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2008年NASCAR特集

もっと知りたいNASCARの世界 第9回 オーバルトラックの秘密
コースの数だけ個性がある! オーバル、その奥深い魅力とは?

NASCARはオーバルレースの代名詞

 NASCARのレースは、ほとんどがオーバルトラック(別名オーバルコース)と呼ばれる楕円形のレーシングコースで行われています。スプリント・カップ・シリーズは全36戦のうち、ロードコースで行われる2戦を除いた34戦がオーバルトラックで行われていますし、ひとつ下のネイションワイド・シリーズも全35戦中32戦がオーバル。ピックアップトラックの車両で争われるクラフツマン・トラック・シリーズでは全25戦すべてがオーバルコースでのレースとなっているほど。NASCARイコール、オーバルといえるほどなのです。日本ではあまり馴染みのないオーバルですが、栃木県のツインリンクもてぎに現在国内唯一の本格的オーバルトラックが誕生し、毎年IRLインディカー・シリーズのレースが開催されて次第に知られるようになってきました。そこで本場アメリカのオーバルトラックはどんなものなのか? アメリカンレースの原点とも言うべきオーバルトラックについて紹介していきましょう。

インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ
形状によってオーバルトラックは4つに分類

 オーバルトラックとは、文字どおり「オーバル=楕円形」型をしたコースのこと。基本的には、2本の直線とそれをつなぐ4つのターンで構成されています。しかし、ひと口にオーバルトラックといってもその形状は実に様々。トラックデザインは、大きく分けると4つに分類されます。

 まずは、通常の楕円形の形をしたもので、これはそのまま「オーバル」と呼ばれています。有名なインディアナポリス・モーター・スピードウェイや、NASCARのシリーズ最終戦の地として知られるホームステッド-マイアミ・スピードウェイなどが当てはまります。 次に、その楕円形のメインストレート部分をやや外側に張り出させて、ちょうどスタート/フィニッシュラインのあたりを緩やかな5つ目のターンとしたコースがあります。これは、「クワッド・オーバル(四角い楕円形)」と呼ばれています。NASCARの聖地シャーロットにあるロウズ・モーター・スピードウェイや、トヨタがスプリントカップ初優勝を飾ったアトランタ・モーター・スピードウェイなどは全米でも有数の「クワッド・オーバル」です。

 この「クワッド・オーバル」の直線部分をさらに外側に突き出し、5つ目のターンの角度がよりきつくなっているコースが「Dシェイプ・オーバル」です。ちょうどアルファベッドの「D」の字に似ていることから名付けられたオーバルトラックです。シカゴランド・スピードウェイやカンザス・スピードウェイなど比較的新しいオーバルトラックによく見られる形状です。

 そして最後は、おむすびのような三角形の形をした「トライ・オーバル」。「トライ=3つ」の名前のとおり、ターンが3つしかないコースで、デイトナ・インターナショナル・レースウェイやタラデガ・スーパースピードウェイなど1周の距離が長い巨大なオーバルトラックが多いです。

1周の距離によっても変わるオーバルのキャラクター

 コース形状のほかに、オーバルトラックは、1周のコース距離によっても分類されています。1周1マイル以下のオーバルトラックが「ショートトラック」、1マイル〜2マイルまでのコースが「インターミディエイトトラック」、そして2マイル以上のコースは「スーパースピードウェイ」と3つに区別されます。

 「ショートトラック」は「ショートオーバル」とも呼ばれ、ドライバーは毎周毎ターンごとにブレーキングをしながらの走行を強いられ、マシン同士の接触も多く見られます。1周が0.533マイルのブリストル・モーター・スピードウェイや0.526マイルのマーティンスビル・スピードウェイは、毎戦マシン同士の接触でクラッシュが多く発生するコースとしても有名で、それがNASCAR観戦の醍醐味であり、ショートトラックの魅力だというファンもいるほどです。

 一方、「インターミディエイトトラック」は「ハイスピードオーバル」という別名が示すとおり、走行中は常にアクセル全開。NASCARマシンの本来のスピードを実感することができます。さらにコース距離の長い「スーパースピードウェイ」は「インターミディエイトトラック」以上のスピードが出るのですが、さすがにそこまでスピードが出ると危険なので、今ではエンジンの吸気口にリストリクタープレートと呼ばれる部品が取り付けられ、エンジンの出力が制限されます。この規則はデイトナとタラデガのレース時のみ適用され、このデイトナとタラデガでシーズンそれぞれ2戦ずつ、計4戦行われるレースだけは別名「リストリクタープレートレース」と呼ばれています。

 リストリクタープレートによって、出場すべてのマシンのエンジン出力はほぼイコールになるため、レースは常に20〜30台が一団となり、毎周のように激しく順位が入れ替わる大激戦となります。ただし、同じ「スーパースピードウェイ」でも1周2.5マイルのポコノ・レースウェイだけは、ターンの角度がきついことでスピードがそれほど上がらないため、リストリクタープレートを装着せずにレースを行っています。

33度の巨大オーバル、タラデガ 代表的なショートトラックであるブリストル ミジェット・レース
オーバルのルーツはダートにあり

 コース形状、コース距離がオーバルトラックの特徴を表す代表的な要素ではありますが、それだけではありません。例えば、コーナーの傾斜角がきついか、緩いかによってもレースの性質は大きく異なってきます。バンク角とも呼ばれるこの傾斜角がきつければ、マシンは高いスピードを保ったままターンを駆け抜けることができます。例えば、同じ1マイルのトラックでも、バンク角が24度もあるドーバー・インターナショナル・スピードウェイでは1周の平均スピードがおよそ130mph(=約209.2km/h)ほどもあるのに対し、バンク角がわずか2度しかないニューハンプシャー・モーター・スピードウェイでは約115mphしかスピードが出ません。実際のレースでも、ドーバーではターン中に2台のマシンが併走して走る“2ワイド”が実現するのに対し、ニューハンプシャーではターン進入時のブレーキングで前車をパスする、よりロードコース的な走りが求められるのです。

 また、コースの路面も、通常のアスファルト舗装のほかに、真っ白なコンクリート舗装のコースもあります。コンクリート舗装は滑りやすいため、それに適応したマシンのセットアップが求められます。また、現在ではNASCARナショナルシリーズで使用されてはいませんが、ダートオーバルも多く見られ、主にグラスルーツ・シリーズでは人気のレースとして未だに広く行われています。近年、NASCARトップドライバーのステップアップカテゴリーとして注目されているミジェット・レースなどはダートオーバルを多く使用しています。トヨタは、このミジェット・レースにもエンジンを供給しており、アメリカンレースを根底から支える役割も果たしているのです。


NASCAR特集 Index
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第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.
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