法人のお客様 施工・管理マニュアル

施工・管理マニュアル

TM9は、適切な設計・施工・管理により、管理コストを低減しながら、景観性の良い芝生を維持することが可能です。特長・用途・管理方法を参照いただき、TM9に適したご利用、管理をお願いします。

管理

TM9の特徴(日本芝との比較)

従来品種のコウライシバと比べて、草丈が低く、葉色が濃く、茎葉の密度が高いことが特長です。芝刈り回数と施肥量を削減しながら、景観性を向上させることが可能です。葉が柔らかいため、裸足で歩いても、痛くなりにくいことも特徴です。

適した利用場所

TM9は、景観性を維持しながら、管理コストを削減したい場所での利用に適しています。
一般家庭では、夏の暑い時期の芝刈りが不要になります。集客施設では、景観が重視される場所に向いています。企業緑地では、事務所の周辺や工場の入口などの人目に付きやすい場所、従業員や来客の憩いの場所が候補となります。屋上緑化では、管理機材の運搬などに手間がかかる場合が多いため、芝刈り回数が低減できるTM9が適しています。公園では、修景が主体で、利用頻度が低い場所に向いています。ピクニック程度の利用は問題ありませんが、高頻度の運動での利用には不向きです。校庭では、生徒数が少ないなどの理由で踏圧が少ない場所では利用できます。土埃の防止、地温(輻射熱)の低下に効果が期待できます。生徒数が多い場合、利用回数や時期(冬は利用しない)などの制限が必要となります。

施工事例

景観性を生かして、様々な場所で利用されています。ゴルフ場では、クラブハウス・出入口・駐車場周辺の緑地に利用されています。

設計・施工の注意点

通常のコウライシバと同様の設計・施工が基本ですが、TM9の特長を生かすためには、施工場所などの選定が必要となります。
建物の北側や建物に挟まれた場所、大型の樹木の下などで、日照不足になると、草丈が伸びるため、芝刈り回数が削減できなことがあります。日照不足が継続すると、従来品種と同様に衰退します。春~秋に、半日以上の直射日光が当たる場所が利用に適した場所の目安です。
他の品種から張り替える場合には、元の芝の匍匐茎や種子が残っていると、草丈の高い別の種類の芝が発生するため、元の芝と共に表土を数cm除去し、新しい土と入れ替えます。他の品種と隣接した場所で利用する場合は、葉の色や質感が異なった修景となります。通常のコウライシバのエリアの一部に利用すると、モザイク状になります。
標準的な草丈の6cm程度で維持する場合には、芝刈り回数を低減できますが、ゴルフ場レベルの1cm程度で維持したい場合には、芝刈り回数を削減できないことがあります。

芝を張り替える場合の施工方法

別の種類の芝(一般のコウライシバなど)から、TM9に張り替える場合、元の芝の匍匐茎(地中にある茎)が残っていると、TM9の中に、元の種類の芝が再生することがありますので、完全に除去することが必要です。また、土壌中には雑草や芝の種子があることが多いので、匍匐茎だけでなく、種子を含む土壌も除去します。元の芝が再生するリスクを減らすために、元の芝に茎葉処理タイプ(茎葉から成分が吸収され雑草が枯死する除草剤で土壌では速やかに分解されるタイプ、成分例:グリホサート)の除草剤などを散布して、枯らしておくことも有効な方法です。茎葉処理タイプの除草剤は、冬枯れ中は効果がないため、芝の葉が緑の期間(秋まで)に散布します。土壌処理タイプの除草剤は、残効性が長いことが多く、新しく張った芝生にも影響するため使用できません。
元の芝の匍匐茎と土壌(数cm)を除去した場所に、新しい床土を入れます。除去した土をふるいにかけて元の芝の匍匐茎を除去しても、雑草や芝の種子が残っている場合が多いので、再利用はお勧めしません。雑草や芝の種子は、地下深くにあると発芽しないことが多いため、新しい床土を入れることで、元の土壌に種子が残っていても、発芽を抑制することができます。

施工前の多年生雑草対策

施工予定の場所に、スギナ・ハマスゲ・ヤブカラシなどの宿根性・多年生の雑草が発生している場合は、地上部を除去しても、地下の茎や塊茎から再生するため、事前の対策が必要です。 雑草が生えている場所の上に、盛土・客土を行っても、地下茎などから発生することがあるため、根茎を含む土壌を除去して表土を入れ替えるか、事前にグリホサート系の茎葉処理剤で多年生雑草を完全に枯らします(土壌処理タイプの除草剤は、残効性があり、芝生にも影響するため使用できません)。チガヤ、ノシバ、ギョウギシバについては、施工後に日本芝用の除草剤を使用しても、効果が期待できないため、芝張り予定地に発生している場合は、必ず対策します。施工場所の周辺に発生している場合、根茎が伸びて浸入する場合があるので、事前の除草対策は、周辺を含めて対応することをお勧めします。こちらのコラムもご参照ください。

有効土壌の厚さと散水頻度

芝生が利用できる有効土壌の厚さと芝が利用できる水の量には比例関係があります。有効土壌が薄い場合には、保水量が少なくなるため、夏の晴天時などに、散水頻度を上げる必要があります。散水が難しい場所では、有効土壌をできるだけ確保します。基盤土壌が芝の根が伸びる程度の固さや土質の場合は、改良土壌や追加した床土が薄くても、利用できる水が多いため散水頻度を低減することができます。基盤土壌が固く、根が伸びないことが予想される場合は、できるだけ深くまで土壌を改良するか客土などの床土を厚くします。

芝張り工事の適期(暖地)

芝張りの適期は、通常のコウライシバと同様です。最も適した時期の3~4月は、芝の芽吹きの時期で、気候が穏やかなため、活着させやすい期間です。土壌が乾燥している場合は、芝張り後の散水をお勧めします。極端に降雨が少なくなければ、活着するまでの散水が不要になるケースがあります。5月~6月の芝張りの場合、降雨が少ないと乾燥して枯れてしまうため、頻繁な散水が必要になる場合があります。9月の工事で降雨が少ない場合は、散水をしっかり行い、冬までに活着させます。7月~8月の工事で、散水することができれば、早めに活着します。5月~9月の高温期の工事では、切芝(ソッド)が乾燥して枯れることがあるため、納品後の切芝の保管期間が長い場合には、日陰で保管するか、風通しの良い寒冷紗などで、乾燥を防ぎ、できるだけ早く工事を完了させます。10月~2月は、芝が休眠しており根が伸びないため、立ち入りを制限する期間が長くなります。真冬に霜柱が発生する場所では、芝が浮いてしまうことがあります。

標準的な管理作業

標準的な作業として、施肥量はコウライシバに対して半分の量を標準とします。芝刈り回数は年間に1~2回に削減できます。除草剤については、発芽抑制効果のある土壌処理剤の使用をお勧めします。その他の作業については、コウライシバと同様です。

施肥量

標準的な年間施肥量の7gN/㎡を基本として、土壌の条件などにより調整します。窒素含有率が8%の肥料を使用する場合、1㎡あたり年間施肥量は約88gです。4回に分けて散布する場合は、22g/㎡となります。

施肥量の微調整

降雨量が多い場合、土壌有機物などが少なく保肥力が低い場合などで、肥料成分が流出し、肥料成分が不足すると、葉の緑色が薄くなるため、施肥量を増やします。分解しやすい土壌有機物が多い、保肥力が強いなどの理由で、施肥が過剰な場合は、草丈が伸びますので、施肥量を削減します。過剰な施肥は、茎葉が軟弱になり、病害虫が発生しやすくなりますので、お勧めしません。

芝刈り時期

草丈を揃え、穂を除去するため、年に1回の芝刈りは必要です。標準的には、5月~6月に出穂が終わった時期の芝刈りにより、景観性を維持するだけでなく、種子の稔実を防ぐことで、種子から発生する異品種のリスクを低減することができます。出穂の時期は、気温や芝の状態により変化します。草丈のムラ(凸凹)が気になる場合や、肥料過多で伸びすぎた場合は、必要に応じて芝刈りを行います。景観性を向上させたい場合は、出穂後の芝刈りに加えて、2か月に1回程度の芝刈りを追加します。

芝刈りと景観性の向上・異品種の混入防止

コウライシバの種子が発芽すると、小型~大型の芝が発生します(TM9はこの性質を利用して開発されました)。コウライシバの緑地の中に、ノシバタイプの芝が発生することがありますが、TM9でも同様に異品種が発生することがあります。出穂すると景観性が悪化するだけでなく、種子が落下すると異品種が発生するリスクがあるため、種子が稔実する前に芝刈を行います。TM9の穂数が多い場合がありますが、穂は直立茎の先端に発生するため、茎葉の密度が高いことが理由と考えられます。

刈高

出穂後の芝刈りでは、穂を刈り取ることを目的に、刈高を低めに設定します。芝刈り後の草丈が1~2cmになるように、芝刈り機の刈高を調整します。芝刈り機の構造や、芝生の状態の組合せにより、実際の刈高と芝刈機の設定に差異が発生することがあります。夏~秋の芝刈りでは、草丈が高いだけでなく、茎葉の密度も高い場合には、軸刈りに注意します。芝刈り後の草高は2~3㎝が標準です。冬の休眠期の芝刈りは不要ですが、密度が高いなどの理由で、マット化した場合、冬に刈高を下げることで(高さ1~2cm)、翌春は正常にもどることがあります。

除草剤の種類と効果・異品種の発生防止

手取りでの除草が難しい場合は、芝生専用の除草剤を使用します。茎葉処理剤は、大型化した雑草にも効果が期待できますが、種子には効果が期待できませんので、散布直後でも、種子から発芽した雑草が発生することがあります。土壌処理剤は幼植物と発芽する雑草に効果が期待できますので、2~3か月は除草剤の効果が持続します。土壌処理剤は、選択性が無い場合が多く、発芽する芝の種子も枯死させることができるため、異品種の発生を防止する効果が期待できます。

除草剤の散布時期

土壌処理剤は、高温期に薬害(芝の黄化、生育障害)を発生させる製品が多く、大型化した雑草には効果が小さいため、春の雑草発芽期前後に、予防的な散布を行います。冬雑草が多く発生する場所には、晩秋にも土壌処理剤を散布します。高温期に除草剤を散布する必要がある場合には、芝生用の茎葉処理剤を発生した雑草だけに散布することで、芝への薬害を最小化することができます。

異品種が発生した場合の対応

異品種を発見した場合、できるだけ早く除去することで、緑地がモザイク状になることを防ぎます。範囲が狭い場合は、異品種の匍匐茎を含めて、できるだけ抜き取ることで、草勢が弱まり、枯死することがあります。グリホサートなどの茎葉処理剤を、異品種の葉だけにハケなどで散布する方法もあります。範囲が広い場合は、異品種が発生した範囲を茎葉処理剤で枯らして、TM9の回復を待つ方法、新しいTM9を張り直す方法があります。

病害虫の事例

病気が発生した場合には、芝生に適用のある殺菌剤を散布します。梅雨の時期に発生した場合には、降雨量が減ると回復することがあります。害虫による被害を発見した場合は、拡大を防止するため、殺虫剤を散布します。範囲が狭い場合は、粒剤が便利です。肥料過多の場合、葉が軟弱になり、病害虫が発生しやすくなるため、施肥量の削減は、病害虫防止に効果があります。