異品種発生(先祖返り)の原因と対策
TM9に限らず、コウライシバなどの種子が発芽すると、大型の芝生(異品種/先祖返り)が発生することがあります。こちらのコラムでは、異品種が発生する理由と対策について説明します。
1異品種が混入する理由
コウライシバのターフに、大きさの異なる芝生(異品種)が混入することがあります。大型のノシバタイプの芝生が発生すると、目立ってしまうため、一部のエリアがモザイク状になるだけでなく、コウライシバより草丈が高く、生育が早いため、広い面積がノシバタイプに入れ替わってしまうことがあります。ノシバ(正式な和名:シバ、学名:Zoysia japonica)は、日本の自生種で、北海道南部から沖縄まで、広い範囲の自然環境で自生しており、強健な性質があります。目的外のところに発生すると雑草として扱われることがあります。
コウライシバに、ノシバタイプの異品種が混入する理由として、周辺に生えているノシバが匍匐茎で侵入する場合、土壌に残っていたノシバの匍匐茎から再生する場合、土壌中の種子から発芽する場合、靴や管理器具に付着したノシバの種子を持ち込んだ場合、落下したコウライシバの種子が発芽し、ノシバタイプの大型の芝生が発生する場合(先祖返り)などがあります。

2異品種(先祖返り)が発生する理由
コウライシバ(正式な和名: コウシュンシバ、学名:Zoysia matrella)は、葉が短いタイプのビロードシバ(Zoysia tenuifolia)とノシバ(Zoysia japonica)が交配して自然発生し、匍匐茎で繁殖(栄養繁殖・クローン繁殖)していると推定しています。ビロードシバとノシバが交配されて、コウライシバと同様の性質を示す品種(Emerald Zoysia)が開発された事例があります。
交配により育成された品種/系統(野菜の場合、F1品種と呼ばれます)では、自家受粉した種子を発芽させると、先祖(交配した親)に近い性質を示す子孫が発生します。コウライシバの種子からは、ビロードシバタイプの小型個体からノシバタイプの大型個体が発生しますが、ノシバタイプは目立つため、コウライシバのターフに発生すると景観性や管理の問題が発生します。コウライシバの種子が販売されていないのは、発芽率が低いことに加え、発芽した個体の性質が揃わないことが理由の一つです。
TM9については、コウライシバの自家受粉種子5万粒から、草丈が低く(葉や茎が短い)、匍匐茎の成長速度が速い個体を選抜することで品種になりました。

3出穂のタイミングと穂の数
春に再生する直立茎(茎葉)には、高い確率で穂が発生します。前年の秋の短日条件で、花芽(穂の原基)が形成されており、春になると出穂します(秋に暖かい日が続くと、春を待たずに出穂することがあります)。
茎葉の密度を高めに管理すると、穂の数が多くなる傾向があります。TM9は、一般のコウライシバに比べて茎葉の密度が高いため、穂の数が多くなることがあります。
4芝の種子の発芽
芝の種子は固い殻(種皮)に覆われており、条件が整わないと発芽しません。種皮を薬品などで溶かしたり、物理的に傷つけたり、光を当てるなどの特別な処理を行わない場合の発芽率はとても低くなっています(試験事例では1%以下です)。
出穂後の芝刈りを行わず、多くの種子が稔実・落下すると、発芽した種子から異品種が発生するリスクが高くなります。管理頻度の低いコウライシバの緑地からノシバが発生してしまう理由の一つです。
5芝刈りのタイミング
自家受粉した種子が稔実する前に芝刈りを行うことで、発芽能力のある種子が落下する数を減らすことができます。穂が発生(出穂)してから、稔実するまでには、1か月程度の期間があります。一斉に出穂することはまれで、1~2週間程度の期間をかけて発生しますので、穂の発生初期ではなく、穂が出そろった段階(稔実前)に芝刈りを行えば、1回の芝刈りでも、対応することができます。

6発芽リスクを低下させる方法
稔実前の芝刈りを行っても、完全に穂を除去することが難しいため、少量の種子が落下してしまうことがあります。異品種対策としては、落下した種子を発芽させないことがポイントとなります。
芝生の茎葉の密度を維持して、高めの設定(3㎝以上)で芝刈りを行うことで、地表面が暗くなるため、発芽に光が必要な種子の発芽率を低下させることができます。雑草種子の発芽も抑制できます。

雑草種子の発芽防止効果のある土壌処理タイプの芝生用除草剤を利用することで、芝の種子の発芽も抑制できます。除草剤については、こちら(除草剤の種類と効果・異品種の発生防止)もご参照ください。

7まとめ
出穂後の芝刈り、高めの芝刈り、土壌処理タイプの除草剤を活用することで、異品種が発生する確率を低下させることができます。
