トヨタ自動車が提供する、材料計測データ解析クラウドサービス“WAVEBASE”は、大きく2つの考え方で自動解析機能を構築しています。
①計測原理に基づいた、特徴量の取り出し
トヨタ自動車は、クルマ作りを通じて、様々な材料の研究開発に取り組んで参りました。その過程で培った、知見をフル活用し、システムを構築しています。具体的には、赤外吸収分光法(IR)やX線回折法(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織観察など、種々の測定手法の原理に基づいた特徴量の取り出しを行うことが可能です。
(例)材料組織SEM像からの空隙率や、配合物の平均粒径の取り出し
②機械学習的な特徴量の取り出し
次元削減手法(PCAやUMAP)を効果的に活用することにより、微小な変化や周期性など、人が認識することが難しく、見逃しがちな特徴量を見出すことが出来ます。
(例)性能に影響を及ぼす、XRDのバックグランドの微小変化
これらの解析手法は、お客様毎の異なる着目点に寄り添い、カスタマイズすることが可能です。
また、解析を進めて頂く中で、統計的に優位な情報を取得出来ているかどうか、を同時に確認頂くことが可能です。
これによって、これまで熟練の技術者に頼っていた特徴量の抽出を、組織として自動で行うことが可能となります。
カスタマイズされた解析手法を活用頂き、計測データから可能な限り有用な情報を取り出すことで、少量データでの効果的なマテリアルズ・インフォマティクスが実現致します。
自動解析を通してデータを蓄積することで、計測装置による差や、計測者による属人的な特徴量抽出過程を排除し、統計的に扱うことに適したデータベースを構築することが出来ます。
さらに、本サービスはクラウドを通じて活用頂くため、個々に蓄積されたデータは組織内で簡単に共有することが可能です。
データを適切に共有頂くことで、単一の計測ではとらえきれなかった大きなスケールでの解析を、複数の計測手法を繋いで行うマルチモーダル解析や、研究部署から生産部署などの、バリューチェーンを繋いだデータの活用を行うことが可能です。
一般的にデータの蓄積は、短期的には技術者のインセンティブになりにくく、いつの間にか形骸化してしまいがちです。短期的な開発目標に対して、統計的に意味のある少量データで優位な結果を得る、ということを繰り返すことで、価値のあるデータを組織として蓄積する文化を醸成することにも繋がります。
データ活用機能では、機械学習手法を迷わず使いこなすこと、にフォーカスした機能の実装を目指しています。
統計モデルを適切に構築するにあたり、
”LASSO”や“ランダムフォレスト”など、どの統計モデル構築手法を活用すればよいのか?
選択したパラメーターは妥当であるのか?
構築した統計モデルはどのように解釈すればよいのか?
など、インフォマティクス(情報科学)への正しい理解に基づいた選択が必要となります。
WAVEBASEは、選択の妥当性を可視化し、ユーザーが迷わずインフォマティクスを使いこなすことをサポートします。
我々は、これまで自社の開発へ情報科学を適用するために様々な工夫を行ってまいりました。
WAVEBASEを通じたデータ活用基盤を提供すると共に
・クルマ作りを通して培った、素材の研究開発に関連する知見
・ベイズ推定などの統計手法に関する知見
を活用して、お客様の新素材創出をサポートさせて頂きます。
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