なぜトヨタがマテリアルインフォマティクス(MI)事業?

トヨタ自動車では、マテリアルインフォマティクス(以下MI)による材料分析・データ解析クラウドサービス「WAVEBASE」を2020年4月にローンチしました。MIは「材料開発のDX化」ともいわれ、AIや機械学習といったデジタル技術を駆使して論文や実験データを分析し、材料開発の効率化とスピード向上を狙う試みのことを指します。

車メーカーであるトヨタ自動車が、なぜMI事業を推進しているのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。トヨタが「WAVEBASE」を立ち上げた背景とサービスの強みをご紹介します。

車は数万点もの部品、素材から構成

1台のクルマは、小さなネジまで数えると約3万個の部品からできています。約3万個の部品は、様々な素材から作られ、部品一つ一つにクルマならではの要求性能が存在します。例えば燃料電池車のMIRAIでは、燃料電池ユニットにカーボン材料や触媒、 高分子膜が、高圧タンクに樹脂や炭素繊維など、多くの素材が使用されています。

トヨタ社内でも素材開発

車に用いられるこうした素材は、素材メーカー様に開発・供給いただくと共に、トヨタ社内でも50年以上前から開発を行って参りました。

先端研究や先行開発、量産開発、新規材料の探索やプロセス技術の開発、設計・評価および品質確保といった材料開発には、数百人規模の技術者が関わっています。これらの新素材を応用することで、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー等の社会課題の解決にも挑戦しています。

これまで数十年にわたって蓄積してきた、トヨタの「材料の技術・知見」がWAVEBASEのベースになっています。

データ活用の潮流

一方で、データ活用の観点に着目しますと、MIによる素材開発は世界的に拡大傾向にあり、米国や欧州、中国では取り組みが活発化しています。日本国内でもMIの重要性は語られていますが、実際の開発現場においてデータ活用が十分に進んでいるかというと、まだ道半ばであるのが実態ではないでしょうか。この様な状況に危機感を感じたことがきっかけとなり、トヨタでは2015年以降、磁石や触媒、半導体、電池などの開発でデータを活用し、他社に先んじてデータ活用のノウハウを蓄積して参りました。

WAVEBASEでは、トヨタがこれまで蓄積してきた「材料の技術・知見」と「データ活用の知見」を掛け合わし、材料開発現場の皆様へご提供することで、「素材を起点にイノベーションを創出し持続可能な社会実現に貢献する」というビジョンを実現したいと考えています。

これまでのあゆみ

これまで、磁石や触媒、半導体、電池などの開発でデータを活用する中で、トヨタでは多種多様な計測設備を導入したり、様々なMI手法を検討して参りました。実際の研究開発スキームや実験で得られた生データを基に、画像から特定のパラメータを抽出しデータセットを作成したり、レンジの異なるスペクトルデータの規格化手法を検討したり、最適なモデルの模索や解釈性を検討する等、数々の試行錯誤を繰返しながら最適な素材開発手法をWAVEBASEに集約し、随時アップデートしています。

WAVEBASEのTechnology紹介はこちら

トヨタのMI事業の強み 1

我々は自動車開発の中で、多種多様な素材を扱い、異なる材料状態やスケールからのデータをマルチモーダルに解析し、研究開発から生産技術までの幅広いプロセスに活かして参りました。様々なシーンにおいて限られたデータの中から有効な情報を効率的に取り出し、情報を俯瞰的に理解することに強みを持っています。

多くのお客様から、データがない、限定的にしかデータを取得していない、統計的な処理に適したデータが揃っていない、といったお声をよく頂きます。これらの課題に対して、少量のデータから最大限、有効な情報を取得し活用できる「データ解析手法」をご提供致します。

トヨタのMI事業の強み2

WAVEBASEは、材料開発部門から発足したプロジェクトです。プロジェクトメンバーの多くが材料開発出身者であり、材料の研究開発スキームや分析評価の知識を有しています。

実験サンプルの分析評価結果(生データ)を基に、いかに効率的に情報を取得して統計解析を進めるか、また解析結果からどう解釈するか、材料開発を熟知したスタッフならではの「材料開発の進め方」サポートも我々の強みの一つです。

お客様によって、取得データの種類も違いますし、データの活用形態やMI推進体制も様々です。お客様それぞれの状況に合わせてデータ活用サイクルに伴走させていただき、お客様のMI実践をサポートさせて頂くことが可能です。

ご興味お持ちの方は、ぜひ一度ご連絡ください!