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2008年NASCAR特集

もっと知りたいNASCARの世界 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
スプリント・カップには今シーズンから次世代NASCARカーも投入

工場出荷時の市販車から来たストックカーという名称

 NASCARで使用されている車両は「ストックカー」と呼ばれ、アメリカでは最も一般的なレースカーとして知られています。日本ではあまり聞き慣れない、この「ストックカー」と呼ばれるNASCARカーとはいったいどんなものなのか? その秘密に迫ってみましょう。
 NASCARは、入門レベルのレースから最高峰のスプリント・カップに至るまで、全米中に9カテゴリーものレースシリーズを有しています。そのすべてのシリーズで使用されるマシンは「ストックカー」と呼ばれています。
 「ストックカー」とはその名のとおり、ストック(=工場出荷時のままの状態)のクルマを指します。NASCAR創設時には、その名のとおり、ホモロゲーションを取得している一般市販車がレース車両として使用されていました。しかし、レースカーの性能が向上し、スピードが上昇したことで、レース専用車両での参加が義務付けられるようになったのです。それでも、外観を限りなく一般車に似せることで、「ストックカー」という呼び名は変わらず現在に至っています。

カー・オブ・トゥモロー(COT)
近年の性能向上
基本構造はスチールパイプ製シャシーに鉄製カウル、そして5.8リッターV8エンジン

 現在のNASCARカーは、どのカテゴリーでも基本となる車両の骨格が統一されています。スチールパイプフレームのシャシーに市販車に似せたスチール製カウルを被せる非常にシンプルなもので、イコールコンディションを保つためにハイテク機器の導入は厳しく制限されています。
 フロントに搭載されるエンジンは、いずれも5.8リッターV8 OHVエンジンが使用され、今日では珍しいキャブレター仕様。スプリント・カップ仕様が全カテゴリー最大の800馬力以上、同じエンジンのネイションワイドとクラフツマン・トラック仕様は600馬力以上を発揮します。また、車両の運動性能を決めるホイールベースにも若干の違いがあり、スプリント・カップ仕様が110インチ、ネイションワイドが105インチ、クラフツマン・トラックが112インチと決められています。トランスミッションは4速、ブレーキはスチール製のディスクブレーキ、タイヤはグッドイヤーのワンメイクです。これらは参戦コストを抑制する効果もあり、公平な競争を目指すNASCARの特徴的なレギュレーションといえます。

大型リアウィング タイヤはグッドイヤーのワンメイク きわめて堅牢に作られたコクピット
スプリント・カップは今年から次世代NASCARカーを投入

 最高峰スプリント・カップでは、今年から次世代NASCARカー「カー・オブ・トゥモロー(COT)」が全面導入されました。NASCARの研究機関であるNASCAR R&Dセンターが7年の歳月をかけて開発したCOTは、安全性と競争性の向上を目指した全く新しいNASCARカーです。これまではコースレイアウトの違いにマシン特性を合わせるために車両細部の形状が異なっていたり、チームのノウハウによって微妙な違いが出されていたりした車両形状をCOTは基本的に統一。これによって参戦コストが抑えられ、レースもよりイコールコンディションに近い形で争われることになりました。また、車両サイズを通常より幅4インチ、高さ2インチずつ大型化し、ボディ内にロールバーやサイドフレームを増やしたことでクラッシュ時の車両安全性が向上。車両デザインも全体的に曲線や角の丸みなどをなくし、より“ボクシールック”にすることで走行中のドラッグを増加させ、スピードの抑制も実現しています。また、大型のリアウイングが採用によってハンドリングの重要性が増し、クルマの性能よりもドライバーの腕によるレースが展開されるようになっていったのです。

前から見たCOTのトヨタ・カムリ
ネイションワイド・シリーズでの#7トヨタ・カムリ
安全性と公平性、そしてエンターテイメント性を高次元で追求

 一方で、スプリント・カップの車両を若干小さくしたネイションワイドの車両には変更はなく、現在ではNASCARファンにとっていちばん見慣れたストックカーと言えます。そしてユニークなのはクラフツマン・トラックの車両。シリーズ名どおり、全米で絶大な人気を誇るピックアップトラックを使用しており、いかにもアメリカらしいレースと言えるのではないでしょうか。トヨタにとっては2004年にタンドラを擁して初めて参戦したナショナルシリーズであり、2006年には初めてチャンピオンに輝きました。
 F1やスーパーGTなどハイテクマシンに見慣れた日本のモータースポーツファンにとっては、一見時代遅れのローテクマシンに映るかもしれませんが、安全性や参戦コスト、そして公平性といったエントラント側からの要求と、競争性の向上というファンが熱望する要素を高い次元で両立させるために、様々なアイデアが盛り込まれたクルマ、それが現代の「ストックカー」なのです。

ひとつの仕様だけで全コースに対応する クラフツマン・トラックシリーズを走る#5トヨタ・タンドラ TOYOTA Camry Racing V8エンジン
NASCAR特集 Index
NASCAR特集Index
第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.
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