レース結果

2007 エッソ・フォーミュラトヨタ・シリーズ 第4・5戦・仙台ハイランド
2007 ESSO FORMULA TOYOTA SERIES ROUND 4/5 SEDAI HI-LAND


仙台ハイランドレースウェイ/15周+15周
予選:10月6日(土)晴れ/ドライ
決勝レース第4戦:10月6日(土)晴れ/ドライ/観客数:520人
決勝レース第5戦:10月7日(日)曇り/ドライ/観客数:1,260人


秋の仙台ラウンド、第4戦で井口卓人が2連勝飾れば、ケイ・コッツォリーノが第5戦で止めて初優勝!


3か月のインターバルと変則予選システムは、どんな影響を及ぼすか?
 全7戦へとシェイプアップしたエッソ・フォーミュラトヨタシリーズは、第3戦から実に3か月ものインターバルを経て、舞台を仙台ハイランドへと移し、また今季唯一のダブルヘッダー大会として開催される。長い歴史の中でも、これだけ間隔があいたのはおそらく初めてで、少なくても近年には例を見ない。もちろん、その間まったく練習しなかったドライバーはいないだろうが、実戦の感覚という点でぶれがないか気になるところ。
 改めてここまでの戦いを振り返ってみれば、開幕から2戦連続で優勝を飾り、ランキングのトップに立つのは国本京佑。速さばかりでなく冷静なレース運びが目立っている。その国本京佑に続き、なおかつ連勝を前回のもてぎで止めて初優勝を飾ったのが井口卓人である。開幕前の合同テストではトップタイムをマーク、今年の本命と目されていたが、なかなか勝ちには恵まれずにいた。それをフィジカルトレーニングだけでなく、イメージトレーニングも重ねることで自己啓蒙に成功。進化の度合いを結果によって表した。
 そして、井口に続くのはケイ・コッツォリーノ。開幕戦こそ5位に甘んじたが、第2戦では国本京佑とのバトルの末に2位となり、その勢いを保って表彰台に2戦連続で立つことに。勢いは上位のふたりにも決して劣ってはいない。4位は増田定臣で、5位は松井孝允。このあたりのドライバーにもまだまだ躍進の可能性は十分にある。この仙台でのダブルヘッダーをどう過ごすかが、シリーズの展開に大きく影響を及ぼすのではないだろうか。
 さて、今回はダブルヘッダー大会ながら、行われる予選は1回のみ。第1レースのグリッドは予選結果で決定し、第2レースのグリッドは第1レースの結果ではなく、ベストラップの順で決められるからだ。しかも、最大のポイントとなるのは、その間使用できるタイヤを1セットに限定したこと。したがって普段のレース以上にタイヤのマイレージ管理が重要になり、なおかつ第1レースのペース配分が、第2レースに少なからず影響を及ぼすことになる。
 仮に「第2レースを捨ててもいいから、第1レースを勝ちたい」という2番手が迫ってきた場合、トップはどう対処するのか? そのペースに合わせて逃げればいいのか、それともタイヤをいたわるため、必死にブロックし続けるのか。ある意味、戦術にどれだけ長けるかも見極めることができそうだ。また、ミスやアクシデントで下位に沈んだ場合、何周か捨ててまで一発タイムを出しにきて、ファステストラップとポールを狙いにくるかもしれない。
 ただ、コースそのものは今年のオフに、S字の手前からヘアピンの立ち上がりまで、全区間ではないものの路面は改修されており、国内のサーキット水準からすれば依然として滑りやすい部類にあるとはいえ、タイヤへの攻撃性はかなり薄らいでいる。「第2レースの気温が季節外れに上がらなければ普通に走る限り、そう極端なグリップダウンはないと思われます」とは、ブリヂストンの寺西康雄エンジニアの見解なのだが……。


タイムには不満も、井口が3回目のポール獲得。国本京佑が続く
 ところで今回は、ラインアップに若干の変更があった。TDPことトムススピリットは、松井に代えてFCJで目下3連勝と急成長ぶりを示す国本雄資を起用。言うまでもなく、国本京佑の弟で17歳になったばかりのドライバーだ。これに伴い、松井は今回、フィールドモータースポーツから出場することとなった。
 フォーミュラトヨタの場合、前回のレースは7月上旬に行われたため、幸い猛暑を経験せずにすんだが、他のレースに関していえば、猛暑か雨に絶えず悩まされ続けていた。その意味ではインターバルが効果的に機能したというか、ドライバーの行いが良かったとでも言うべきか。ともあれ、土曜日に行われた予選はコンディションに恵まれ、絶好のアタック日和。金曜日に行われた練習走行では、もちろんレコードタイムは更新されて井口が1分45秒517をマーク。これがどこまで詰められていくのか注目された。
 井口は計測開始と同時にピットを離れ、新たなチームメイトとなった国本雄資を引き連れ、走行を開始。これに国本京佑も続いていく。この3人が最もマークするコッツォリーノは、いつものように5分遅れてコースイン。ひととおりライバルが周回を重ね、コンディションが整ったのを見計らってからアタックを開始した。注目の井口は、いきなり1分46秒台で走行し、3周目には45秒588をマーク。次の周には45秒462にまで短縮し、自己ベストも更新するとともに今季3回目のポールポジションを獲得。また、その背後を走行する国本京佑も、同じタイミングで45秒715を記録し、2番手につけた。
 一方、それと時をほぼ同じくしてコッツォリーノがアタックを開始。走り始めのタイムは井口をも上回ったものの、なかなか45秒台への突入は許されず。すでに井口は走行を終えてピットに戻っていたから、仮にトップに立てれば再逆転はなかったはずなのだが、どうやらタイヤの内圧を完璧には合わせきれなかったよう。結局、46秒023をベストタイムとして3番手に留まることに。これに松下昌揮、増田が続いて、デビュー戦の国本雄資は6番手とまずまず。その国本雄資に対して闘志を燃やす松井は、10番手に甘んじていた。


第4戦は井口がポール・トゥ・ウィン。有言実行の勝利
 予選終了から、わずか4時間で第4戦決勝レースが行われることとなった。「自分でベストと思った周に黄旗が出ていて、アクセルを緩めたりもしていたんで、もう少し詰められたとは思うんですが、自分としては絶好調です。ずいぶん間隔が開いちゃったけど、その間FCJもありましたし、FTRSのペースセッターとして走らせてもらったりもしたので感覚の鈍りみたいなのはまったくありません。今回もスタートさえ決まれば大丈夫です」と語っていたのは、もちろんポールシッターの井口。レースはその言葉どおりの展開となった。
 スタートを決めて、1コーナーに我先にとばかりに飛び込んでいったのは井口。これに対して背後では国本京佑がコッツォリーノを牽制、いきなり激しい攻防が繰り広げられていた。しかし、1コーナーへの「場所取り」に成功したのはコッツォリーノの方。国本京佑をかわして、これで2番手に浮上する。勝負はこれで決したと言ってもいい。何せ、その後は上位陣に順位の入れ替えどころか、中盤以降はバトルシーンさえ見られなかったのだから。
 3周目までは国本京佑の隙をうかがっていた松下だったが、徐々に差を広げられて単独走行に。それは5番手を走る増田にも共通した。序盤こそ金井亮忠や国本雄資、東徹次郎を従えての走行となっていたが、やがて差も広げてプレッシャーから解放されたのだから。最後まで続いたのは国本雄資と東の6番手争いだったが、ここにも順位の入れ替えはなかった。
 最後は2秒半の差をコッツォリーノにつけて、井口が2連勝。まさに有言実行のレースとしていた。


第4戦ウィナーズコメント
「今日がなければ明日もないから、今に全力を!」(井口)

 「スタートが決まって、思っていたとおりのレースになりました。明日のレースも同じタイヤを使わなきゃいけないので、少し気にはなったのですが、今日がなければ、明日もないから、明日のことは明日のことと、このレースに全力を込めて走りました。ファステストラップがとれて、またポールからスタートできるようになったので、この調子で連勝を狙います!」

第4戦ウィナーズプロフィール
一度身につけた自信は、今や速さの根拠に!

井口卓人(Takuto Iguchi) 生年月日:1988年2月13日 出身地:福岡県

 フォーミュラトヨタは2年目で、昨年、そして今年も開幕からの2戦はなかなか勝ちに恵まれずにいたが、第3戦でついに優勝を飾ると、持ち前のスピードにより磨きがかかることに。続く仙台ハイランドでの第4戦も優勝を飾り、完全に上昇気流をつかんだ感もあるのが井口卓人だ。人知れず鍛錬を重ねることで自信を身につけたことが、躍進の秘訣という。
 その井口がカートと最初に出会ったのは2000年、12歳の時だった。その翌年から本格的に活動を開始、地元九州のシリーズを戦うことに。04年には全日本選手権にも進出を果たす。そして、05年には九州出身のドライバーとして初めてのチャンピオンを、FAクラスで獲得。また、この年にはアジア-パシフィック選手権のICAクラスで3位に入って、その名を全国に轟かすこととなる。併せて受講したFTRSで実力を認められたことから、井口の道は大きく広がるように。
 06年はTDPからフォーミュラトヨタ、そしてFCJに参戦。シリーズ前半は経験の少なさもあって苦戦を強いられるも、成績はやがて右上がり。ともに終盤には最上位となる3位を得て、フォーミュラトヨタでは6位、FCJでは10位のランキングを獲得する。もちろん今年は勝負のシーズン! 最後まで繰り広げるであろう、タイトル争いが大いに見ものだ。


第4戦 決勝結果はこちら   第4戦 予選結果はこちら

第5戦はスタート直後の攻防制した、コッツォリーノが初優勝!
 前述のとおり、第5戦の決勝グリッドは第4戦のベストラップの順に決められたものの、奇しくも6番手の金井まではレースの順位とまったく一緒。9位でゴールの白坂卓也だけが国本雄資と東を従える形でふたつポジションを上げていた。さて、天気は日曜日になると雲も出始め、気温を下げるとともに怪しげな雰囲気に。グリッドにレインタイヤを持ち込んだチームもあったほどだ。幸いにして慌ただしい思いはせずに済んだが。
 注目のスタートは、ポールの井口がホイールスピンさせ過ぎ、やや出遅れたこともあり、2番手のコッツォリーノが並びかけて1コーナーへと進入。この展開はコッツォリーノにとって、まさに思うつぼだった。というのも、前日のスタート直後にもそうして国本京佑を抜き去っていたから。理想のラインをトレースしたコッツォリーノに対し、井口はダートへと足を落とすこととなってトップを明け渡してしまう。さらに国本京佑が2番手に上がり、井口はなんとか松下の逆転は許さず3番手でコースに復帰する。
 さらにその直後、アクシデントが発生。上り坂頂上の左コーナーで東と白坂が接触し、コントロールを失った東と後続の松井が激突してしまったのだ。2台はそのままリタイア、白坂も10番手へと後退。これで金井と国本雄資が順位を上げて5〜6番手に、また増田は1コーナーでコースアウトしていたことが逆に幸いし、7番手に後退してはいたものの、アクシデントに巻き込まれずに済んでいた。
 オープニングラップ終了時点では、コッツォリーノと国本京佑の差はコンマ4秒。そのまま激しいトップ争いが続くことが予想され、その光景は第2戦のデジャブのよう。だが、そこからの成長ぶりを示すかのようにコッツォリーノは差を少しずつ広げ続け、やがて独走態勢へと持ち込んでいく。対照的に国本京佑は井口に迫られ、応戦一方。これがコッツォリーノをずいぶん楽にした。
 またしても2周目以降の逆転劇はなく、逃げ切ったコッツォリーノは初優勝。ランキングでも井口を抜いて2位に浮上することとなった。同時にタイトル争いはより三つ巴の様相を呈するように。ラスト2戦がさらに楽しみになってきた。

第5戦ウィナーズコメント
「ずっと一緒にやってきたスタッフに恩返しができました」(コッツォリーノ)

「スタートは決まったというより、僕は普通に切れたんですが、(井口が)ホイールスピンさせ過ぎて少し遅れたようです。だけど、並んでいけば1コーナーで前に出られるラインを、前のレースで国本選手とのバトルで見つけていて、うまくそこに持っていけたんです。それはすごくラッキー! そうしてトップに立てて、4周もするとタイヤの内圧もジャストフィットして、無理しなくてもタイムが出るようになったし、まるでクルマと一体になったような感じで走れました。最後までタイムの落ち込みが少なかったのは、自分としてもすごく満足だし、何よりFCJではすでに勝っているけど、2年間ずっと一緒にやってきた、このチームで勝てたというのがすごく嬉しいし、スタッフのみんなに恩返しができました。今日はパーティかな? でも、明日からは気持ちをゼロにリセットして、また新しい気持ちでレースに臨みます」

第5戦ウィナーズプロフィール
見た目はガイジン、だけどハートはバリバリ大和魂の日伊ハーフ!

Kei Cozzolino(ケイ・コッツォリーノ)生年月日:1987年11月9日 出身地:東京都

 この名前で出身地は東京。ルックスは完璧に外国人なのに……? そう思うのは当たり前。第5戦のウィナー、ケイ・コッツォリーノは父親がイタリア人、母親が日本人のハーフだからだ。ちなみに父、カルミネ・コッツォリーノさんは「カルミネ」の名で知られる、イタリアンレストランのオーナーシェフ。TVの料理番組でもお馴染みの、まさに知る人ぞ知る存在だ。
 そんな環境もあって、生まれは日本ながら、やがてイタリアに渡って生活。カートレースは日本で始めたものの、本格的にはイタリアで極め、国内選手権のみならずヨーロッパ選手権にも出場した経験を持つ。4輪レースデビューは昨年のフォーミュラトヨタ第2戦、ちょうど今年初優勝を飾った仙台ハイランドから。なぜ開幕戦に出場しなかったかというと、まだ免許が取得できていなかったから。それまで所属するルボーセモータースポーツで練習を重ねつつ、取得から間もなくデビューしたというエピソードも。
 その1年目は第9戦の3位を最上位に、ランキングでは8位に。ルーキードライバーでは今もライバルとして相対する井口卓人や国本京佑に次いでおり、キャリアの違いを思えば大健闘だったことが分かる。今年はフォーミュラトヨタだけでなく、併せてFCJにも出場。一足早く、そちらでは第6戦もてぎでは優勝を飾っており、目下ランキングでは8位に。両シリーズにおける、さらなる躍進が期待されるドライバーである。


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