3か月のインターバルと変則予選システムは、どんな影響を及ぼすか?
全7戦へとシェイプアップしたエッソ・フォーミュラトヨタシリーズは、第3戦から実に3か月ものインターバルを経て、舞台を仙台ハイランドへと移し、また今季唯一のダブルヘッダー大会として開催される。長い歴史の中でも、これだけ間隔があいたのはおそらく初めてで、少なくても近年には例を見ない。もちろん、その間まったく練習しなかったドライバーはいないだろうが、実戦の感覚という点でぶれがないか気になるところ。
改めてここまでの戦いを振り返ってみれば、開幕から2戦連続で優勝を飾り、ランキングのトップに立つのは国本京佑。速さばかりでなく冷静なレース運びが目立っている。その国本京佑に続き、なおかつ連勝を前回のもてぎで止めて初優勝を飾ったのが井口卓人である。開幕前の合同テストではトップタイムをマーク、今年の本命と目されていたが、なかなか勝ちには恵まれずにいた。それをフィジカルトレーニングだけでなく、イメージトレーニングも重ねることで自己啓蒙に成功。進化の度合いを結果によって表した。
そして、井口に続くのはケイ・コッツォリーノ。開幕戦こそ5位に甘んじたが、第2戦では国本京佑とのバトルの末に2位となり、その勢いを保って表彰台に2戦連続で立つことに。勢いは上位のふたりにも決して劣ってはいない。4位は増田定臣で、5位は松井孝允。このあたりのドライバーにもまだまだ躍進の可能性は十分にある。この仙台でのダブルヘッダーをどう過ごすかが、シリーズの展開に大きく影響を及ぼすのではないだろうか。
さて、今回はダブルヘッダー大会ながら、行われる予選は1回のみ。第1レースのグリッドは予選結果で決定し、第2レースのグリッドは第1レースの結果ではなく、ベストラップの順で決められるからだ。しかも、最大のポイントとなるのは、その間使用できるタイヤを1セットに限定したこと。したがって普段のレース以上にタイヤのマイレージ管理が重要になり、なおかつ第1レースのペース配分が、第2レースに少なからず影響を及ぼすことになる。
仮に「第2レースを捨ててもいいから、第1レースを勝ちたい」という2番手が迫ってきた場合、トップはどう対処するのか? そのペースに合わせて逃げればいいのか、それともタイヤをいたわるため、必死にブロックし続けるのか。ある意味、戦術にどれだけ長けるかも見極めることができそうだ。また、ミスやアクシデントで下位に沈んだ場合、何周か捨ててまで一発タイムを出しにきて、ファステストラップとポールを狙いにくるかもしれない。
ただ、コースそのものは今年のオフに、S字の手前からヘアピンの立ち上がりまで、全区間ではないものの路面は改修されており、国内のサーキット水準からすれば依然として滑りやすい部類にあるとはいえ、タイヤへの攻撃性はかなり薄らいでいる。「第2レースの気温が季節外れに上がらなければ普通に走る限り、そう極端なグリップダウンはないと思われます」とは、ブリヂストンの寺西康雄エンジニアの見解なのだが……。
タイムには不満も、井口が3回目のポール獲得。国本京佑が続く
ところで今回は、ラインアップに若干の変更があった。TDPことトムススピリットは、松井に代えてFCJで目下3連勝と急成長ぶりを示す国本雄資を起用。言うまでもなく、国本京佑の弟で17歳になったばかりのドライバーだ。これに伴い、松井は今回、フィールドモータースポーツから出場することとなった。
フォーミュラトヨタの場合、前回のレースは7月上旬に行われたため、幸い猛暑を経験せずにすんだが、他のレースに関していえば、猛暑か雨に絶えず悩まされ続けていた。その意味ではインターバルが効果的に機能したというか、ドライバーの行いが良かったとでも言うべきか。ともあれ、土曜日に行われた予選はコンディションに恵まれ、絶好のアタック日和。金曜日に行われた練習走行では、もちろんレコードタイムは更新されて井口が1分45秒517をマーク。これがどこまで詰められていくのか注目された。
井口は計測開始と同時にピットを離れ、新たなチームメイトとなった国本雄資を引き連れ、走行を開始。これに国本京佑も続いていく。この3人が最もマークするコッツォリーノは、いつものように5分遅れてコースイン。ひととおりライバルが周回を重ね、コンディションが整ったのを見計らってからアタックを開始した。注目の井口は、いきなり1分46秒台で走行し、3周目には45秒588をマーク。次の周には45秒462にまで短縮し、自己ベストも更新するとともに今季3回目のポールポジションを獲得。また、その背後を走行する国本京佑も、同じタイミングで45秒715を記録し、2番手につけた。
一方、それと時をほぼ同じくしてコッツォリーノがアタックを開始。走り始めのタイムは井口をも上回ったものの、なかなか45秒台への突入は許されず。すでに井口は走行を終えてピットに戻っていたから、仮にトップに立てれば再逆転はなかったはずなのだが、どうやらタイヤの内圧を完璧には合わせきれなかったよう。結局、46秒023をベストタイムとして3番手に留まることに。これに松下昌揮、増田が続いて、デビュー戦の国本雄資は6番手とまずまず。その国本雄資に対して闘志を燃やす松井は、10番手に甘んじていた。
第4戦は井口がポール・トゥ・ウィン。有言実行の勝利
予選終了から、わずか4時間で第4戦決勝レースが行われることとなった。「自分でベストと思った周に黄旗が出ていて、アクセルを緩めたりもしていたんで、もう少し詰められたとは思うんですが、自分としては絶好調です。ずいぶん間隔が開いちゃったけど、その間FCJもありましたし、FTRSのペースセッターとして走らせてもらったりもしたので感覚の鈍りみたいなのはまったくありません。今回もスタートさえ決まれば大丈夫です」と語っていたのは、もちろんポールシッターの井口。レースはその言葉どおりの展開となった。
スタートを決めて、1コーナーに我先にとばかりに飛び込んでいったのは井口。これに対して背後では国本京佑がコッツォリーノを牽制、いきなり激しい攻防が繰り広げられていた。しかし、1コーナーへの「場所取り」に成功したのはコッツォリーノの方。国本京佑をかわして、これで2番手に浮上する。勝負はこれで決したと言ってもいい。何せ、その後は上位陣に順位の入れ替えどころか、中盤以降はバトルシーンさえ見られなかったのだから。
3周目までは国本京佑の隙をうかがっていた松下だったが、徐々に差を広げられて単独走行に。それは5番手を走る増田にも共通した。序盤こそ金井亮忠や国本雄資、東徹次郎を従えての走行となっていたが、やがて差も広げてプレッシャーから解放されたのだから。最後まで続いたのは国本雄資と東の6番手争いだったが、ここにも順位の入れ替えはなかった。
最後は2秒半の差をコッツォリーノにつけて、井口が2連勝。まさに有言実行のレースとしていた。
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