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2008年NASCAR特集

もっと知りたいNASCARの世界 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
究極のプレーオフ、チェイス・フォー・スプリント・カップ

NASCARならでは手に汗握るタイトル決定戦

 いよいよシリーズも終盤戦に突入した2008年NASCARスプリント・カップ・シリーズ。チャンピオンシップ争いが白熱してくるわけですが、NASCARには非常にユニークなタイトル決定戦があります。それが、「チェイス・フォー・スプリント・カップ」です。世界中の主要モータースポーツを見渡してもNASCARだけにしかない、非常に特徴的な、それでいて大いに盛り上がるこのタイトル決定方法を、簡単に説明していきましょう。

 NFL、MLB、NBA、そしてNHLの北米4大メジャースポーツには、レギュラーシーズンが終わった後に、プレーオフと呼ばれる、いわゆるチャンピオン決定トーナメントの存在があります。各シリーズによってその決定方法は多少異なってはいるものの、たいていは各ディビジョンで首位になったチームがプレーオフラウンドに進出し、年間王者を決めるという仕組みです。最近では日本のプロ野球でも取り入れられるようになったので、スポーツファンの方にはお馴染みかと思います。このプレーオフの要素を、モータースポーツの世界に取り入れたのが、通称“チェイス”と呼ばれる「チェイス・フォー・スプリント・カップ」なのです。

ランキング首位でチェイス進出を決めたカイル・ブッシュ
デニー・ハムリンもチェイス進出を決定
シリーズ終盤戦のタイトル争いの緊張感を演出

 アメリカのレースシリーズの例に洩れず、NASCARでも優勝者と2位以下との獲得ポイントには大きな差がありません。つまりチャンピオンを獲得するためには、優勝回数が多いことよりも、シーズンを通じて上位でフィニッシュすることに重きが置かれていました。それゆえ、本来戦いが白熱していくはずの終盤戦になればなるほど、ポイント上位のドライバーは手堅くフィニッシュする作戦をとりがちになり、レース自体がなかなか盛り上がらないという問題がありました。実際、2003年にNASCAR CUPシリーズの年間の王者になったマット・ケンセス(フォード)は、シーズン36戦中優勝はわずか1回のみ。この年の最多勝は、8勝を挙げたライアン・ニューマン(ダッジ)だったのです。そんな状況を打破するためには、優勝者に与えられるポイントを多くすることが最も簡単な方法ではありましたが、折しもシリーズのタイトルスポンサーがウインストンからネクステル(当時)に代わるタイミングとも重なったため、NASCARはシリーズの大改革を断行。その目玉となったのが、この“チェイス”システムだったのです。

12人のドライバーが残り10戦で争う

 “チェイス”の仕組みは至って簡単。シーズン36戦中、最初の26戦でランキング上位12位までに入ったドライバーが、最終10戦で争われる“チェイス”に進出する権利を得ることが出来るのです。つまり、ランキング13位以下のドライバーは、その時点でチャンピオン獲得の可能性が消滅してしまいます。他のスポーツで言えば、最初の26戦がレギュラーシーズンで、最終10戦がプレーオフといった具合ですね。26戦終了時点で、これまで獲得したポイントは一度リセットされ、“チェイス”進出の権利を獲得した12人には5000点が自動的に与えられます。そこから、これまでの優勝回数によってポイントが与えられます。優勝1回につき10点が加算されます。例えば、現在ポイントリーダーのカイル・ブッシュは現時点でシーズン8勝を挙げていますので、自動的に与えられる5000点に8勝×10点=80点が加算され5080点で“チェイス”を開始することになります。つまり、たとえ最初の26戦でランキングトップに立っていたとしても、優勝回数が少なければ“チェイス”では自動的に順位が下がってしまうということになります。そのため、仮に最初の26戦でポイント争いを独走しているドライバーがいるとしても、毎戦優勝を狙う走りが求められるわけで、それがレースをよりスリリングなものへとしていく要因になっていくわけです。

チェイスに進めなかったドライバーにも特典が

 それでは、最初の26戦でランキング13位以下になってしまったドライバーにとっては、“チェイス”はただの消化レースになってしまうのでしょうか? ここにも、ドライバーにやる気を持たせるアイデアが隠されています。13位以下のドライバーのポイントはリセットされることなく、残り10戦でも有効となります。そして、シーズン全36戦終了時点で13位になったドライバーには高額賞金が贈られるのです。また、ランキング35位以内に入ると、翌年の開幕5戦の予選免除というシード権も与えられます。争いが年々激化しているスプリント・カップでは、予選免除を獲得できるか否かではレースウイークの戦い方にも大きく影響してきます。43台の決勝グリッドを求めて、50台以上ものエントリーがあるレースも決して珍しくはありません。シード権を獲得してレースに確実に出場できれば、それがスポンサーに対しても大きなメリットのなるため、チームにとっては何としても確保しておきたいものなのです。

ドライバーたちによる激しい争い
トニー・スチュワート
レッド・ブル・レーシングのブライアン・ビッカース 流れをつかんだものがチェイスを制する

 最終10戦で行われる“チェイス”は、休みなしの10週間で一気に行われる短期決戦。これを勝ち抜くためには、リタイアをしない安定感はもちろんのこと、シリーズの流れをいかに持ち込むかが最も重要な要素になってきます。昨シーズン2年連続で王者に着いたジミー・ジョンソン(シボレー)は“チェイス”中盤戦に3連勝を飾り一気にタイトルを決めています。勢いをつかんだドライバーがそのまま一気に突き進む可能性が非常に大きいのです。ちなみに、そのジョンソンが昨年1シーズンで稼ぎ出した賞金総額は1531万ドル! 年間獲得賞金も恐らく世界一と言えるNASCARスプリント・カップ・シリーズ。その年間王者を決める“チェイス”に今年はぜひ注目してみてください。

NASCAR特集 Index
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第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.
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