~音を奏でる楽しさ、音楽を聴く喜びを多くの人に~
「石巻市民交響楽団」は、宮城県内で最も古くから活動するアマチュアのオーケストラだ。先の東日本大震災では、家族を失い、家や楽器を流された団員も多い。活動の拠点であったホールも倒壊したが、2週間後には活動を再開した。「大変な状況でも音楽は必要なはず。何か力になれないかと無我夢中だった」と、足立岳志団長は当時を振り返る。ヴァイオリンとチェロを抱え、はじめは5人ほどで避難所を回って演奏した。「川の流れのように」や「カノン」など、なじみのある曲を選んだ。布団や日用品に囲まれながら、食い入るように耳を傾けてくれていた人達の姿が、今も心に焼きつく。
「企業からのご支援は、私達が一時的に『お預かりした思い』」と、団員の足立弘子さん。「豊かな気持ちは美しいものに触れた時に生まれる。これからも、音楽を通じて預かった大切な思いを皆さんに届けることで、地域に貢献したい。」
日本のアマチュアオーケストラの数は2000団体近くと言われ、その層の厚さは世界的にも類がない。地域に悲しい出来事が起こった時、真っ先に住民の元に駆けつけ、優しい、生の音色を届けた石巻市民交響楽団。その例に見るまでもなく、地域の人々の心に寄り添い、音を奏でる楽しさ、音楽を聴く喜びを多くの人に届け続けるアマチュアオーケストラの存在は、間違いなく地域の絆を支える大きな力となっているはずだ。
音楽を通じて地域文化の振興に貢献することを目的に、全国アマチュアオーケストラ連盟と連携し、日本各地に音楽を届ける活動。コンサートを楽しみにしているファンに支えられ、トヨタ販売店と共に行った公演は累計約1600回、活動は36年の間に47全ての都道府県に及ぶ。