花王株式会社
研究開発部門 研究運営・管理部長 桑原様
デジタル戦略部門 情報システムセンター 大木様
- 従業員数
- 7,861人[連結対象会社合計 32,566人]
(2024年12月31日現在) - PCE利用部門
- 利用部門:研究開発部門全体(約2,800名)
- 事業内容
- コンシューマープロダクツ事業製品、ケミカル事業製品の製造、販売を主な事業としているほか、これらに附帯するサービス業務等
1業務概要と担当業務
——どのようなお仕事をしているか教えてください
中:研究開発部門 特命エキスパート(IP)弁理士 袴田様
右:研究開発部門 研究運営・管理部部長 桑原様
袴田様 「花王の研究開発部門で、知的財産業務における権利化活動等のサポート、確認作業、各種コーディネートなど、多岐にわたる業務を行っています。」
桑原様 「私は、研究開発部門における、総務業務を担っています。研究員の困りごと対応や、保守、経理関係などの支援を行っています。研究データの保全方法も研究運営に関わるため、検討を行っています。」
大木様 「私の所属する情報システムセンターでは、社内で利用されるさまざまなツールやBoxなどのストレージサービスの導入・運用を担っています。」
2導入の背景――新たなデータ保全システムの検討
――より柔軟で持続可能な仕組みへ
花王株式会社では、知的財産部門と研究開発部門が連携して、証拠保全やデータ管理の体制を長年にわたり構築・運用してきました。業務の高度化や組織の変化に対応しながら、常に最適な方法を模索し続けてきた点は、同社の先進的な姿勢を象徴しています。
しかし、従来の運用では、システムの切り替えや担当者の異動・退職時に運用ルールの見直しが必要となるなど、継続性や利便性の面で課題が顕在化していました。さらに、電子公証サービスや電子ノートの導入経験もありましたが、研究員がシステムにあわせた対応が必要なために現場での運用や管理の難しさから、より柔軟で持続可能な仕組みが必要とされていました。
袴田様 「以前から、必要な場面で証拠として使う、保全しなければいけないという状況があり、会社の体制を整えてきた経緯があります。ただ、使い勝手が悪いところや、十年単位で切り替える必要がある、システムの変更時に運用を見直す必要があるなど、課題はありました。」
こうした課題を受け、花王株式会社は新たなデータ保全システムの検討を開始しました。現場の声を反映しながら、より効率的かつ安心して運用できるPCEの導入へと踏み切りました。
3データ管理・運用ルールの工夫―大容量データのケース
——花王様はPCEを大規模用プランでご利用ですが、大容量のデータを管理する上で、工夫されたことはありますか?
PCE導入時には、膨大なデータ量への対応や、どのデータを保全対象とするかのルール決めを行いました。各研究所や部署ごとに、保全対象となるフォルダの運用や管理方法を工夫し、必要に応じて相談しながら運用を進めています。
大木様 「どこを対象にするか?(=どのデータやファイルを保全の対象にするか)を決めるのは、社内で検討すべき重要な課題ですが、それ以外の設定作業は非常にシンプルで、システム上の操作だけで完了します。そのため、導入後は非常に楽に運用できています。」
また、PCEの運用にあたっては、研究所ごとに管理方法を工夫し、必要に応じてルールの見直しや改善を重ねています。
4PCEの特徴と他システムとの比較
――従来運用から変わったところ、変わらなかったところ
PCEの最大の特徴は、既存のBoxストレージとの高い親和性と、ユーザー負担の少ない運用設計です。他社システムと比較しても、現場の負担が少なく、導入後の運用もスムーズに進んだ点が評価されています。
袴田様 「従来のシステムは手間がかかっていましたが、PCEは既に全社で使用していたBoxに連携するだけで自動的に保全できるので、ユーザー目線で非常に使いやすいと感じました。」
PCE導入前は、研究員が証拠保全のために毎日や週ごとにサインを記載した紙やPDFをスキャンし、最終ページには上長のサインをもらうなど、煩雑な手続きが必要でした。さらに、従来の電子公証や公証人立会い方式では、データ量の制限や切り替え時の手間も大きかったと言います。
PCEの導入によって、研究員は「何もする必要がない」、つまり、日常に行っている研究活動についてBoxにデータを保存するだけで自動的に保全が完了する運用が実現しました。
桑原様 「研究員が意識して特別な行為をする必要がないというのは、非常に大きなメリットです。Boxに入れさえすればすべてタイムスタンプを付与してくれるというのは、手間が本当に少なくなったと思います。」
従来の方法では、公証人の立会いによる証拠保全、その場合のデータ量の制限、電子公証システムの切り替え時の煩雑さなどが課題でしたが、PCEではこうした負担が大幅に軽減され、現場の利便性が向上しています。
袴田様 「知財でも証拠を残しておきたいときに、従来は必要な情報のタイムスタンプの日付等の証拠収集時の確認、必要な場合の公証人の立ち合いによる証拠保全など、作業が多く発生していました。また、従来のシステムでは大量に保全された研究成果からの必要な証拠の検索にも手間がかかるため、保全したデータの活用場面でも使いづらさを感じていました。」
現場の声を反映したPCEの運用は、従来のアナログな手続きや他システムと比べて、効率的で負担の少ない仕組みとして評価されています。
5 知的財産・証拠保全の意識
PCE導入により、研究データの保全や証拠力の強化と高い利便性が実現されています。
袴田様 「日々の研究成果が公証されているだけでなく、BOXに保存された情報を検索するだけで証拠を用意できるため、証拠力だけでなく利便性の高さを感じています。研究成果は、特許などの出願に必要な情報に限らず、第三者に開示することのないノウハウも含まれます。こういった非公開情報には、製品設計書、製品性能評価や、研究成果に至るまでの様々な研究情報等、事業上及び研究開発において重要な情報が含まれます。これらの情報はPCEを活用することで、改ざん防止や証拠性の確保が可能となり、一歩進んだ研究資産の保護につながります。」
PCE導入にあたり、知的財産保全への意識向上にも注力しました。 導入時には、ガバナンス意識や知財保全の重要性を全研究員に浸透させるため、説明会を3回開催し、「なぜデータ保全が必要なのか」といった基本から丁寧に説明する資料を作成し意識づけを徹底しています。
袴田様 「導入にあたり、資料を作成し、何度も説明しました。なぜデータ保全が必要かなど、そこからスタートしていろいろな意見や質問がありました。」
花王はもともと知財知識のレベルが高く、研究員も高い意識を持っていましたが、「知っていても実際に行動に移せるかどうかは別」という課題もありました。
袴田様 「知財教育は研究員向けでも(レベルが)高い方だと思います。みんなある程度(知的財産の重要性や保全の必要性を)理解していますが、実際に日々の業務の中で自分から積極的にデータを保全する行動を取るかどうかは、また別の課題です。」
また、従来は個人フォルダやBox以外のクラウドにデータを保存しているケースも多く、必要なときにすぐに証拠として活用できない場面もありました。
PCE導入を機に、改めて運用ルールや証拠保全の意義を説明し、納得の上で新しい仕組みへの移行を進めたことで、組織全体の情報管理意識が高まっています。
6 業界動向とPCEの本質的な価値
――PCEを使ったデータ保全は、訴訟対策という位置づけでしょうか。
袴田様 「転職等の人材流動により、(花王で得た知識や経験を活かして)近い技術分野で特許出願されていることはないとはいえません。冒認出願(本来の権利者以外が自分のものだと主張すること)に関して無効審判や訴訟まで発展するケースはほとんどありませんが、備える必要はあります。」
また、業界としても、技術の「冒認出願」(本来の権利者以外が特許を出願すること)や、訴訟件数が多い分野ではありませんが、訴訟等に発展しない基本的な体制は必要とされています。PCEは「訴訟のためのツール」と理解されがちですが、実際にはノウハウや未公開情報の保全、特許出願前の証拠管理、他社との協業時のトラブル防止など、企業活動のさまざまな場面で活用されています。
袴田様 「特許の無効理由となる情報を揃える際や、公然実施(既に公然に実施されている技術であることの証明)などの証拠を集めるのは非常に手間がかかります。また、他社との協業時には、言った言わない・出した出さないといったコミュニケーションエラーや、証拠の有無が問題になることもあります。」
こうした場面でPCEを活用することで、「いつ・誰が・何を言ったか」「どのデータを提出したか」といった記録を確実に残すことができます。
袴田様 「(証拠や記録が残ることで)日々の業務の安心感につながっています。」
PCEは、訴訟リスクの低減だけでなく、日常業務の信頼性向上や、企業の知的財産を守るための基盤として、花王株式会社の現場で着実に役立っています。今後も、業界の動向や社内外の変化に合わせて、より柔軟で実効性のある運用が期待されています。
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