コラム お役立ち情報

土壌の役割と改良方法

お庭に芝生を植える際に、準備する土壌の厚みについて調べてみると、5cmだったり20cmだったりと、異なった記載や回答があり、迷ってしまう場合があります。実際には、現在の土の状態や管理方法の考え方次第なので、正確な答えはないと考えています。芝生は丈夫な植物ですので、雑草が元気に育つレベルの土壌であれば、厚みが5cmでも生育させることは可能ですが、土壌の質や厚みにより、その後の管理の手間が変わります。

1土壌の役割

植物を生育させるための土壌の主な役割は、水と養分を根に供給することです。土壌を準備する際には、根が分布できる範囲の土壌(有効土壌)の保水量(水を保持できる量)を考慮する必要があります。

2保水量とは

面積あたりの土壌の保水量は、体積あたりの保水量と有効土壌の厚みに関連します。例えば、1㎡あたり10cmの深さ(土壌100L)の最大保水量が20L(保水率20%)の場合、有効土壌が5cmでは10Lの水しか利用できませんが、有効土壌20cmでは40Lの水が利用できます。

3保水量と散水頻度の関係

土壌に保持できる水の量が多い場合、散水する頻度を削減することができます。芝生から水が蒸発(蒸散)する量を5L/㎡として単純計算した場合、有効土壌の保水量が10L/㎡の場合、2日に1回の散水が必要となりますが、保水量が40L/㎡の場合、8日に1回の散水頻度になります(実際には、芝生の状態・温度・湿度などにより変化します)。屋上緑化では、5cm程度の土壌でも、1~2日に1回の頻度で自動散水することで、芝生を維持することができますが、家庭の庭では、雨水の利用・散水の手間も考慮して、できるだけ保水量を確保することをお勧めします。

4保水量を増加させる方法

土壌の保水量を増加させるためには、体積あたりの保水量が多い土壌(保水性の良い土壌)を活用する方法と、有効土壌の厚みを確保する方法があります。
保水性を良くするために、バーミキュライトやバーライトなどの鉱物系の土壌改良剤、バーク堆肥や牛糞堆肥などの有機系資材を混合する場合があります。
有効土壌の厚みを確保するため、庭にある土を地下深くまで改良する方法と、外部から芝生の生育に適した土壌(客土)を運び入れる方法があります。

5土壌の質

土の粒子が細かい粘土質の方が、保水量は多くなりますが、透水性が悪く、固いため、芝生には向いていません。透水性を重視する場合には、土壌の粒子が粗い砂を使用しますが、保水量が少なくなるため、家庭での管理には向いていません。理想の土壌としては、粒子のサイズが中間的な畑の土をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。畑の土の場合は、耕した柔らかい状態で栽培することが多いですが、芝生の場合は、上を歩くことを前提に、歩いても沈みこまない程度まで押し固めて(転圧して)芝を張ります。土壌の質としては、畑の土のレベルであれば、理想的な状態です。石などがある場合は、できる限り除去します。レーキなどをかけると、小石なども見つかりやすくなります。

6土壌の状態別の改良方法

芝生を張りたい場所の土壌の状態によって、改良の方法が異なります。
土壌が固い粘土質で、雑草が生えにくく、水たまりができやすい場合には、芝生に適した土壌を準備する必要があります。既存の土壌の上に新しい土を追加するか、土を入れ替えます。
グラウンドのように、砂が多い土壌で水はけが非常に良い場合は、保水性の改良のための土壌改良剤だけを混合して対応できる場合があります。
畑の土のように、発生した雑草が元気に育つ土壌では、整地だけで芝生に適した土壌になることが期待できます。雑草が残っている場合、芝張り前の除草は必要です。

7基盤土壌の状態

芝生用に準備した土(改良土壌)の下の土壌(基盤土壌)が、芝の根が浸入できる状態であれば、基盤土壌の水を芝生が利用できるため、改良土壌が薄くても問題ない場合があります。

8まとめ

散水の頻度を低減したい場合には、20cm以上の有効土壌を準備することをお勧めします。基盤土壌の状態が良好であれば、改良土壌は5cm程度でも問題ありません。基盤土壌が粘土質で固い場合には、20cm程度の厚さまで土壌改良(客土を含む)を行います。5~10cm程度しか土壌改良できない場合は、散水回数などを増やして管理します。