の暑い時間帯に比較した結果、16℃の差がありました。TM9を利用 することで、芝の管理を省力化しながら、人やペットに優しい空間を提供することができます。

芝生によるCO2吸収

芝生を植えることで、地中の茎や根に由来する有機物が土壌に蓄積されます。蓄積される量は、微生物などにより分解される量を上回るため、土壌の有機物が増加します。1年間で増加する有機物をCO2吸収量に換算すると、文献値では、1ヘクタールあたり5~18t/になります。ガソリン換算では、2.2~7.8kLの排出量に相当します。森林のCO2吸収量は、2~13t/haであるため、芝生の吸収量は森林とほぼ同等です。
TM9により芝生の緑地面積が拡大することで、カーボンニュートラルに貢献することが期待されます。

温暖化ガス排出量削減

芝生の管理では、芝刈り機の動力や散布する肥料からCO2などの地球温暖化ガスが排出されます。
TM9では、従来品に対して芝刈り回数を半分以下にできるため、芝刈り機の燃料や電気に由来するCO2量を半減することができます。
化成肥料の製造では、多くのエネルギーが使用されるため、肥料を使用すると化石エネルギーに由来するCO2が排出されることになります。また、散布した窒素肥料は、植物に吸収されなかった一部が土壌微生物の作用などにより、N2Oガスとして排出されます。N2Oは地球温暖化係数がCO2の310倍です。TM9に必要な肥料は従来品の半分なので、肥料に由来する地球温暖化ガスの排出を半減することができます。

試算前提
芝刈の事例:燃費4,000㎡/3.8L、ガソリンのCO2排出係数 2.32kg-CO2/L
肥料製造: N 3.27, P2O5 2.44, K2O 0.44 kg-CO2/kg
窒素肥料からのN2O排出:0.0097t-N2O/t-N

管理コストの削減

TM9は、景観性の良い芝生を低コストで管理することが可能です。
芝刈りに関する費用(芝刈り作業、集草、廃棄)に加えて、肥料の散布に関する費用も削減できます。下記の試算事例では、年間の管理費用が半分以下になります。

生産管理

芝生の生産では、雑草・異品種の混入防止、病害虫対策、茎葉の密度・土付きなどの品質管理が重要となります。TM9は、品質管理意識の高い厳選された法人により、生産されています。生産地域は、関東~九州の合計7法人です。
芝生の生産に適した農地を選定し、年間計画に基づく管理が行われています。生産中は、定期検査などにより、雑草や病害虫を早期に発見し、防除しています。出荷時には密度や土付きを確認し、品質基準を満たした製品のみが出荷されます。

主な用途と適性

TM9は景観性が良く、芝刈り回数が低減できることから、庭での使用に適しています。省管理の栽培方法では、暑い時期に芝刈りをすることが不要です。濃い緑色の芝生は、景観性を重視する集客施設にも向いています。屋上緑化では、芝刈り機や廃棄物の運搬に手間がかかるため、芝刈り回数が低減できるTM9を使用することで、管理コストを大幅に低減することができます。企業緑地では、出入口付近や外周などで、景観性が求められる場所が適しています。ノシバと比較すると耐踏性が弱いため、修景目的の場所や利用頻度が低い場所での使用をお勧めします。校庭での使用により、砂埃の防止、夏季の地温低下効果がありますが、生徒数が多く、使用頻度が高い場合には、向いていません。

草丈と施肥量

草丈は、5~7㎝で、1年に1~2回の芝刈りで管理することができます。芝刈りで廃棄される肥料成分が少ないため、肥料の量を半分以下にしても、濃い葉色を維持することができます。茎葉の密度が高いため、緻密で濃い緑色の美しい芝生になります。

草姿、成長速度

TM9の直立茎(地表に出る葉と茎)は、従来品種と比較して、茎と葉が短いことが特徴です。茎と葉が短いため、草丈が低くなります。匍匐茎(ほふくけい:横に伸びる茎)の芽の間隔を比較すると、TM9の間隔が狭いため、直立茎の密度が高くなり、緻密な芝生となります。匍匐茎の成長速度は従来品種と同様ですので、芝生が傷んだ場合の回復速度は、従来品種と同等です。

耐性

耐性試験を行った範囲では、耐陰性、耐乾燥性、耐塩性、耐踏性は、従来品種と同等です。
耐陰性については、寒冷紗で50%の遮光を行い地上部の重量を比較した結果、遮光を行わない場合とほぼ同等でした。耐乾燥試験については、葉が針状になるまで乾燥状態に維持することを繰り返し、地上部の重量を比較した結果、従来品種とほぼ同様でした。耐塩性試験では、海水と同じ濃度のNaCl溶液を2回散布したところ、地上部の重量は従来品種と同等でした。耐踏性については、同じ場所を歩行し、ダメージを比較した結果、従来品種と同等でした。

開発経緯

環境緑化による環境改善の推進、管理コスト削減による健全な緑地の普及を目指し、利用面積の多いコウライシバを対象に開発を開始しました。
従来品種のコウライシバの5万粒の種子から、草丈が低く、生育の早い10系統をポット苗で選抜しました。その後、屋外でTM1~TM10(系統番号)を評価しました。草丈が短く、匍匐茎の生育速度の速い系統(TM9)を選抜しました。TM9という品種名は、系統番号に由来しています。品種登録の正式名称は「ティーエムナイン」です。

屋外での栽培試験で、従来品種の草丈が14cm程度まで伸長するのに対し、TM9の草丈は約6cm程度でした(草丈は、土壌環境や施肥量で変化します)。小さい苗を植付けて、茎葉で覆われる被覆率を比較した結果、従来品種と同等でした。

日本芝の特徴

日本芝と呼ばれる暖地型の芝には、コウライシバ(高麗芝)とノシバ(野芝)があります。葉の横幅が狭い種類がコウライシバ、葉幅が広い種類がノシバに分類されます。TM9の葉幅はコウライシバとほぼ同等ですが、低草丈、高密度、葉の色が濃く、葉が柔らかいことが特徴です。葉が緑の期間は、いずれも春~秋で冬は地上部が枯れます。